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「食品ロスの報道は恵方巻に偏っている」は本当か?過去5年の報道回数を調べてみた

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

「食品ロスの報道はいつも恵方巻のことばかり」「一年365日、他にも食品ロスは起きているのに」という意見を耳にする。はたして食品ロスの報道は恵方巻に偏っているのだろうか。過去の報道回数を検証してみた。

確かに2019年は「恵方巻」「食品ロス」が451回報道

日本最大級のビジネスデータベースサービス、G-Search(ジーサーチ)を使って、過去30年間にさかのぼり、国内主要メディア150紙誌に登場した回数を調べてみた。

「恵方巻」と共に、食品ロス問題でよく話題にのぼる季節食品のうち、「クリスマスケーキ」「おでん」「うなぎ」も調べてみた。

結果は次の通り。2012年以前のデータはゼロ、もしくは1件・2件というケースがほとんどのため、グラフでは2013年から2019年の7年間を示した。

「食品ロス」という語句と共に登場した食品のメディア掲載回数(G-Searchを元にYahoo!ニュース作成)
「食品ロス」という語句と共に登場した食品のメディア掲載回数(G-Searchを元にYahoo!ニュース作成)

2019年に「恵方巻」と「食品ロス」が同時に報じられた回数は451回。確かに、他の食品や他の年と比べても突出して多い。

報道にはポジティブな内容とネガティブな内容が混在しており、その比率までは検証しなかったが、話題にのぼった回数が多いことは確かだ。

この要因は、農林水産省が2019年1月11日に、小売業界に対し、「恵方巻は需要に見合った数を販売するように」と通知を出したことが挙げられるだろう。

筆者は2017年2月3日、コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情という記事を書いた。その前の年、2016年2月3日の節分の日に、フランスで世界初の食品廃棄を禁ずる法律が成立し、ソーシャルメディアで、日本の恵方巻の廃棄と共に話題になっていた。そこから、恵方巻の食品ロスについて関心を持つようになった。

2019年「クリスマスケーキ」「食品ロス」は165回

恵方巻の次に目立つのは、2019年の「クリスマスケーキ」だろう。「食品ロス」という語句と共に、165回、登場している。

おそらくこの背景には、ファミリーマートが、大サイズのクリスマスケーキを「完全予約制」にしたことがある。ただ、2019年12月24日と25日のそれぞれ夜に31店舗を調査したところ、小さいサイズについては、多くの店舗でたくさん棚に詰まっているという結果だった。

2019年「うなぎ」「食品ロス」は58回

2019年は、「うなぎ」も58回登場するなど、多く報じられた。これも、ファミリーマートが「予約制」を謳ったことによる。

「おでん」「食品ロス」が初めて報じられたのは20年近くも前

調査した4つの食品のうち、恵方巻とうなぎは2016年に初登場、クリスマスケーキは2017年に初めて登場している。

最も早くにメディアに登場したのが「おでん」「食品ロス」のセットだ。20年近く前の2001年に、佐賀新聞が初めて報じている。佐賀新聞は、おでん以外でも、食品ロスについて、早い時期から報道していた。

2020年、セブンもファミマもローソンも「恵方巻ロス削減宣言」

2020年1月17日、農林水産省は、季節食品のロス削減の取組が拡大!~恵方巻きのロス削減プロジェクトに26社参画~というプレスリリースを発表した。小売企業のうち、26社が、農林水産省の呼びかけに賛同し、2020年2月3日の恵方巻の食品ロスを減らすことを宣言している。この中には大手コンビニのセブン-イレブン・ジャパンやファミリーマート、ローソンが入っている。

農林水産省によれば、2019年の恵方巻のロスは削減傾向にあったとのことだった。

日本の食品小売業の、2019年2月3日の恵方巻のロス削減状況(2020年1月17日、農林水産省発表データ)を元に、Yahoo!ニュース作成)
日本の食品小売業の、2019年2月3日の恵方巻のロス削減状況(2020年1月17日、農林水産省発表データ)を元に、Yahoo!ニュース作成)

はたして2020年2月3日の結果はどうなるか。

恵方巻など季節食品のロスをきっかけに、人々が食品ロスの問題に関心を持ったことはよかった。ただそれだけに終わらせず、一年365日製造される食品や、日常の食事を大切にすることに人々の関心が向くよう、発信者としても尽力していきたい。

参考情報

食品ロスで騒がれる2019年、クリスマスケーキの廃棄は減ったのか?31店舗の実態を調査した

2019クリスマスケーキ「完全予約制」にしたファミリーマート 廃棄はゼロになった?

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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