一時は2部降格の危機に。翼をもがれ、苦戦を強いられたビジャレアル。
2018-19シーズンは、ビジャレアルにとって、苦しい一年となった。
この5年連続で欧州カップ戦出場権を獲得してきたビジャレアルだが、今季は残り1試合になるまでリーガエスパニョーラ1部残留を決められなかった。第36節終了時点で15位につけ、降格圏内の18位ジローナと勝ち点3差だった。
2011-12シーズンに経験した2部降格の「亡霊」が、影をちらつかせていた。
ビジャレアルは昨年12月10日にハビエル・カジェハ監督を解任している。リーガで15試合を消化して、3勝5分け7敗という成績だった。たまらず、クラブはルイス・ガルシア監督を招聘する。
だが事態は好転しなかった。L・ガルシア政権で、ビジャレアルは4分け2敗と未勝利が続き、19位まで沈んだ。解任から50日後、カジェハ監督の再就任が決定した。
■サイドアタッカーの放出
ビジャレアルは、今季開幕前にデニス・チェリシェフとサム・カスティジェホを放出した。
2016年夏にレアル・マドリーに移籍金1000万ユーロ(約12億円)を支払い、デニス・チェリシェフを完全移籍で獲得したビジャレアルだが、そのチェリシェフを買い取りオプション付きのレンタルでバレンシアに放出した。また、カスティジェホに関しては、移籍金固定額1800万ユーロ(約22億円)に1500万ユーロ(約18億円)の買い取り義務を付けた契約でクラブ間合意に至った。
ビジャレアルはサイドアタッカーを、一挙に2人失った。中盤ダイヤモンド型の4-4-2を採用していたカジェハ監督にとっては、チェリシェフとカスティジェホは不要な選手という判断だったのかもしれない。
■もがれた翼
しかし、ウィングという翼をもがれたビジャレアルは、苦戦を強いられることになった。
マヌ・トリゲロス、パブロ・フォルナルス、サンティ・カソルラで中盤の構成力を高めるというのがカジェハ監督の算段だった。彼らはサイドハーフに置かれても、中央に寄りながらコンビネーションで崩していける連携力の高い選手たちだ。
突破型の選手ではなく、連携力の高い選手で固めて、ポゼッションを高め、前線の選手の決定力で試合を決める。それが指揮官の狙いだったのだろう。
事実、ビジャレアルは前線の選手に獲得に大金をはたいている。攻撃陣の核となっているカルロス・バッカ、ジェラール・モレノ、トコ・エカンビ獲得に5300万ユーロ(約66億円)を支払う決断を下した。
だが結果が伴わず、カジェハ監督は解任される。後任に就いたルイス・ガルシア監督は4-2-3-1を採用した。ダブルボランチに固執する指揮官の要望で、クラブはレスター・シティからビセンテ・イボーラを獲得する。リーガ15試合19失点という守備を改善しようと試みたのだ。一方で、補強費の大半を投じた攻撃陣の起用枚数が減り、バッカ、バカンブ、モレノの3選手のうちトップは「1枠」になった。
■残留
L・ガルシア政権は短命に終わり、カジェハ監督の復帰が決まる。戻ってきた指揮官は3-6-1(3-4-2-1)、3-5-2(3-1-4-2)、4-2-3-1と複数システムを併用しながら戦っている。ウィングバックには、マリオ・ガスパール、ハウメ・コスタ、シャビ・キンティージャというサイドバック型の選手が置かれている。
「我々の目標は勝ち点45の獲得だ。1部残留というのは、我々にとってタイトルの獲得と同義なんだ」というのは、今季開幕前のフェルナンド・ロイグ会長の言葉である。
18-19シーズン、ビジャレアルの予算は1億3700万ユーロ(約172億円)だ。これはリーガで6位の予算額である。資金面で苦しんでいるクラブは、ほかに存在する。
ビジャレアルは人口5万人の街だ。小さな街のスモールクラブは、ボールを握るスタイルと相まって、他クラブから一目を置かれている。翼をもがれ、苦しい日々を過ごしていても、会長の言うタイトルーつまり1部残留だー確保は至上命題だった。
その目標を果たした現在、プランの見直しと組織の再構築が求められている。