早稲田大学に39点差勝利も、帝京大学は「個人で成り立っている」と不満?【ラグビー旬な一問一答】
死角なしか。本人たちの実感は違った。
6月25日、埼玉・熊谷ラグビー場。大学選手権2連覇中の帝京大が、春季大会Aグループ最終戦で早大に60―21で快勝した。
昨年度の選手権ファイナルで73―20と下した相手に、この日も1対1、スクラムで圧倒。防御を崩された後も粘り腰でカバーに回った。両軍、メンバーの入れ替わった後半こそ失点も、前半終了までに33―0と概ね優勢に立っていた。
興味深いのは、フッカーの江良颯主将が反省の弁を述べていたことだ。
就任2年目の相馬朋和監督、4年生スタンドオフの井上陽公と記者会見に出席し、「まだチームになり切れていない」と強調した。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
相馬
「ラグビーをするには暑い環境で選手たちはかなりハードなプレーを強いられたと思いますが、いいゲームをしてくれました。後半のスコアだけを見ると、接戦になってしまった。夏合宿に向けてチーム一丸となって、より強いチームを目指したいです」
江良
「きょうの振り返りといたしましては…。接点の部分、フィジカルの部分で圧倒する部分は多かったんですけど、『それ止まり』というイメージで。自分たちの強みを出し切った後に最後まで繋げ切るところには至らなかったと思っていて。ただ、自分たちの強みを出しただけで、まだチームになり切れていないなと。個人、個人のスキル、強さで成り立っている。夏、秋、冬に向けてチームとして繋がり――140人近くいますが――チームとして戦えるようになりたいです」
——主将に聞きます。大勝しても的確に課題を抽出できるのはなぜですか。
江良
「主将として、チームの状況を常に把握しておかなきゃいけないと意識している。全員が同じ絵を見られるようなチームにならなきゃいけないと思いますし、何か欠けているなと感じた時に素早く同じ絵が見られるように僕がコントロールしないといけないと感じています。そういうことを、練習中から敏感に意識してやっているので、(試合後も)そうできていると感じます」
——「まだチームになり切れていない」。その領域はどう改善しますか。
江良
「当たり前のことを当たり前にするのが大切だなと思っていて。誰かがしてくれるであろうことを自分からする。『○○はこう思っているから、こうするやろ』というところでひとつコミュニケーションを取ることで(プレーを)繋げ、成功に導く。そういう細かいディテールをもっとよくしていけば、(組織も)よくなるのかなと感じます」
——ここからは監督に伺います。帝京大はなぜここまで強いのか。改めてそう聞かれれば、何と答えますか。
相馬
「去年も同じような質問をいただい時にお答えしたんですが、本当に帝京大学ラグビー部の学生は、練習します。本当に厳しい練習をした後でも、その日にボールを触っていないのであれば自分たちでボールを触ります。もしその日、走っていないのであれば自分たちで走る。自分たちで足りないことを補い、さらに成長しようと毎日、過ごしている。彼らの努力の上に立っています。それを多くのスタッフの皆さんがサポートしている。それが強さです」
——練習しなくては強くならない。普遍ですね。
相馬
「そう思います。いま、代表の活動が始まりましたが、代表もよく練習している。エディーさん(・ジョーンズ=日本代表前ヘッドコーチで現オーストラリア代表指揮官)もそうでした」
——改めて主将に。いくら課題を抱えていても、試合では相手を圧倒してしまう。モチベーションを保つのは難しそうですが。
江良
「対戦相手どうこうではなく、僕たちがどれだけ成長できるか、どうしたら成長するかを考えてラグビーをしています。スコアが開いた、開いていないではなく、僕たちがどれだけいいラグビーができたか、いいコミュニケーションが取れたか、同じ絵が見られたかを、全員が考えてやっている。それが、点差が開いたとしても常にモチベーションを保てる理由だと思います」
江良のキャプテンシーについて、「繋がる力の強い子。私やスタッフに対してだけではなく、学生同士でも自分から繋がっていって、それをチームの好循環に繋げてくれている」と相馬。臨席の江良は、大阪桐蔭高校時代から同級生の奥井章仁副将、3年生の青木恵斗、本橋拓馬といった1年時から主力格だったメンバーの名を挙げ「全てを僕ができることは、絶対にない。本橋、奥井、青木に任せていることは任せていて。全部、僕がやろうとすると、フォワードはもっと弱くなる」と続けた。