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智弁和歌山、天理、東洋大姫路に大阪2強など、激戦を突破した強豪が近畿大会出場を決める!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
立命館宇治が平安に逆転サヨナラ勝ちして、京都1位で近畿大会に乗り込む(筆者撮影)

 先週末は、近畿各地で府県大会の終盤戦が行われ、近畿大会(兵庫・ほっともっと神戸で19日開幕)に出場する16校中、15校が決まった。2校が出場する奈良と滋賀では準決勝で2強が対決し、勝者がそのまま1位で通過。明暗がくっきりと分かれた。出場校と順位は以下の通り。

 滋賀=①滋賀学園 ②滋賀短大付

 京都=①立命館宇治 ②龍谷大平安 ③北稜

 兵庫=①東洋大姫路 ②神戸学院大付 ③三田学園

 奈良=①天理 ②奈良

 和歌山=①智弁和歌山 ②和歌山東 ③市和歌山

 大阪決勝=大阪桐蔭履正社 3位決定戦=大阪学院大高近大付

大阪は昨秋に続き、決勝で2強が激突する

 大方の予想通り、大阪は「2強」が決勝で激突となった。昨秋も決勝で当たり、3-2で大阪桐蔭が勝って、秋の大阪5連覇を達成。夏は準決勝で大阪桐蔭がコールド勝ちし、前チームの対戦は大阪桐蔭の2戦2勝。今チームも、中野大虎(2年=主将)、森陽樹(2年)の両右腕が抜群の安定感を見せる大阪桐蔭の優位は動かない。履正社にも、前チームから野手との「二刀流」で活躍する辻琉沙(2年)ら能力の高い選手がいて、接戦に持ち込めば勝機が出てくる。前チームで春に2強を連破した大院大高は、準決勝で大阪桐蔭に完封負け。履正社とタイブレークの熱戦で惜敗した近大付と、最後の出場枠を争う。

天理は智弁に夏の雪辱を果たす

 奈良と滋賀は準決勝が大ヤマだった。天理と智弁学園の対決は、前チームでは1勝1敗。夏は準々決勝で当たって、智弁が勝ち、甲子園でも8強入りした。試合は序盤こそ智弁ペースだったが、徐々に盛り返した天理が6回に逆転。終盤に突き放して7-2で快勝した。天理は決勝でも奈良に大差勝ちし、今年1月に就任した藤原忠理監督(59)にとって、初めての甲子園チャンスが到来。夏に智弁に敗れた際、「相手のプレッシャーがあって、ミスから失点した。若いチームなのでいい経験にしてくれたら」と話していたが、悔しさを知る夏のレギュラー4人を中心に、見事な雪辱はさすがと言うほかない。進学校の奈良は、準決勝で郡山に快勝して、34年ぶりの近畿大会出場を決めた。

近江に剛腕1年生登場も、滋賀学園にコールド負け

 滋賀の準決勝は、夏の甲子園8強の滋賀学園が近江を圧倒し、8回コールドの14-2という大差でライバル対決を制した。相手投手陣の乱調もあったが、13安打を浴びせ、長身右腕の長崎蓮汰(2年)が2失点の完投で、今春に続き近江に2連勝となった。ただ、近江にも明るい材料がないわけではない。「秘密兵器」と言われた右腕・上田健介(1年)が先発で鮮烈デビューを果たし、最速147キロの速球を軸に、5回で9三振を奪った。制球難から失点したのは惜しまれるが、先輩の山田陽翔(西武)も1年秋は悔しい思いをしている。また、秋に敗れた時の近江は必ず夏に強くなる。次回の対戦を楽しみに待ちたい。滋賀短大付は、準決勝で綾羽に快勝して初の近畿大会出場となった。決勝も最終スコアは0-8だったが、6回まで両校無得点と健闘している。

京都は平安が逆転サヨナラ負けで優勝逃す

 夏の全国王者・京都国際の早期敗退で波乱含みとなったが、実力校が決勝へ進んだ。試合は両校譲らず、1-1のまま延長タイブレークに突入。先攻の龍谷大平安は1死2、3塁から6番・前田塁翔(2年)の適時打で勝ち越すが2点目を奪えなかったのが響いた。その裏、先頭のバント処理でもたつき無死満塁とされると、立命館宇治の3、4番に連続適時打を浴び、逆転サヨナラ(タイトル写真)での決着となった。敗れた平安の原田英彦監督(64)は「芯になれる選手がいない。公式戦でちびってる(小さくなっている)ようじゃ、平安らしくない」と、選手たちの奮起を促した。一方、勝った立宇治は、夏に平安に負けて2年連続の甲子園出場を逃していて、サヨナラ打の4番・伊藤央太(2年=主将)は、「3年生の分までやるぞ、と思っていた。絶対、決めてやるという気持ちだった」と声を弾ませた。

