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なぜ北朝鮮は次々とスポーツの国際大会を辞退するのか。来年の東京五輪はどうなる?

金明昱スポーツライター
平昌冬季五輪で南北合同入場が実現したが、来年の東京五輪ではどうなるか(写真:ロイター/アフロ)

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)のスポーツ界の様子がどうもおかしい。

 サッカー北朝鮮代表をメインに、その他の競技の動きも少しずつ追っているが、今年は国際大会を辞退する動きがかなり目立つ。

 現在、韓国・釜山で開催されているサッカーの東アジアE-1選手権(12月10~18日)に女子北朝鮮代表は出場資格を持っているにも関わらず、不参加を表明。今大会は代わりに台湾が出場している。

 その理由については公式に明らかにされておらず、少しモヤモヤが残る。

 そもそも女子北朝鮮代表は同大会を3連覇中(2013年、15年、17年)で、今回で4連覇達成も十分に可能だった。出場するほうがメリットは大きいはずなのだが、それも辞退してしまった。

 さらにサッカーのAFCカップ2020(AFCチャンピオンズリーグの下のカテゴリーに位置する大会)の組み合わせ抽選が10日に行われたのだが、そこに北朝鮮のクラブチームの名前はなかった。

 これには正直、驚かされた。

 というのも、今年のAFCカップの決勝戦では、北朝鮮の4・25体育団とレバノンのアル・アヘドが対戦。試合は0-1で4・25体育団が敗れたが、堂々の準優勝。

 北朝鮮においては国内最強クラブであることや優勝も十分に可能であることを世に知らしめたわけだ。

 当然、来年もAFCカップに参加すると思われたのだが、組み合わせ抽選に「4・25体育団」の名はなかった。完全に参加を辞退したということなのだろう。

 こちらもその理由はわからない。あくまでも個人的な想像の範囲だが、今年のAFCカップ決勝戦が元々は平壌の金日成スタジアムで行われる予定だったのだが、最終的に中立地のマレーシアで行われたことと関係しているのではないだろうか。

 中立地に変更になった背景には、10月15日に平壌で行われた2022 年FIFAワールドカップ(W杯)・アジア2次予選グループH・北朝鮮対韓国戦の出来事と関連している。

 この試合はテレビ中継がなく、海外記者や一般客もスタジアムに入れず、無観客で行われた。この事態を重く見たのが大会パートナーとなるスポンサーだと聞いている。

 これを受けてAFCは声明で「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に影響を及ぼしている既存の制裁措置により、商業的権利を持つパートナーから決勝戦の放送配信の可能性について助言を受けた」と発表し、AFCカップ決勝戦の場所を平壌から中立地へ移したというわけだ。

南北関係悪化がスポーツに影響?

 思えば今年8月、日本武道館で開催された世界柔道選手権から様子はおかしかった。

 当初、北朝鮮は参加を表明していたのだが、一週間前に選手団の派遣を急きょ取りやめた。

 現場で北朝鮮選手団の渡航や宿泊の手配、通訳を担当していた人物も不参加の通達に「大会期間は受け入れをしっかりと整えていたので、かなりショックですがしょうがないですよね」と驚きを隠せないでいた。

 これについても公式の理由は明らかになっていない。

 周辺のスポーツ関係者が共通して語るのは「現在の南北関係がスポーツ界に大きな影響を及ぼしている」ということ。

 もちろん、現在の南北関係が一筋縄ではいかないのはよく分かるが、政治とスポーツを切り離して考えられないものかと個人的には思うところでもある。

 それに日本や韓国で行われる国際大会の辞退が目立つが、今年9月にアゼルバイジャンで行われた世界新体操選手権に北朝鮮選手が出場するなど、それ以外の国で行われる大会には出ている。

 やはり東アジアにおける政治状況が、大きく起因しているのは間違いないだろう。

 ただ、こうした流れの中で心配なのは来年開催の東京五輪だ。

 サッカーに関しては来年1月8日からタイで開催されるAFC U-23選手権に北朝鮮も出場する。同大会は東京五輪のアジア予選もかねており、日本を除いた3チームが五輪出場権を獲得できる。狭き門だが、選手たちは必死だ。

 それに北朝鮮には重量挙げ、レスリング、体操など金メダルを取れる競技・種目も多く、選手たちはメダル獲得のために日々練習を重ねているだろう。

 残り1年を切った東京五輪では、日頃の練習で培ってきた成果を堂々と見せてもらいたいところだが、果たして……。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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