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相次ぐ欧州クラブの訪韓キャンセルは何が問題?…思い出す19年C・ロナウドの親善試合欠場の大騒動

金明昱スポーツライター
セルティックのオ・ヒョンギュと古橋亨梧。日本に行くが韓国行きは断念。(写真:ロイター/アフロ)

 欧州各国のリーグ戦が終了し、夏の移籍市場が活発化する頃、日本にビッグクラブがやってくるのも今では恒例イベントになった。

 今年は昨年に続いてパリ・サンジェルマンが「ジャパンツアー」を行うほか、バイエルン、マンチェスター・シティ、インテル、さらに日本代表の古橋享梧、前田大然、旗手怜央らが所属するセルティックも来日。欧州クラブではないが、クリスティアーノ・ロナウド率いるアル・ナスル(サウジアラビア)も来日する。熱烈な日本のサッカーファンにはたまらないイベントで、それこそスタジアムも連日、満員となるに違いない。

 またお隣の韓国でも 今月27日にチームKリーグ対アトレティコ・マドリード、30日にマンチェスター・シティ対アトレティコ・マドリードの試合が開催される。日本に比べると来韓するクラブがはるかに少ないのだが、実は元々は多くのクラブが韓国を訪れる予定だった。しかし、ここ数日で相次いで中止が発表されている。

 来韓を土壇場で中止したのは、スペインのマジョルカ、イタリアのASローマとナポリ、イングランドのウルヴァーハンプトン、スコットランドのセルティックだ。ほとんどのクラブが韓国人選手とゆかりあるチームで、マジョルカはMFイ・ガンインが所属していたし、ナポリはDFキム・ミンジェ、ウルヴァーハンプトンにはFWファン・ヒチャン、セルティックにはFWオ・ヒョンギュが所属しており、韓国のサッカーファンも来韓を待ち望んでいた。

 しかし、ふたを開けてみれば、韓国に来ない。理由は「運営サイドの“不手際”」と多くの国内メディアは報じている。

韓国運営側の資金繰り悪化で欧州クラブ呼べず

 まずはナポリとマジョルカが韓国行きを計画していたところ、予定していた2試合中の1試合はKリーグと日程がかぶっていた。韓国プロサッカー連盟としては、「Kリーグへの関心が薄れる」として反対の意思を表明。さらに国際大会開催の承認を引き受ける大韓サッカー協会(KFA)も大会開催を進めているコンソーシアムの運営会社2社に対して、基準と提出書類の見直しを言い渡している。

「イルガンスポーツ」は「2019年のクリスティアーノ・ロナウドの“ノーショー”事件以降、基準はさらにハードルが上がった。主催者側はKFAが要求した書類を提出できなかった。KFAは結局。親善試合開催を不許可にした」と伝えている。

 さらに問題なのは、同コンソーシアムがほかに親善試合を進めていたことで、それが前述したウルヴァーハンプトン、セルティック、ASローマが出場する「コリアツアー」で、すでに日程と試合会場まで発表されていたことだ。

 しかし、結論から言えば3チームともに韓国行きを断念した。理由は、各クラブに招待費用などの支払いがなされなかったからだ。チケット販売もされていない状況だったというが、これでは行く意味がない。

 ウルヴァーハンプトンは「主催者側が支払い義務を履行しなかったことで、遺憾にも韓国ツアーを中止する」と発表し、ローマも同様の理由で渡韓を取り消した。また、セルティックも「ウルヴァーハンプトンと対戦予定だったが、財政問題や物流面でのオペレーションが満たさなかった」として「コリアツアー」参加を断念している。しかし、セルティックは日本ツアーには予定通りに参加するのだから、今回の韓国プロモーターの資金繰りに不手際があったのは明らかだろう。

C・ロナウドが出場せず大騒動になった2019年のKリーグ選抜対ユベントスの試合(写真・筆者撮影)
C・ロナウドが出場せず大騒動になった2019年のKリーグ選抜対ユベントスの試合(写真・筆者撮影)

ロナウド出場せず大ブーイングの過去

 前述の話に出てきた“クリスティアーノ・ロナウドのノーショー”とは、2019年に「Kリーグ選抜対ユベントス」の親善試合での出来事。主催者がユベントスと交わした契約には「ロナウドがファンイベント参加と試合に45分以上出場する」と記載されていたのだが、ロナウドはベンチにはいたものの、1分も出場しなかった。当時の監督は「疲労の影響」と会見で語る始末。

 この現場に行っていた筆者は、あまりのドタバタ劇に振り回された。主催した広告代理店の「thefasta(ザフェスタ)」の女性社長が、ファンイベントの会場でロナウドが来れず、他の選手たちも十分はファンサービスができないことを涙ながらに謝罪。

「ロナウドが出場する」と信じて高額チケットを購入したファンの「ペーシン(背信)!」大ブーイングが今も脳裏に焼き付いている。その後、同主催者の会社の沈黙を守ったまま、訴訟にまで発展していた。

 そもそも、当時、ユベントスが韓国で試合をするには無理のある日程だったのだが、「1日ですべてを消化できる」との言葉を信じて事を進めた小さなイベント会社には、想定外の事態を収める力はなかったわけだ。これを機に、KFAは欧州クラブを呼び寄せるプロモーターからの提案と基準をかなり厳しくしたという。

来夏はPSGがイ・ガンインを連れて韓国ツアーも?

 やはり背景には大金が動くからに他ならない。「KBSニュース」は、欧州クラブの相次ぐ訪韓キャンセルの事態を受けてこう伝えている。

「近年、欧州サッカーに対する国内ファンの関心が高まる状況のなか、韓国市場に関心を見せる欧州クラブが増えている状況。このような雰囲気を利用して、欧州ビッグクラブの訪韓を進めるイベント会社も増えてきている。4年前に“ユベントス事件”が繰り返されないように、KFAもイベント会社に対して財政の健全性など高いハードルを課しており、韓国プロサッカー連盟もKリーグの日程に欧州クラブの訪韓試合を開催する場合、これを不許可にする方針を取っているだけに、慎重に準備する必要がある」

パリ・サンジェルマンへの入団が決まったというイ・ガンイン。来夏はPSGの一員で韓国に凱旋するかも?
パリ・サンジェルマンへの入団が決まったというイ・ガンイン。来夏はPSGの一員で韓国に凱旋するかも?写真:ムツ・カワモリ/アフロ

 サッカー人気を利用したビジネスは見た目も派手で、確かにうまみがあるように見える。人儲けしたいというイベント会社も少なくないだろう。幅広い人脈と潤沢な資金があれば欧州クラブとの交渉は、もしかしたらそう難しいことではないかもしれない。

 ただ、緻密な運営と実績がなければ、今回のように交渉が決裂する。そのことを2019年ユベントスの来韓で学んだはずなのだが…。またもやこのような事態となり、欧州クラブの「コリアツアー」には危険が潜んでいるとレッテルを貼られるのも辛いとろこだ。だからこそ結果と実績がほしい。

 今夏の欧州移籍市場で、パリ・サンジェルマン(PSG)にイ・ガンインの入団が決まったという。そうなれば来夏は、PSGはイ・ガンインを韓国に凱旋させ「コリアツアー」を企画したいと思うかもしれない。そうなった時は、ぜひともイベントを成功裏に収めてほしいものだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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