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首都圏マンション価格が上がる中、「4000万円台3LDK」で人気物件続出の郊外4駅

櫻井幸雄住宅評論家
駅近くに、こんな商業エリアが広がる街でも人気マンションが続出……。筆者撮影

 3月17日に不動産経済研究所が発表した2月の首都圏新築マンション1戸当たりの平均価格は、7418万円となった。前年同月比16.3%のアップで、1ヶ月前の1月の平均価格6157万円と比べると1000万円を大きく超える上昇……とんでもなく高額化しているのだが、そのことを知っている人は少ないだろう。

 2021年の新築マンション価格が6260万円でバブルを超えた、と発表された先月は盛んにニュースで取り上げられた。

 しかし、「マンションが7418万円」は一時的な現象ではないか、と、記事化が控えられたのである。

 実際、首都圏の新築マンション平均価格が7418万円というのは、あまりに高すぎる。

 といっても、7418万円はあくまでも首都圏全体の平均値。首都圏における新築マンションの発売戸数は大幅に減少しているため、都心部で高額のマンションが大量に発売されると、全体の平均値を大きく引き上げる現象が起きる。

 2月に首都圏の新築マンション価格が「平均7418万円」になったのも、同じ理由だ。

 具体的にいうと、2月に首都圏で販売されたマンションの戸数は2287戸。そのうち、1048戸が東京23区内に立地する物件で、その平均価格は9685万円(すべて、不動産経済研究所の発表)だった。

 1ヶ月に新規発売されたマンションの半数近くが23区内で平均1億円近かったため、首都圏全体の新築マンション平均価格が7418万円になってしまったわけだ。

郊外で3LDKが4000万円台の場所もある

 じつは、「2021年の首都圏新築マンション価格は平均6260万円」も、高額化した23区内の物件価格によって引き上げられている側面がある。首都圏全域で新築マンション価格が6260万円になっているわけではないのだ。

 現在、平均的なサラリーマンが購入するマンションは、首都圏の郊外部で3000万円台から5000万円台の1LDK〜3LDKが中心。その価格帯の新築マンションは現在も購入可能だ。

 郊外のファミリー向け3LDKであれば、4000万円台と5000万円台が実際の売れ筋。そのうち、4000万円台の物件ならば、低金利の今、毎月のローン返済は10万円を少し超えるくらいだ。これに管理費・修繕積立金などを加えても、毎月の出費は13万円程度となる。

 それくらいが、現実的なマイホーム購入なのである。

 では、その条件で狙い目の駅はないか。

 すなわち、現在の首都圏で、「駅から徒歩圏の新築マンション3LDKを4000万円台で購入できる場所」のうち、人気物件が続出しているところはないか。最新の取材メモを基に探してみた。

 浮かび上がってきた駅は4つ。JR東海道本線の平塚駅とJR常磐線(上野東京ライン)柏駅、つくばエクスプレスつくば駅、そしてJR京葉線蘇我駅だ。

 冒頭に掲げた写真は、4駅のうち、つくば駅近くの商業施設を撮影したもの。たまたま人の姿がないが、歩行者専用の空間で賑わいのある場所である。

共通するのは、「環境のよさ」と「始発駅」

 平塚駅、柏駅、つくば駅、蘇我駅に共通するのは、海や山に近く、住環境がよい。そして、都心から離れるが、始発電車が利用できるので、都心まで座って通勤できることも共通する特徴となる。

 まず、4駅は都心部から離れる。山手線ターミナル駅から所要時間1時間程度の場所が多くなる。

○平塚駅 東京駅まで約63キロメートル、所用時間約1時間

○柏駅 東京駅まで約33キロメートル、所要時間約40分

○つくば駅 秋葉原駅まで約58キロメール、所要時間約45分(朝の通勤時間帯は、快速の運行がないため約1時間)

○蘇我駅 東京駅まで約48キロメートル、所要時間約50分

 柏駅は他駅よりも都心に近く、乗車時間も短い。そのため、駅周辺の新築マンション価格は6000万円台を超えてしまう。しかし、駅から15分程度歩けば、4000万円台の3LDKがみつかる。都心ターミナル駅から40分程度の距離なので、駅から15分歩いて所要時間は1時間程度……それでもよい、という人が少なからずいるため、駅から離れた場所で人気マンションが出やすい駅なのだ。

 それ以外の駅は都心までの乗車時間がだいたい1時間かかるポジションとなる。

 一方で、海や山に近く、身近に公園が多いなど休日の楽しみが広がる。コロナ禍が続く今、家族で過ごす時間が増えているので、自然が身近であることは大きな長所となる。

 では、4つの駅におけるマンションの価格水準は、どれくらいだろうか。

4駅の新築マンション価格を調べてみると

 具体的に、4駅で現在販売中の新築分譲マンション価格を調べてみた。

○平塚駅 駅から徒歩12分の大規模マンションで、3LDKが3400万円から5000万円

○柏駅 駅から徒歩15分の大規模マンション3LDKが4400万円台最多

○つくば駅 駅から徒歩5分の大規模マンション3LDKが3900万円台から予定で、4700万円台最多予定

○蘇我駅 駅から徒歩9分のマンション3LDKが3998万円など

 それくらいなら無理せず購入できそう、と思える価格水準なのである。だから、人気マンションが続出するわけだ。

 以上4駅に加え、番外編として、JR中央線の始発電車を利用できる高尾駅にも注目したい。

 同駅は東京駅まで約53キロメール、乗車時間約1時間だ。残念ながら、現在、駅徒歩圏で販売中、もしくは販売予定のマンションがないので、4駅に加えることができないのだが、その相場価格は抑えられている。

 高尾駅周辺では2015年から16年にかけて、爆発的に売れたマンションがあった。400戸を超える大規模マンションだったが、高尾駅から徒歩6分・3LDKが3000万円前後という価格設定が人気を呼び、短期間に完売した。

 それから、5年以上が経っているので、不動産業界でいうところの「需要がたまっている状態」。価格や内容に妥当性のある物件が販売されれば人気になるはず。だから、そろそろ不動産会社が新規分譲マンションを出してもよいのでは、という期待を込めての番外選出だ。

 山手線ターミナル駅から1時間程度となると、「そんなに遠い駅は無理」という人もいるだろう。しかし、テレワークの対象者など、毎日通勤しなくてもよい人ならば、検討する価値はあるはず。

 実際、毎日通勤しなくてもよい人は増えている。だからこそ、都心から1時間圏の郊外駅で販売好調なマンションが続出しているのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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