ローカル局の役割は災害激甚化でむしろ高まっている
今回の記事は4月22日(月)開催のウェビナー「能登半島地震にテレビ局はどう向き合ったか」(リンクは告知サイト)に関連した内容だ。
能登半島地震に続いて各地で地震が起こり、台湾でも大地震が
元日に起こった能登半島地震には、のんびり正月を過ごしていた日本中が驚いた。その後、伝わってきた被害は激しく、被害に遭ったみなさんには今さらながらお見舞いを申し上げたい。
その3カ月後、今度は台湾で大きな地震が起こった。日本国内でも各地で地震が起こっており油断できない。今週も8日に宮崎で最大震度5弱の地震が起こったばかりだ。4月に入り多発しているとの記事もあった。
4月に入り地震多発 今日は宮崎で最大震度5弱 今一度備えの見直しを
次はどこで大きな地震が起こるかわからない。日本中に住む人が、まさかの事態に備えておく必要があるだろう。
1月の地震についてメディアの振り返りが始まった
放送関係の業界誌が、今月発売の号で能登半島地震に対するメディアのあり方を振り返っている。地形の複雑さから現地の状況把握には時間がかかり、インフラの復旧はまだまだ遅れている。3カ月経ってやっと振り返るタイミングが来たのかもしれない。一般市民が地震に備える必要があるように、日本中のテレビ局がまさかの時に備えて、能登半島地震の振り返りに耳を傾けるべき時だと言える。
月刊誌「GALAC」は5月号で「能登半島地震 その時、メディアは」という特集を組んで、様々な角度からメディアの伝え方を検証している。
月刊ニューメディアは先月発売の4月号で「能登半島地震にメディアはどう向き合ったか」を特集していたが、5月号でもその続きを掲載した。
今回の地震では中継局が機能を停止して放送が届かなくなった地域が出てきた。そのせいもあり、北陸各局はYouTubeを活用して地震を伝え、たくさんの人が視聴した。ローカル局があらゆる手段で情報を届ける必要があることを、如実に感じる災害だった。
北陸放送の公式チャンネルでは再生数が170万回を超えた動画もあった
大きな災害が起きた時、ローカル局が伝える意義とは
筆者も今回のウェビナーを企画する際に、北陸のテレビ局(石川・富山・新潟)各局の方々から情報を得たが、生々しい言葉に心が震えた。
「今回の震災は、ある意味、日本人の急所をあらゆるところからついてきているのではないかとも思いました。元日の夕方、1年で最も幸せな時間のはず。が、道路一本挫かれただけで、すべてが止まってしまう」
こう表現した人もいた。元日という最もくつろぐ日に起きたことを、”日本人の急所を突かれた”と言っているのだ。
「こうした現象に放送局に何ができるのか?放送はどれだけ命を守れるのか?あらためて自戒する日々です。」
自省的にこう語ってくれた。
ある局の人は、元日に他局が21時で通常番組に戻る中、地震報道特番を続けたことをこう語ってくれた。
「勇んで報道を続けたつもりでもないんです。津波警報がまだ発令されていたのと、すぐ暗くなったので被害の全容がわからない中これから被害が明らかになるかもしれない。この2つの理由で通常番組に戻らなかった。あとは個人的な思いですが、災害があった時に地元のアナウンサーや記者が伝えることで安心を感じてもらえるのではと思いました。」
ローカル局の存在意義とはまさにこういうことだろう。だが一方で「なんで正月番組やらないんだという苦情もいっぱい来ました。」と苦笑いしていた。地震が起きた不安を、正月らしい娯楽番組を見て紛らわせたい人も大勢いただろう。そしてそれも、テレビ局の役割だ。ウェビナーではこうした経験談をさらに聞いてみたい。
経営が厳しくても、ローカル局は地域にますます必要
地震だけでなく、異常気象が常態化してあちこちを豪雨が襲い、猛暑が長引く。この国の災害が激甚化しているのは明らかだ。ローカル局は今、広告収入の激減で経営は厳しいが、地域での役割はむしろ高まっている。
もちろん公共的な役割をまず担うのは”公共放送”であるNHKだが、ローカル局にも公共性が前よりも求められている。災害だけでなく、地域社会が立ち向かうべき課題は様々に広がっていて、その解決を地域の人々と一緒に考える場にローカル局がなる必要がある。
筆者はNHKと民放の「公共性」の違いについてこう考えている。NHKは公共の「公」を担い、オフィシャルに伝えるべきことを届けるのが役割。民放は「共」の役割として、国民と一緒になって課題に対処していく。
そうだとすれば、NHKと民放はその役割を分担しながら協力もして、災害のような一大事に立ち向かうべきだろう。ローカル局の役割はまだまだ大きいと私は思う。
22日のウェビナーでは、石川・富山・新潟の民放各局の方々に登壇してもらい、元日から今までを参加者と「共に」振り返っていきたい。