「ブルーシーフード」ってなに?京都大学ではカレーライスで提供、レストランや社食もパートナーとして参加
「ブルーシーフード」という言葉を聞いたことがあるだろうか。サバやサンマ、ホタテなど、天然の資源量が比較的豊富な海産物を指すそうだ。米国ロックフェラー財団の会長であるデイビッド・ロックフェラーJr.氏が2004年に設立した米NPO法人「セイラーズフォーザシー」の日本支局が「ブルーシーフード」を登録して発表した(2013年11月8日付、産経新聞東京版朝刊25面)。セイラーズフォーザシーの日本支局は、公式サイトでブルーシーフードガイドを公開している。
京都の缶詰プロデューサーから「ブルーシーフード」を初めて聞いた
筆者が初めて「ブルーシーフード」という言葉を聞いたのは、2018年5月25日、京都市の錦市場からすぐの缶詰工場「カンナチュール」を経営する、食品開発コンサルティング会社「カンブライト」(京都市中京区)の井上和馬(かずま)社長と話している時だった。
京都大学では2015年「ブルーシーフードカレー」イベントを開催
京都大学では、2015年11月17日、「エコ〜るど京大実行委員会」が企画したブルーシーフードのイベントを開催した。青い服を着た学生ら250名が「ブルーシーフードカレー」を食べた(2015年11月18日付、朝日新聞 大阪地方版・京都 27面)。当日は、「セイラーズフォーザシー」の会長でロックフェラー財団の会長のデイビッド・ロックフェラーJr.氏を招いた。京都大学生協が運営するカフェレストラン「カンフォーラ」の人気メニュー「総長カレー」をベースに作ったという。
このイベントがきっかけで、京大生協では、総長カレーの魚の具材をブルーシーフードに変えるに至った。
2017年2月7日から京都大学のレストラン「カンフォーラ」で提供スタート
京大のイベント後、学生や教職員の有志と京大生活協同組合が、京大の山極(やまぎわ)総長のアイディアを元に、一年間、試作を重ねたそうだ(2017年2月7日付、京都新聞夕刊8面)。イベントから1年3ヶ月後、ついに、レストラン「カンフォーラ」の定番メニューとなった。
具材には、ブルーシーフードに認定されているギンダラ、サバ、スルメイカ、ホタテを使い、ルーは、山極総長が研究のフィールドとしていたアフリカで食べたカレーと同じ、ココナツをベースにした(2017年2月7日付、京都新聞夕刊8面)。
2018年10月にも定番メニューとして健在
2018年10月29日、筆者も京都大学の「カンフォーラ」でブルーシーフードカレーを頼んでみた。
2005年から定番となっているロングセラーの「総長カレー」がベースになっていて、味にコクがある。辛すぎず、甘すぎず、ちょうどいい味。シーフードは衣をつけて揚げて、カレールーの上に乗せてある。
収益の一部は京都水族館に寄付し、ブルーシーフードの理解を広める活動に使うそうだ(2017年2月7日付、京都新聞夕刊8面)。
ヤフーの社食や全国のレストランでも
前述の「ブルーシーフードガイド」によれば、ヤフー株式会社もブルーシーフードパートナーになっている。ヤフー(株)公式サイトのCSRページを見ると、社員食堂でブルーシーフードを使った海鮮丼を提供したことが紹介されている。
「セイラーズフォーザシー」日本支局の公式フェイスブックページを見ると、DEAN & DELUCA(ディーンアンドデルーカ)の初のレストラン専門業態である[「THE ARTISAN TABLE」 https://www.artisantable.jp/?fbclid=IwAR3O5p5HtiFsLRagU2tFbjwYvbkRRJZWpDPT99CAvcJOaZplLTBXG-s-KTc]など、一般のレストランも賛同してパートナーになっている。
敷島製パンは2018年4月、ブルーシーフードの昆布を使った「ゆめちから入り塩こんぶチーズパン4個入り」を新発売した。国産小麦のパン生地に、フジッコの「塩こんぶ」とダイスチーズを入れて焼いたものだ(2018年4月16日付日本食糧新聞)。2018年11月13日現在、敷島製パンの公式サイトの商品紹介には載っていない。お客様窓口に電話したところ、「製造中止になりました」とのことだった。
横浜の小学校9校では未利用魚のイワシとサバを使った給食を提供
神奈川県横浜市神奈川区内の市立小学校6校では、2018年11月13日、未利用魚のイワシとサバを使った特別メニューの給食が提供される(2018年11月12日付、神奈川新聞)。
海洋資源が枯渇する一方で、魚の大きさが揃わない、漁獲量が少ない、などの理由で捨てられる魚は多い。そのような、利用されていない「未利用魚(みりようぎょ)」を給食で使い、美味しく食べてもらいながら、小学生に水産資源について考えてもらう取り組みだ。横浜市中央卸売市場と神奈川区内の小学校が連携し、「イワシのカレー揚げ」と「サバのあんかけ」が献立となった。
「おいしく、たのしく、地球にやさしく」
マグロやニホンウナギ、フグなどの海洋資源は枯渇する反面、未利用魚として捨てられる魚も多い。だからこそ、そのような未利用魚や規格外の魚を仕入れて活かす居酒屋「魚治(うおはる)」のような居酒屋や寿司屋なども登場してきている。
セイラーズフォーザシー日本支局は、公式サイトで「おいしく、たのしく、地球にやさしく」とうたっている。魚のメニューを考える時、この「ブルーシーフード」を参考にしてみたい。