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世界一高い131階タワマンが初公開。こんな景色を見ながらの暮らし、そのお値段は?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
世界一高いタワマンとなるCentral Park Towerから眺めた景色。(写真:ロイター/アフロ)

ニューヨーク・ミッドタウンで9月17日、世界で一番高いタワーマンションとして建設が進む超高層ビルが一般に初披露された。

話題のビルは、131階建て(全長472m)の「Central Park Tower」だ。市内では世界貿易センター跡地にあるオフィスビル「One World Trade Center」(全長541m)に次ぐ高さ。(尖塔の高さを含まなければ、Central Park Towerは市内一となる)

場所(217西57丁目)は市内のオアシス、セントラルパークのすぐ南側と好立地。2〜8ベッドルームタイプが179世帯分あり、昨秋より売り出されている。

価格帯は、32階の6.9ミリオンドル(約7億4575万円)からスタート。現在まだ残っている物件の最高額は、112階にある5ベッドルームの住居で、アスキングプライス(提示価格)が63ミリオンドル(約68億900万円)。

成約済みのもので最高額は、3フロアにまたがるペントハウス(1,477平方メートル)。100ミリオンドル(約108億円)ほどではないかと、不動産ウェブサイト「Mansion Global」はみている。

同じビル内は、100階前後の3フロアにまたがり、最高級プライベートクラブ「Central Park Club」となっていて、住民専用のプール付き屋外テラス、室内プール付きのウェルネスセンター、ボールルームとシガーバーなどが作られる。

地上7階までは、市内で初進出のデパート「Nordstrom」が入り、こちらは一足早く今年10月24日にオープンということで話題必至。

日本一高いマンションは、大阪の「The Kitahama」(54階建て、209.4m)、東京の「ザ・パークハウス西新宿タワー60」(60階建て、208.97m)だから、Central Park Towerはそれらの約2倍の高さと言えば、なんとなくイメージはつくだろうか。

筆者がこれまで登ったことがある最高階は(住居用ビルではないが)、上海にある世界2位の高さを誇る「上海タワー」(128階建て、632m)の119階だ。雲にも届きそうな高層階で、地上を見下ろすと思わず足がすくんだ。かの有名な上海テレビ塔さえも眼下にする高さでは、周りのすべての高層ビルがミニチュアに見える滑稽さがあり、同時に何ごとも可能にしてくれるような、とても開放的でエネルギッシュな気持ちにもなったものだ。

一方ニューヨークのCentral Park Towerは「住居」だから、毎日あんな空の一部のようなところに住み、周りの高層ビルを見下ろす生活は、どんなものだろう。ビジネスマンなら明日への生気が湧き、アーティストやクリエーターならきっと創作活動が進むに違いない。

Central Park Towerの建設が進むマンハッタンのミッドタウン57丁目は近年、富の象徴となっている。2015年に「432 Park Avenue」が完成して以来、次々に高層コンドが57丁目沿いに計画・建設され、「57丁目のRace to the Sky(空に向かった競争)」や「Billionaires’ Row (億万長者通り)」などと呼ばれ、世界中の大金持ちから注目されている。

ビルのデザインは、シカゴの建設会社「Adrian Smith + Gordon Gill Architecture」によるもの。サウジアラビアにある世界一高いタワー「Jeddah Tower」(ジッダ・タワー)もデザインした同社は、「Central Park Towerは、建築規制と近隣住民からの許可が下りさえしていれば、もっと高く作ることができたのに」とコメント。

紆余曲折を経て構想から15年と長い年月を経て、世界一高いタワマンは完成に近づいている。しかし、この「億万長者通り」をはじめとするニューヨークが不動産バブルかと言えば、そうでもない。

高層ビルでなくても近年、街を歩けば閉店したっきりの空き店舗が目立つ。不動産価格が高騰しすぎて買い手がつかないのだ。不動産関係者によると、この4年で市内の賃料は倍に跳ね上がり、空室率は2年前が7%、昨年は20%にも達したそうだ。

この度不動産鑑定士のジョナサン・ミラー(Jonathan Miller)氏が『ニューヨークタイムズ』紙に語ったものによると、Central Park Towerや432パークアベニューがある南セントラルパーク地区に立つ7棟でも、40%が売れていない状況だという。

Central Park Towerの完成予定は2020年。成約率は発表されていないが、今回のお披露目でミリオネアたちが世界一のステータスにどれほど魅了されるか。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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