4万円も納得! キャビアまるごと一瓶からトリュフやフォアグラの鉄板フレンチがすごい
万能な鉄板焼
鉄板焼は万能です。
鉄板の上で焼くだけではなく、蒸したり、茹でたり、揚げたりと何でもできます。熱源の上は最も熱いですが、そこから離れるにつれて温度が変わってくるので、微妙な火入れも可能。
焼くだけではなく様々な調理法を用いることができるので、ステーキを提供するだけではもったいないです。しかし、ブランドの黒毛和牛を焼けば高単価で販売できるので、鉄板焼の可能性に挑戦しようという鉄板焼店は、そう多くありません。
こういった状況の中で、以前から新しい鉄板焼のスタイルに挑戦し続けているホテルの鉄板焼店があります。
それは、ウェスティンホテル東京の鉄板焼「恵比寿」です。
会席スタイルの「鉄板会席」を提供しており、「トラふぐの土瓶蒸し」などが楽しめます。他にも「戻り鰹の炙り焼き」や「甘鯛の唐揚げ」など趣向を凝らしたメニューがあるのです。
そして「恵比寿」では、この「鉄板会席」に加えて、2021年9月1日からは「鉄板焼フレンチ」も体験できるようになりました。
あまり聞き慣れない「鉄板焼フレンチ」とはどういったものでしょうか。
「鉄板焼フレンチ」のコース
取材時の「鉄板焼フレンチ」の内容は次の通り。季節によってメニューは新しくなります。
鉄板焼フレンチ 40,000円(税・サ込)
・コンソメスープ
・スモークサーモンとキャビアのパンケーキ
・クラブミートサラダの網焼き クレープ包み
・鮑と帆立のグリル ハーブバターソース 極薄クルトン添え
・ロブスターの蒸し焼き ショートパスタ添え アメリカンソース
・恵比寿牛とフォアグラのロッシーニ 焼き野菜と焼きリゾット添え
・本日のチーズと薄切りフルーツの鉄板焼
・季節のフルーツのジュビレ クレミア添え
・コーヒー または 紅茶
キャビア、バターソース、ショートパスタ、ロッシーニと、メニューを見る限りはまさにフランス料理そのもの。
それぞれのメニューを詳しく紹介していきましょう。
※取材時の内容で、メニューや産地は変わることがある
コンソメスープ
最初は「寒くなってきたので、温まるように」と提供された一品。ココットにカイノミの薄切りを入れ、コンソメがかけられます。カイノミにはちょうどよく熱が入って旨味が増し、濃厚なコンソメによって身体の芯からポカポカに。
スモークサーモンとキャビアのパンケーキ
目の前で小さいブリニがつくられます。スモークサーモンとサワークリームに加え、イタリア産シベリアチョウザメのキャビア10グラム缶が添えられ、非常に贅沢。鉄板焼でキャビア10グラム缶が提供されることなど、普通はまずありません。シャンパーニュとの相性も抜群によいです。
クラブミートサラダの網焼き クレープ包み
目の前で網焼きのクレープをつくり、そのクレープで蟹身を巻きました。周りには葉野菜を散らして菜園風に。野菜のシャキシャキ感とクレープのやわらかさがよいコントラストです。カニの旨味によって、野菜の滋味がより感じられます。
鮑と帆立のグリル ハーブバターソース 極薄クルトン添え
愛媛県のクロアワビと宮城県のホタテガイがグリルされ、非常に香ばしいです。エシャロット、パセリ、シブレットなどのハーブバターソースをたっぷりと添えて。魚介類にハーブバターソースを合わせるのはフランス料理の定番のひとつです。
ロブスターの蒸し焼き ショートパスタ添え アメリカンソース
三重県のイセエビが半身使われています。甲殻類の味わいが凝縮されたアメリカンソースも目の前で仕上げられ、大きなコンキリエが入っているのがポイント。イセエビの身と甲殻類のソースによって、旨味たっぷりの魚料理になっています。
