アマゾンが音楽配信で他社と違う「高音質」、最新技術で人気楽曲リマスター
米アマゾン・ドット・コムは先ごろ、米ユニバーサル・ミュージック・グループや米ワーナー・ミュージック・グループと提携し、数千の楽曲・アルバムをデジタルリマスターして提供すると明らかにした。
「Amazon Music HD」の楽曲拡充
イーグルスやマービン・ゲイ、ダイアナ・ロス、レディー・ガガ、アリアナ・グランデといったさまざまなジャンルや時代の楽曲のオリジナル音源をマスタリングし直し、CDよりも高音質で提供するという。
同社によると、マスター音源をCDやストリーミング配信用に圧縮する際、オリジナルにあった繊細な表現が失われる。リマスターすることで、これらが再現されるという。
アマゾンは昨年(2019年)9月に高音質の音楽配信サービス「Amazon Music HD」を始めた。
同サービスではCD音質と同等のHD楽曲を6000万曲以上、より高音質のウルトラHD楽曲を約500万曲配信しており、現在、米国や英国、ドイツ、日本で提供している。
今回は、ウルトラHD楽曲を拡充する狙いがある。また、イーグルスやエルトン・ジョン、レディー・ガガなどの一部のアーティストの楽曲は、米ドルビーラボラトリーズの「Dolby Atmos」やソニーの「360 Reality Audio」形式にリマスターし、3Dオーディオ(立体音響)で配信するという。
Amazon Music HDの米国における通常料金は月14.99ドル(日本では1980円)、プライム会員は同12.99ドル(同1780円)。標準音質のサービス「Amazon Music Unlimited」の5ドル増し(同1000円増し)で提供している。
音楽配信は収益減少傾向
最近は、音楽配信サービスの収益が減少傾向にあると、英フィナンシャル・タイムズは報じている。
音楽配信市場で最も多くの利用者数を抱えているのはスウェーデンのスポティファイ。だが、同紙によると、昨年、スポティファイの利用者1人当たりの1カ月平均収益は4.72ユーロ(約580円)となり、2016年の6.20ユーロ(約760円)から減少した。
スポティファイの利用者数は四半期ごとに数百万人ずつ増えているものの、新規利用者の多くは料金が比較的低い新興国市場の顧客だという。こうした市場ではでキャンペーン割引が盛んに行われる。また、割安なファミリープランの加入者が増えていることも収益低下の要因になっているという。
一方で、アマゾンは高音質が収益向上と競争力強化につながるとみて、高付加価値サービスに力を入れている。同社の音楽配信担当幹部のスティーブ・ブーム氏は、「オーディオ愛好家のためだけのサービスではなく、メインストリーム(主流)にするつもりだ」と述べている。
先行する2社を脅かす存在に
アマゾンは今年1月、音楽配信サービスの利用者数を初めて公表した。その世界利用者数は5500万人超。これには前述した有料サービスの「Amazon Music Unlimited」や「Amazon Music HD」のほか、プライム会員向けの無料サービスと広告付き無料版の利用者も含まれる。
一方、スポティファイの今年3月時点の有料会員数は推計1億3000万人。アップルの有料会員数は同7200万人(図1)。アマゾンの有料会員数は2社に大きく引き離されていると推測される。
- 図1 スポティファイとアップルの有料音楽配信会員数(インフォグラフィックス出典:ドイツ・スタティスタ)
ただ、アマゾンは最近急速に利用者数を伸ばしており、先行する2社を脅かす存在になりつつあるとフィナンシャル・タイムズは報じている。
アマゾンによると、米国や英国、ドイツ、日本の利用者数は前年に比べて約50%増加した。同社にとって比較的新しい市場であるフランスやイタリア、スペイン、メキシコなどでは同2倍以上に増えたという。
- (参考・関連記事)「アマゾンの音楽配信がここまでアップルを追い上げた理由 (小久保重信) -Yahoo!ニュース個人」
- (このコラムは「JBpress」2020年10月6日号に掲載された記事をもとにその後最新情報を加えて再編集したものです)