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スターライナーが有人帰還を断念 宇宙飛行士はISSに1週間のはずが8カ月滞在、ドラゴン宇宙船で帰還へ

国際宇宙ステーションに係留するスターライナー 出典:NASA

8月24日、NASAはスターライナーによる宇宙飛行士の地球帰還を断念することを発表しました。不具合が続くスターライナーに何が起こっているのか、そして宇宙に残された宇宙飛行士は帰還できるのかについて解説していきます。

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■安全性の懸念が払拭できず、宇宙飛行士の人命を優先

スターライナー宇宙船 出典:NASA / Boeing / Wikipedia
スターライナー宇宙船 出典:NASA / Boeing / Wikipedia

2024年6月5日、ボーイング社の新型宇宙船「スターライナー」が打ち上げられ、宇宙飛行士2名がISSへ到着しました。当初、宇宙飛行士は打ち上げから8日後には地球へ帰還する予定となっていました。しかし、様々な不具合がスターライナーに見つかったため、宇宙飛行士の帰還日程は五里霧中となり、ISSでの滞在期間が2カ月半を超していました。

NASAはあくまでもスターライナーで宇宙飛行士を地球へ帰還させる計画を進めていましたが、8月24日にスターライナーによる宇宙飛行士の地球帰還を断念します。ボーイングは地上で様々な試験を実施し、地球再突入時の安全性を評価しましたが、満足する結果を得ることができず、宇宙飛行士の人命を優先したと考えられます。そして、ISSに残された宇宙飛行士は、スペースX社が運用している「クルードラゴン」で地球へ帰還することが決定されます。

これに伴い様々な計画が変更となりました。まず、クルードラゴンは当初、8月18日に宇宙飛行士4名を乗せてISSへ打ち上げ予定でした。しかし、スターライナーの不具合から打ち上げを9月24日以降に延期することとなります。そして、クルードラゴンの乗員を4名から2名に減らし、スターライナーの乗員2名と2025年9月に地球へ帰還します。当初1週間であったISS滞在期間が、8カ月もの長さに延長されることとなりました。そして一方のスターライナーはというと、9月前半に無人で地球へ帰還するとのことです。

■スターライナーはどんな宇宙船?どんな不具合が発生していた?

スターライナー宇宙船 出典:NASA / Boeing / Wikipedia
スターライナー宇宙船 出典:NASA / Boeing / Wikipedia

ボーイングのスターライナーは、地球とISSとの間を往復する21世紀の宇宙カプセルです。外観はロッキード・マーティンがNASAのために開発しているオリオン宇宙船と似たカプセル形状です。高さは5.03m、直径は4.56mで、アポロ指令船よりも大きく、オリオン宇宙船よりも小さいサイズとなっています。

スターライナーには様々な不具合が発生していました。まず、ロケットの打ち上げ前から燃料であるヘリウムの漏洩が見つかっており、打ち上げ自体の延期が続いていました。そして、ISS到着時にも機体からヘリウムが漏れており、機体の28基あるスラスターの内、5基が故障するという問題が生じました。これらの不具合により、一時ISSとのドッキングを遅らせる事態となります。そして、ISS到着後にも不具合は続きます。新たにスラスターの突然停止というトラブルが発生し、その対応に追われている状態でした。

NASAは本来、スターライナーとクルードラゴンの2機を同時に運用することにより、効率的な運用や冗長性の確保、リスク低減などを目指していました。しかし、今回の決定はスターライナーとボーイングにとって大きな打撃となり、2機体制が確立するのはさらに先になりそうです。

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