恵比寿牛とフォアグラのロッシーニ 焼き野菜と焼きリゾット添え
恵比寿牛のフィレ肉とフォアグラを重ねたロッシーニ。フィレ肉は80グラム、ロッシーニは60グラムなので、ボリュームたっぷりです。黒トリュフが香るペリグーソースは、ロッシーニとの相性も抜群。表面がこんがり焼かれたリゾットを添え、最後にフランス産の秋トリュフを惜しげもなくスライスしてくれます。目の前の鉄板でクラシックフレンチの名料理であるロッシーニが食べられるのは、非常に感動的です。
本日のチーズと薄切りフルーツの鉄板焼
フランス料理というだけあって、フロマージュ=チーズも組み込まれています。チーズ2種と相性のよいイチジクは軽くソテーして提供。
季節のフルーツのジュビレ クレミア添え
ピオーネをジュビレ風につくりあげました。コーン付きのクレミアソフトクリームをピオーネソースと合わせてアシェットデセールに。クレミアソフトクリームの濃厚さ、コーンのサクサク感、ピオーネのジュビレの果実味と、印象に残る要素ばかり。
鉄板焼フレンチの特徴
どれも素晴らしい料理ばかりですが、この「鉄板焼フレンチ」の特徴について改めて紹介していきましょう。
最初に挙げたいのは、鉄板焼の魅力を最大限に活かすべく、最初から最後まで鉄板で仕上げていること。この日担当した大江亨氏も「鉄板焼の醍醐味は目の前で楽しんでいただくこと。できるだけ鉄板の上で調理する」と力を込めます。
鉄板焼の醍醐味は残しつつも、フレンチ風なので通常の鉄板焼と大きく違うところがあります。それは、最後のお食事=ご飯物、ガーリックチップやワサビがないことです。
その代わりに、キャビアが缶で提供されたり、ロッシーニが目の前でつくられたり、メインディッシュと共にお食事代わりのリゾットが付け合わされたり、フロマージュが組み込まれたり、ジュビレがつくられたりと、フレンチの要素に満たされています。
「恵比寿」では通常のコースに加えて、本格的な日本料理を楽しめる「鉄板会席」もあるだけに、「鉄板焼フレンチ」はここまで本格的なフランス料理を志向することができるのです。
鉄板焼フレンチが生まれた理由
では、どうして「鉄板焼フレンチ」が生まれたのでしょうか。
「恵比寿」では以前から「鉄板焼会席」が好評であり、今度はワインと鉄板焼きを楽しんでもらいたいという思いから、ウェスティンホテル東京総料理長の沼尻寿夫氏と「恵比寿」料理長の吉田明人氏が「鉄板焼フレンチ」を考案しました。
吉田氏は次のようにいいます。
「旬の食材をフランス料理の技法を応用して鉄板焼で仕上げていく。ゲストの前でフランス料理を紡ぎ上げていく醍醐味をぜひ体験していただきたい」
「鉄板焼フレンチ」は工程が多いので大変であるといいます。今回のメニューでは「クラブミートサラダの網焼き クレープ包み」が最も苦労したということです。
「蟹身を巻けるように、クレープは適度にやわらかくなければならない。薄めに焼きながらも、パリパリにならないよう、火入れに細心の注意が必要」
新しいメニューに期待
内容は3ヶ月毎に新しくなっていき、11月1日からは冬のメニューとなりました。
「キャビアとロッシーニは定番にして、他のメニューは旬を感じる料理にしたいので、是非ともご期待いただきたい」
アワビをバターソースにからめたり、鴨のコンフィを鉄板で仕上げたり、ロブスターを鉄板で焼いてからストウブの鍋に入れてブイヤベースにしたりと、新メニューに関するアイデアは尽きません。
本格的なフランス料理を目の前で調理してもらえる「鉄板焼フレンチ」は、今最も注目したい鉄板焼のコースです。