日本の映画市場はアニメとディズニーが支える時代へ〜映画産業統計2019より〜
2000億円から大きく伸びた日本の映画興行市場
1月28日に日本映画製作者連盟が2019年の興行データを発表した。日本の映画興行収入が去年大きく伸びて2611億円を超えている。前年比17.4%増と驚くほどの伸びとなっている。
筆者は2000年代から毎年この発表をチェックしてきた。その間に洋画と邦画のポジションが入れ替わり邦画の方が高い興行収入になる変化はあったものの、市場全体としては2000億円を行ったり来たりしてきた。
2011年に震災で大きく落ち込んでからは徐々に2000億円のラインを逸脱してきた。それが昨年は目に見えてはっきり伸び、水準が上がったことを感じさせた。今後は2500億円が標準になってきそうだ。
実際、映画館は毎週末盛況で、特に若い観客が増えたことが実感できる。テレビドラマが比較的年配層をターゲットに医療モノや捜査モノに偏っている分、若い観客を意識した作品が劇場への来場者を若返らせているのかもしれない。
興行収入の水準を底上げしたのはアニメとディズニー
日本映画製作者連盟では、興行収入10億円を超えた作品のリストも毎年発表している。それをぼんやり眺めていて気づいたことがある。まず今年は邦画で10億円超えが40本もある。通常は30本台で2016年だけ42本だった。この年以来の豊作だったことがわかる。象徴的なのが、2016年は「君の名は。」2019年は「天気の子」と新海誠作品のメガヒットが両方にある点だ。新海作品は邦画豊作の呼び水なのだろうか。
さらによくよく見ると、10億超えリストにアニメ作品が妙に多い。カウントすると15本もあり、前年までは10本前後だったのがこれも水準が上がっている。
試しに、ここ5年間の10億円超えのアニメ作品だけの興行収入を合計してみると、やはり昨年は金額も大きい。さらに、全体的に豊作だった2016年もかなりの額になっている。
2016年はほとんど「君の名は。」一本が全体を引き上げたのに対し、2019年は「天気の子」だけでなくヒット作も増えてアニメ作品全体が興行収入に大きく影響を及ぼしたことがわかる。
アニメが映画興行を左右する時代に入ったと言って良さそうだ。
一方洋画は最近言われている通り、ディズニー作品の寡占に近い状態になっている。
ベスト10の中の6本がディズニー。10億円超え25本のうち11本も占めている。その興収を合計すると596億円で、10億円超え作品全体の62.1%にもなる。洋画の興行はディズニーが支えているのだ。
つまり、日本の映画興行市場はアニメとディズニーが底上げし、今後も鍵を握るのはこの2つなのだと思われる。全体に子どもっぽくなってしまったのか、アニメやディズニーを大人も楽しむようになったのか。解釈は割れそうだが、映画界が活気づくのはいいことだと思う。今年の映画館がどれくらい賑わうか、注目したい。