ブログから映画の主役になった超ベテランのファッショニスタたち
ウェブサイトからの情報発信は勿論、携帯小説が映画になったり、YouTuberによる動画配信がビジネスになり売る時代に、とあるブログが写真集になり、やがてドキュメンタリー映画になったとしても何の不思議もない。今、世界のファッショニスタたちの間で話題騒然の「アドバンスト・スタイル そのファッションが人生」だ。
お祖母ちゃん子だった写真家がニューヨークで被写体を発見!
まず、ブログの創設者でフォトグラファーでもあるアリ・セス・コーエン(33歳)のここに至るプロセスが、ホントに?と思わず突っ込みたくなるくらいドラマチックだ。典型的なお祖母ちゃん子だったコーエンは、常日頃、祖母のブルマから「何かクリエイティブなことをしたいならニューヨークに行くべき」と諭され、2008年、そのブルマが他界したのを機に、遺志を継ぐように故郷のサンディエゴからニューヨークへと移住。そして、カメラ片手に自転車に乗り、通りに繰り出したコーエンは、個性的なファッションに身を包み、人混みの中をキャットウォークしていくマダムたちに声をかけては、次々とシャッターを切っていった。被写体になったのは全員、60代から90代までの超キャリアガールたち。ブログにアクセスが集中した理由は、おしゃれに年齢などないことを自ら体現する彼女たちの"永遠の遊び心"にあった。
コーエン、プロデュースの下、彼のお茶友で一流ブランドのPVを手がけるリナ・プライオプライトがフォーカスする7人の被写体が、いずれ劣らぬ強者揃い。服に合うイヤリングを見つけるためなら7年を費やすことも厭わないモデルでパーソナル・アドバイザーのジポラ・サラモン(62歳)を筆頭に、若く見えるより魅力的に見えたいをテーマにエレガンスを追求する女性編集者の第一号、ジョイス・カルパティ(80歳)、マンハッタンのアッパー・イーストサイドで40年以上に渡って人気ブティックを経営するリン・デル(79歳)、リサイクル・ファッションのパイオニア、デブラ・ラポポート(67歳)、自慢の赤毛で自分用の付け睫毛を作ってしまった画家でパフォーマーのイロナ・ロイス・スミスキン(93歳)、175センチ・54キロのボディを今もキープする元ダンサーでモデルのジャッキー・タジャー・ムルドック(81歳)、そして、ニューヨーク社交界のアイコンで活動家でもあるゼルダ・カプラン(95歳・2012年に他界)。
自分自身を肯定する生き方自体がファッション!?
彼女たちがブログをきっかけにハイブランドのランバンからイメージモデルを依頼され、パリに招かれたり、ハリウッドで人気のトークショーにゲスト出演するエピソードは華やかだし楽しいが、一方で、老いによる不調や病の恐怖についても、カメラは包み隠さずに映し出す。しかし、それらを自然の摂理と笑って受け止め、自分自身を無理なく肯定し、与えられた人生を装うことで楽しく、元気に全うしようとする7人の生き方は、それ自体がファッションと言えるほどに大胆且つ勇敢。特に、服は年相応が妥当と信じる日本の60代以上には是非見て欲しい的確なアドバイスが、映画の中には山ほど詰まっている。言うまでもなく、それにはまず、カラフルなお年寄りを受け容れる社会の成熟と寛容が必要なのだが。このドキュメントの舞台になるニューヨークのように。
現在、ブログ"ADVANCED STYLE"は絶賛運営中で、メーカーとコラボしたおしゃれな補聴器をブログ経由でユーザーに提供もしている。イメージの提案だけでなく、実生活に即した商品まで開発してしまうアグレッシブな姿勢も、これまた運営者のアリ・セス・コーエンが亡き祖母から受け継いだものかも知れない。
アドバンスト・スタイル そのファッションが人生(英語題:Advanced Style)
5月29日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ新宿ほかにて公開 全国順次ロードショー
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公式サイトhttp://advancedstyle-movie.com/