バルサはなぜ苦しんでいるのか?ペドリとデ・ヨングの不在…“四人の中盤”とシャビの試行錯誤。
勝つために、乗り越えなければいけない。
バルセロナは現在、リーガエスパニョーラで27試合を消化して3位に位置している。チャンピオンズリーグでは、ラウンド16のセカンドレグでナポリとの対戦を控えている。
■中盤の再編成
シャビ・エルナンデス監督は今季、中盤の編成に腐心してきた。
バルセロナは今夏、ジョシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)、マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ)、ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)といった選手の獲得を検討していた。だがクラブの財政は厳しく、シャビ監督の要望を叶えることはできなかった。
最終的に、バルセロナはジローナから移籍金350万ユーロ(約5億円)でオリオル・ロメウを獲得。セルヒオ・ブスケッツの代役を確保した。だがシャビ監督のロメウへの信頼は徐々に失われていった。
■クリステンセンのピボーテ起用
シャビ監督はロメウ、デ・ヨング、イルカイ・ギュンドアンをソロ・ピボーテ(アンカー)で試した。しかし、「しっくり来ていない」のは明らかで、指揮官の試行錯誤は続けられていた。
そして、リーガ第23節アラベス戦で、シャビ監督はアンドレアス・クリステンセンをピボーテで起用した。これが、嵌まった。
アラベス戦以降、バルセロナが複数失点を喫したのはグラナダ戦(△3−3/リーガ第24節)のみだ。GKマーク・アンドレ・テア・シュテーゲンの復帰もあり、守備に安定感がもたらされた。
だが、ここにきて、バルセロナに暗雲が立ち込めている。
バルセロナはリーガ第27節アトレティック・クルブ戦でフレンキー・デ・ヨングとペドリ・ゴンサレスが負傷した。デ・ヨングは1ヶ月程度の離脱が見込まれ、ペドリはシーズン終盤の復帰が期待される。
クリステンセンのピボーテ起用。その効能は、もうひとつ、あった。クリステンセン、デ・ヨング、ギュンドアン、ペドリ(左WG)と「四人の中盤」をピッチ上に並べることができたのだ。
■バルセロナと四人の中盤
バルセロナは昨季、リーガとスペイン・スーペルコパで優勝を果たし、ドブレテ(2冠)を達成した。その背景にあったのが「四人の中盤」だ。
シャビ監督はシーズン半ばからガビを左サイドに回してファルソ・エストレモ(偽ウィング)で使うようになった。ガビ、ペドリ、デ・ヨング、ブスケッツが中盤で躍動して、ポゼッションを高めながらプレス強度を保つという指揮官の理想のスタイルが実現された。
事実、昨季、バルセロナの守備は堅かった。リーガでは、バルセロナ(20失点)の失点数はレアル・マドリー(36失点)、アトレティコ・マドリー(33失点)、レアル・ソシエダ(35失点)、ビジャレアル(40失点)、ベティス(41失点)と上位陣の中で最も少なかった。シメオネ・アトレティコと比較して「-13」というのは驚くべき数字である。
シャビ監督は現役時代、中盤でプレーしていた。ブスケッツ、アンドレス・イニエスタ、シャビの3選手はジョゼップ・グアルディオラ監督の率いるチームで盤石の中盤を築いて、バルセロナの黄金時代を支えた。
そのシャビ監督にとって、中盤は重要なキーファクターだ。ガビの負傷と長期離脱があり、クリステンセンのピボーテ起用で、ようやく見つけたと思ったピースとパズルが、再び崩れようとしている。
「選手たちは心を痛めている。アトレティック戦は(同節でレアル・マドリーがバレンシアに引き分けていたため)素晴らしいチャンスだった。我々に野心が欠けていたとは思わない。しかし、自分たちを信じること、信念が不足していた」とはシャビ監督の弁だ。
「ペドリとデ・ヨングが負傷して、残念だ。彼らは決定的な選手だ。我々はあまりチャンスを作れなかった。試合に勝ちに行く気概が少し欠けていた。失望している。ガビに加え、ペドリとデ・ヨングがいなくなる。彼らの不在は大きいだろう」
リーガで、バルセロナは首位レアル・マドリーを勝ち点8差、2位ジローナを勝ち点6差で追いかけている。チャンピオンズリーグでは、ナポリを倒せばベスト8進出が決まる。
この時期に主力の2人が抜けるのは、正直、痛手だ。だがシーズンは佳境に入っている。後ろを振り返れば、絶壁。前を向くしかない。勝利を得るために、“超越”が必要だ。