「皆勤校」の山城は、チームの大黒柱を欠き涙

 これより先に行われた3位決定戦では、北稜が山城を6-2で破り、初の近畿大会出場を決めた。東山鳥羽などの強敵を倒して波に乗る山城だったが、鳥羽との準々決勝で主将の高尾輝(2年)が顔面に死球を受け、骨折。捕手でチームの柱を欠き、代役の1年生が懸命に先輩投手をリードしたが、立ち上がりから北稜に主導権を握られた。

惜しくも42年ぶりの近畿大会出場を逃した山城の選手たち。フェイスガードを装着した主将の高尾(左から二人目)も悔しかっただろう。岸本監督は「このユニフォームは吉田さんの頃から」と胸を張った(筆者撮影)
惜しくも42年ぶりの近畿大会出場を逃した山城の選手たち。フェイスガードを装着した主将の高尾(左から二人目)も悔しかっただろう。岸本監督は「このユニフォームは吉田さんの頃から」と胸を張った(筆者撮影)

 

 8回に決定的な4点を奪われたが、9回には意地を見せ、1死満塁から1番・井上渉太郎(2年)の2点適時打で食い下がる粘りは見事だった。OBでもある岸本馨一郎監督(39)は「中盤、よく立て直した」と、2回途中から救援したエース・井上瑞貴(2年)の力投を称えていた。山城は全国に15校しかない夏の第1回地方大会から出場を続けている「皆勤校」のひとつで、プロ野球阪神を日本一に導いた吉田義男・元監督(91)も卒業生という名門校。近畿大会出場はならなかったが、往年のファンに期待を持たせる大健闘だった。3位の北稜は初出場で、左腕・中村勇翔(1年)は緩い球を高低に投げ分け、的を絞らせない。近畿の強豪も油断ならない技巧派だ。

東洋大姫路のエースは奪三振王

 ホスト県となる兵庫は、東洋大姫路が神戸学院大付を7-1で破って優勝。OBでもある岡田龍生監督(63)の就任後、初の近畿大会出場に花を添えた。このチームの強みはエース・阪下漣(2年)の存在で、最速147キロの直球とキレのいいスライダーを武器に、準々決勝以降の3試合をいずれも完投。28回で31個の三振を奪っている。攻撃陣も上り調子で、総合力は近畿でもトップクラスだろう。3位決定戦では、三田学園が神戸国際大付に5-1で快勝して、20年ぶりの近畿大会出場となった。

智弁和歌山は速球派の完封リレーで優勝

 近年の和歌山で上位を占める有力校が勝ち残り、智弁和歌山が和歌山東を1-0で破って優勝した。強力打線が伝統の同校にしては意外な印象だが、最近は投手力で勝ち進むことが多い。前チームからエースだった渡辺颯人(2年)は経験十分で、控えにも速球派の宮口龍斗(2年)がいて万全。決勝でも鮮やかな完封リレーを完成させた。野手陣は1番を打つ藤田一波(2年)が攻守で牽引している。和歌山東は惜敗したが、決勝も内容的には互角で、失点は失策絡みによるもの。近畿大会でも、準優勝した3年前のような活躍が期待できる。市和歌山は前チームから課題だった投手陣の立て直しが、躍進のカギを握る。

大阪勢や平安がどこと当たるかに注目

 こうして見渡すと、今回の1位校はどこもかなり強い。まだ決まっていないが、大阪は言わずもがなで、逆に大阪の2位、3位や平安などと当たる1位のチームは不運とも言える。平安の原田監督は、「兵庫開催の時は毎回(センバツに)いけてる」と話したが、6年前は3位で出場して、近畿王者になった。また今春まで、近畿からは必ず公立校がセンバツに選ばれている。ちなみに今大会に出場する公立は、北稜、奈良、市和歌山、和歌山東の4校だ。抽選は来週の15日に行われる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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