YouTubeとNexToneがフェアな著作権料分配に向けて大きく前進
「YouTubeから再生数など実績に応じて著作権料支払い 国内2位の楽曲管理社NexToneが実現へ」というニュースがありました。「YouTubeで音楽が利用された場合に著作権者に支払う使用料を、従来の定額制ではなく再生数など実績に応じた変動制に移行する方針を発表」したそうです(NexToneのプレスリリース)。
YouTubeがJASRACとNexToneという日本の二大音楽著作権管理事業者との契約により、その管理曲を利用を包括的に許諾され、著作権料を支払っていることは周知かと思います。ユーザー側はは著作物を自由に、無料で、特別な許諾手続きなしで楽曲を利用でき、クリエイター(作詞家・作曲家)にも対価が還元されるという点で仕組みとしては悪くないと思います。
この場合に、抜かれる手数料はJASRACは10%、NexToneは9.8%です。これ自体はそれほど暴利とは思えません(多くの場合、その後クリエイターに回る前に音楽出版社に半分以上抜かれてしまいますがそれは別記事で議論したく思います)。
なお、このような包括契約を行なっている動画サイトはYouTubeに限らずニコニコ動画等々、数多くあります(JASRAC契約サイトのリスト)。契約サイトにはたとえばツイキャスも含まれてますので、ツイキャスで弾き語り等しても著作権的には問題ありません。
この仕組みで唯一課題があったとするならば、クリエイターへの公平な分配です。ファンキー末吉氏らが問題にしているようにサンプリング調査ベースの分配ではどうしてもある程度のアバウトさが発生します。しかし、動画サイトの配信であれば、楽曲を自動識別するテクノロジーの活用により100%とは言わなくてもかなりの精度で楽曲の利用状況(PV)を把握可能です。
今回の発表ではYouTubeのデータエクスチェンジ(コンテンツID等と類似の仕組みと思われます)というテクノロジーを活用して、楽曲を自動判別し、PV数等の利用実績に応じてクリエイターへの分配が行なわれるようです。
なお、米国ではASCAPとYouTubeの間で同等の合意が行なわれています(ASCAPのプレスリリース)。
音楽著作権制度の目標のひとつは、ユーザーができるだけ自由に音楽を利用でき、(ユーザーが直接払ったものであるかどうかにかかわらず)その対価が最低限の手数料でクリエイターに公平に分配されることですが、その目標に一歩近づいたと言えそうです。もし、これに焦ったJASRACも同様の契約をというようなことになれば、二大著作権管理団体が存在することによる競争原理が働いていることになりますので、ますます好ましいことです。
また、将来的には、ライブハウスに置かれたマイク入力から楽曲を識別して自動報告できるようになるという可能性もないわけではないので期待したいところです。