「未婚の母」による出生率の実情をさぐる(2023年公開版)
日本の非嫡出子率は約2%
「結婚していない女性により出生した子供」を「嫡出でない子」「婚外子」「非嫡出子」と呼ぶ。アメリカ合衆国など一部先進諸国において出生率が高いのは、非嫡出子が多いのが一因。日本では非嫡出子はどれぐらいいるのか、その実情を厚生労働省の人口動態調査による人口動態統計を用いて確認する。
次に示すのは出生総数に占める、嫡出でない子の割合の動向。例えば直近2022年は2.30%とあるので、2022年に生まれた子供全体のうち2.30%は非嫡出子となる。
非嫡出子に関するデータが収録開始された直後の1947年からしばらくは戦後の混乱期という事情もあり、嫡出でない子の比率は(日本としては)極めて高く4%近くに達していた。その後1975~1980年の高度成長期までは低下を続け、その後再び増加を見せる。このタイミングは高度成長期であるとともに日本の人口関連の数字におけるターニングポイントでもあり、非常に興味深い動きといえる。
直近の2022年においては非嫡出子率は2.30%。元のデータによれば嫡出子77万759人、嫡出でない子は1万7728人とのことである。
諸外国の状況は
出生率の増減のカギを握る、出生全体における「嫡出でない子」の比率は、日本では極めて小さいことが確認できた。また今件記事のきっかけとなったアメリカ合衆国では特に、ヒスパニック系の人たちをはじめとした非白人の割合が高いことが確認できている。
これはアメリカ合衆国(をはじめとした諸外国)では「結婚しないまま子供を出産する」(非嫡出子)事象が社会的・文化的に容認されつつあること、国や社会全体が支援する仕組みを構築している(あるいは個人の「何とかなるだろう」との楽観的な考え方、「そうせざるを得ない」との悲観的状況の増加など)が要因。この非嫡出子の増加が出生率そのものを押し上げている。
それでは日本とアメリカ合衆国以外の状況はどうなのだろうか。OECDが公開しているデータベースOECD.statから、調査対象国における「その年の総出生者のうち結婚していない人による出生者数比率」、つまり非嫡出子比率を抽出した結果が次のグラフ。
収録国に関してやや偏りがあり、アジア方面の値がほとんど収録されていないことから、アメリカ合衆国の実情から推測できる「社会的、文化的特性から、太平洋・アジア文化圏では非嫡出子が容認されにくい環境にあり、結果として値も低くなる」との仮説の裏付けがし難いものとなっているのが残念。
それはさておくとしても、日本は諸外国と比べて非嫡出子の比率が極めて低い、見方を変えれば子供を持つことが結婚とほぼ同義である実情が把握できよう。
■関連記事:
【婚姻率や離婚率の移り変わりの実情をさぐる(2023年公開版)】
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。