二人以上世帯は平均9.1年…乗用車(新車)は何年で買い替えられているのだろうか(2023年公開版)
乗用車(新車)の買い替え年数は少しずつ延びていく
多くの人にとって日常生活の上では欠かせない「足」となる乗用車。そのうち新車は何年ぐらいで買い替えが行われているのだろうか。内閣府の消費動向調査(※)の結果から確認する。
まずは長期時系列データが唯一用意されている二人以上世帯における、乗用車の買い替えについての推移をグラフ化し、その現状を確認する。
なお今件調査項目(買い替え)では乗用車に関しては「乗用車(新車)」とのみ表記されており、特に注釈はない。軽自動車、電気自動車、燃料自動車なども買い替えの自家用として新車が調達されれば対象となる。要は世間一般に「乗用車」と表現されて違和感を覚えない対象と考えればよい。またこれまで世帯単位で乗用車を所有しておらず、新規に調達した場合は今件回答には該当しない(調査票にも「買い替えをしたものがある場合」と記述されている。そもそも新規購入ならば以前の保有車両の使用年数はない)。
やや上下にぶれはあるものの、全般的には赤い破線の補助線動向からも分かる通り、買い替え年数は延びる傾向にある。もっとも古いデータの1992年から始まる3年では平均6.1年ぐらい、最新の2023年までの3年では平均9.1年ほど。3年は延びている。自動車の性能向上などが原因のようだが、できるだけ短い買い替え期間・高い回転率を望む自動車の売り手からすれば頭の痛い話。
これを単身世帯の結果と重ねてグラフ化したのが次の図。
2016年以前では単身世帯の方が買い替え年数が短い。また2009年から導入された、いわゆる「エコカー減税」は”買い替え年数の動向においては”、影響を及ぼしていないように見える。一方、2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要の観点では、単身世帯でやや特異な動き、前年比マイナス0.5年との動きが確認できる。あるいはいくぶんながらも、特需の影響で買い替え年数が短縮された可能性がある。
2015年4月以降に購入した新車の軽自動車に対する軽自動車税が5割増し(同じ軽自動車でも業務用や自家用貨物車は1.25倍ほど)に増税されるのに伴い、軽自動車に対する特需が発生している2015年分では、その特需による短縮は見られないが、2016年の反動もない。
直近年の2023年では、二人以上世帯が前年比マイナス0.1年、単身世帯でプラス1.0年を示している。
買い替え理由から見る税制の乗用車への影響
次に「買い替え理由」を、二人以上世帯・単身世帯それぞれについて確認する。
2015年は軽自動車税の改定に伴う駆け込み需要から「その他」がかさ上げされたようだ。もっとも「上位品目」「故障」を理由に挙げるような買い替え事例が少なくなったことによる相対的な上昇も十分考えられよう。
2021年では単身世帯で「その他」の割合が大きく伸びている。新型コロナウイルスの流行による公共交通機関忌避の影響で乗用車の利用機会が増え、よい機会だからと買い替えを決意したのだろうか。
自動車そのものの耐久性の向上、利用周辺環境の整備などから、自動車の買い替えサイクルは少しずつ延びる傾向を見せている。電気自動車やハイブリッドカーのような「劇的な変化(改善、メリットの上乗せ)」が得られない場合、買い替えのメリットがあまりなく、単価が高いため、現状の環境を維持することが多くなる。この事情は、他の高額耐久消費財と変わらない。
今後自動車の新車販売はますます厳しさを増していく。これまでの方法を繰り返すのではなく、自動車に関連するあらゆる環境における変化を精査し直し、その上で新しい発想による切り口でのビジネスが求められている時代ではないだろうか。
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※内閣府の消費動向調査
今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。
毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の買い替え状況」を今件精査では用いている。これは「対象品目を回答年度(今回の場合は2022年4月~2023年3月)に買い替えをしていた場合、買い替え前の商品はどれだけの期間使っていたか」を尋ねた結果。つまり直近の買い替え実施者における「買い替えまでの年数」が示されることになる。新規に購入した場合や、買い替えが該当時期でなかった場合は回答に加わらない。
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