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アマゾンの音楽配信がここまでアップルを追い上げた理由

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

利用者数を初公表、2強を脅かす存在に

 米アマゾン・ドット・コムはこのほど、音楽ストリーミング配信サービス「Amazon Music」の世界利用者数が5500万人を超えたと明らかにした

 米国や英国、ドイツ、日本では利用者数が1年前に比べて約50%増加したという。同社にとって比較的新しい市場であるフランスやイタリア、スペイン、メキシコなどでは2倍以上に増えたとしている。

 アマゾンが音楽配信サービスの利用者数を公表したのは、これが初めて。これまでこの分野で後発である同社は、競合大手の足元にも及ばないとみられてきた。

 しかし、ここに来て急速に利用者数を伸ばしており、先行するスウェーデンのスポティファイと米アップルを脅かす存在になりつつあると、英フィナンシャル・タイムズなどの海外メディアは伝えている。

アマゾンは米国で最も成長著しい

 ロイター通信によると、スポティファイの有料会員数は2019年9月時点で1億1300万人、アップルの「Apple Music」は同6月時点で、無料体験も含めて約6000万人。首位のスポティファイは、広告モデルの無料サービスも提供しており、そちらの利用者数は約1億4000万人。

 アマゾンのサービスの規模は首位のスポティファイと比べると依然小さい。しかし米市場調査会社のeマーケーターは、アマゾンの音楽配信は米国で最も成長が著しいと報告している。

 eマーケーターによるとアマゾンの強みは、有料会員プログラム「プライム」とAIスピーカー「Echo」。自社のサービスや端末の利用者に特典を付けるなどして、幅広い料金プランを用意。顧客の囲い込みを図っているという。

 アマゾンは昨年9月、高音質の音楽配信サービスを米国や日本、英国、ドイツで始めた。同11月には、それまでEchoシリーズの利用者に提供していた無料版サービスをアップルの「iOS」や米グーグルの「Android」、パソコンの利用者にも広げた。これにより同社の音楽配信は次の5つがそろった。

  1. 「Amazon Prime Music」:約200万曲。プライム会員特典(追加料金なし)
  2. 「Amazon Music Unlimited」:約5000万曲。月9.99ドル(プライム会員は同7.99ドル)
  3. 「Amazon Music Unlimited(端末1台)」:約5000万曲。月3.99ドル(Echo/Fire TVの1台のみで利用可能)
  4. 「Amazon Music HD」:CD音質と同等のHD楽曲が約5000万曲、より高音質のウルトラHD楽曲が数百万曲。月14.99ドル(プライム会員は同12.99ドル)
  5. 「Amazon Music Free」:広告付き無料版。数千のステーション

ストリーミングの隆盛がアマゾンを後押し

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 アマゾンは多様な選択肢を用意し、音楽配信市場で攻勢をかけているが、 昨今のストリーミングサービスの隆盛も同社の躍進に貢献しているようだ。

 国際レコード産業連盟(IFPI)の世界レコード(録音)音楽販売統計によると、2018年のストリーミングサービスの売上高は、前年比34%増の89億ドル(約9900億円)となり、レコード音楽全売上高の47%と、ほぼ5割を占めた。

 また、全米レコード協会(RIAA)のレコード音楽販売統計によると、昨年上半期におけるストリーミングサービスの売上高は前年同期比26%増の43億ドル(約4800億円)で、米国レコード産業全体の80%を占めた(図1)。

  • (このコラムは「JBpress」2020年1月24日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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