FacebookがJASRACと包括契約していた件
JASRACがYouTubeやニコニコ動画等のUGC(User Generated Contents)サイトと包括契約し、所定の著作権利用料を事業者から徴収することで、サービス利用者側は特に手続をしなくてもJASRAC管理楽曲含む動画を合法的にアップロードできる仕組みになっていることは周知かと思います(なお、NexTone管理楽曲についても同様です)(参考過去記事)。さらに、同様の仕組みにより、アメブロ、Yahooブログ、ライブドアブログ等の大手ブログサービスへの投稿記事で合法的に(かつ、利用者視点では無料で)歌詞を掲載することが可能になっています(参考過去記事)。
これらの包括契約の対象にFacebookは入っていなかったのですが、あるアーティストの方の昨日付のブログ記事で対象になっていたことを知りました(ちょっとびっくりです)。
確かにJASRACのサイトの「利用許諾契約を締結しているUGCサービスリストの公表について」ページを見てみるとFacebook(とInstagram)が載っています。Archive.orgで、このページの過去のスナップショットを見てみると2019年7月27日時点では載っていなかったので、最近に追加されたものと思われます。比較的影響度が高い変更だと思うのですが、JASRACからもFacebookからも特にリリースは出ていないようです(これからする予定なのでしょうか?)
なお、7月27日の時点から追加されているUGCサービスは(FacebookとInstagramに加えて)17Live、うたオン、MOTTO ! MOTTO !! App、SHOWROOM、Pokekara、REALITY、はてなブログ(歌詞のみ)です。TikTokは(前から)入っていますが、ツイッターは入ってません。
なお、念のため書いておきますが、これは楽曲の権利の話(作曲家・作詞家の権利)の話であって、自分で演奏(打ち込み)した動画をアップするのは問題ありませんが、CD音源を使う場合(原盤権がからむ場合)はまた別です。なお、原盤権についてはNexTone管理楽曲の一部についてYouTube等において包括契約による利用が可能になっていますが、あらゆる楽曲をあらゆる動画サイトでという状況にはまだなっていません。
余談ですが、私もたまにFacebookに自分のジャズ演奏動画をアップしたりしているのですが、パブリックドメインでない楽曲の場合はFacebookに直接アップしないで、いったんYouTubeにアップしてからFacebookにリンクを載せるようにしていたのですがその必要もなくなりました(なお、私のFacebookの投稿はほとんど公開していますのでフォローはご自由にどうぞ、フレンド締結は何らかのお付き合いがあった人のみとさせていただいています)。
さて、このようにJASRACが仲介者として介在してサービス提供者と包括契約することで、利用者は利用条件の交渉や料金を気にせず音楽を利用でき、作曲家・作詞家には自分の作品の価値に応じたリターンが得られるという、Win-Winの仕組みが得られるわけです。
これに関して、最近、ネタか本気かわかりませんが、JASRACを解体せよといった主張をされている人がいるようですが、こういう人たちはどういう世界を作ろうとしているのでしょうか?動画サイトではパブリックドメイン以外の音楽を使えない世界でしょうか?利用者が勝手に音楽を使っても作詞家・作曲家は(訴訟をしても割が合わないので)黙って見ているしかない世界でしょうか?動画アップのたびにいちいち権利者と契約交渉をしなければならない世界でしょうか?
「ブロックチェーン技術が普及すれば..」なんてことを言う人もいますが、パブリック・ブロックチェーン・ベースの暗号資産で少額課金すると、現状JASRACに支払っている手数料よりもはるかに高額な取引手数料をマイナーや交換所に払うことになってしまうのですが、それでいいのでしょうか?かと言って「では手数料節約のために取引をまとめて大口化して個々の利用者ではなくサービス事業者からまとめて徴収して再分配すればよいのでは..」なんて話になると「それ何てJASRAC?」ということになってしまいます。