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なぜバルサは“クラシコ”でレアルに勝てたのか?ガビとペドリの躍動とシャビが送り出した4人の中盤。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶペドリ(写真:ロイター/アフロ)

スペインの2強が、サウジアラビアの地で激突した。

スペイン・スーパーカップの決勝で、レアル・マドリーとバルセロナが対戦した。ガビ、ロベルト・レヴァンドフスキ、ペドリ・ゴンサレスが得点を挙げ、バルセロナが3−1で勝利している。

ガビとペドリ
ガビとペドリ写真:ロイター/アフロ

思えば、昨季のスーパーカップで、バルセロナはマドリーに敗れていた。

だがシャビ・エルナンデス監督就任から数ヶ月後の試合で、バルセロナは可能性を示した。マドリーに敗れた後、「非常に誇らしかった。これが歩むべき道だ。正面から戦い、勇気、プライド、乗り越える力というものを示してくれた…。会長として、また我々の理事会の名前を持って、君たちを祝福したい」と語ったのはジョアン・ラポルタ会長だ。

■バルセロナの大型補強

タイトルを取り返すため、旅は始まった。2021−22シーズンを終え、バルセロナは積極補強に動く。この夏、1億5300万ユーロ(約214億円)を補強に投じて、戦力アップを図り7選手を獲得した。

大きかったのはロベルト・レヴァンドフスキの獲得だ。34歳のストライカーが、バルセロナの攻撃を牽引するようになった。ガビ、ペドリ・ゴンサレスと若い選手が中盤で躍動して、レヴァンドフスキがフィニッシュする。その形が、出来上がってきていた。

スペイン・スーパーカップのクラシコ
スペイン・スーパーカップのクラシコ写真:ロイター/アフロ

一方、マドリーは、過密日程に苦しんできた。

「我々には、スペイン・スーパーカップがある。これは全チームがプレーするものではない。ワールドカップがあり、(順調に行けば)3月19日あたりまで我々は中3日で試合をしていくことになる。未来に何が起こるかを予想するのは難しい」とはカルロ・アンチェロッティ監督のコメントだ。

■カタールW杯と過密日程

マドリーは12選手をカタールW杯に送り込んだ。フェデリコ・バルベルデ、アントニオ・リュディガー、エデン・アザール、ティボ・クルトワ、ダニ・カルバハル、マルコ・アセンシオ、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエス、エデル・ミリトン、ルカ・モドリッチ、オウリエン・チュアメニ、エドゥアルド・カマヴィンガが世界最高峰の大会でプレーした。

ただ、無論、それはマドリーだけを襲った問題ではない。バイエルン・ミュンヘン(17名)、バルセロナ(17名)、マンチェスター・シティ(16名)、マンチェスター・ユナイテッド(14名)とビッグクラブとしては避けられない事態となっている。

競り合うペドリとミリトン
競り合うペドリとミリトン写真:ロイター/アフロ

そのような状況で迎えたスーパーカップの決勝、ペースを握ったのはバルセロナだった。

シャビ監督はガビ、ペドリ・ゴンサレス、フレンキー・デ・ヨング、セルヒオ・ブスケッツと「4人の中盤」の選手をスタメンで送り出した。そして、その采配は的中する。

その実、重要だったのは守備だ。ペドリが、相手のアンカーのトニ・クロースを徹底的にマークする。「アンカー潰し」で、マドリーのビルドアップを封じた。

(ペドリのアンカー潰し)

また、左のインサイドハーフにデ・ヨングを入れて、ブスケッツをプロテクトした。ベテランの域に達しているブスケッツは、今季、度々、アンカーの位置で「裸の状態」になり、相手のプレスの的になっていた。守備では、広大なスペースを一人でカバーせざるを得ず、フィジカル的に厳しいゲームが続いていた。

(デヨングのボランチ化)

しかし、デ・ヨングが左ボランチ化することで、ブスケッツを助けた。ビルドアップの面でも、ボールの出所が2つになり、球出しがスムーズになった。

(アラウホの右SB)

加えて、シャビ監督はヴィニシウス対策でロナウド・アラウホを右SB起用した。突破力のあるヴィニシウスに対して、1対1に強いアラウホをぶつけ、ディフェンス時に綻びが生じないようにした。

ヴィニシウスを止めるアラウホ
ヴィニシウスを止めるアラウホ写真:ロイター/アフロ

そして、このクラシコで大活躍したのが、ガビである。

ペドリがクロースのマークに付いたため、攻撃のタクトを振るうのはガビの役目だった。

左WGに配置され、ガビは自由にプレーする。ワイドに張り、ハーフスペースに顔を出し、中盤に降りて来てゲームメイクに参加した。さらに、カウンターの場面では積極的に飛び出し、1ゴール2アシストの活躍を見せた。

■クラシコの結果とタイトル

終わってみれば、バルセロナの3−1の完勝だった。

「うまくいった。ガビは素晴らしかったね。我々は、4人の中盤の選手を起用した。選手たちは、非常によく理解していた」とはシャビ監督の試合後の弁である。

「非常に満足している。結果もそうだが、内容も良かった。もちろん、勝利は影響する。それが自信を与えてくれるからだ。我々はボールロストが少なかった。中盤の選手たちは、しっかりと意図をわかってくれた。まだ改善の余地はある。でも、私は喜びを感じている。選手たちのことを思うとね。彼らはアンフェアな批判を浴びていた。そういったものから解放されたはずだ。マドリーを下してのタイトルだ。我々はそこに誇りを感じるべきだ」

選手に指示を送るシャビ監督
選手に指示を送るシャビ監督写真:なかしまだいすけ/アフロ

シャビ監督にとって、バルセロナの指揮官に就任して、最初のタイトルだった。

もちろん、主要タイトルと言えば、リーガ、チャンピオンズリーグ、コパ・デル・レイだ。だが決勝でマドリーを倒しての戴冠の意味は大きい。シャビ・バルサが、シーズン後半戦に向けて弾みをつけている。

※文中の図は全て筆者作成

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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