あれもこれも不適切?保育士が考える不適切保育と呼ばれてしまうまでの背景
ここ数年話題にあがっている不適切保育。大切なお子さんを預かっている場として決して許されるものではないと思います。しかし、ニュースに取り上げられた園や保育士も、いきなり不適切保育や虐待をしたのではなく、そこまでに至るまで様々な背景があったのではないかと、現場にいる身としては考えてしまいます。
そこで今回は、実際にニュースで取り上げられていた例をもとに、保育現場にいて考える不適切保育と言われている行動の背景をお伝えします。
決して擁護するわけでもないですし、これが全てでもなく、実際に起こってしまった園とは背景が異なる可能性もあるので、一つの考えとして見ていただけたらと思います。
給食を無理に食べさせる
以前は食べ物を粗末にしてはいけないという考えから、給食は残さず食べるという保育観がありました。その考え方が浸透している園では「もったいないから食べよう」「もう少しだけ、あと一口だけ頑張ろう」と声をかけたり、その子が食べられそうな分量をスプーンに乗せ口に入れることがありました。
また、食育の観点から”一口味見してみる””なめてみる”という現状はあります。もしかしたら好きになってくれるかもしれない、興味を持ってくれるかもしれないという考えからそうすることはあります。
ですが、それが度を過ぎたときに”食べることを強要した””無理矢理口に入れられる”と不適切な状況に繋がってしまっているのかもしれません。
そもそも、無理矢理口に入れる行為は誤嚥の可能性があり危険なので行いません!
強い声掛け「早くして!」
言い方に違いはあっても、あまりにものときには使うことがあります。
やはり保育園や幼稚園は個人ではなく集団での行動が多い場です。スケジュールもあります。他のクラスと一緒に何かをする、園全体での行事、カリキュラムなど。職員数が多く、遅れている子をサポートできる保育士がいれば寄り添いますが、1人をひたすら待つことができるだけの時間と職員の余裕がある園は少ないのが現状です。
当然みんなで動けるようにある程度の時間は待ったり声をかけたりサポートします。しかし、それでも先にふざけてしまって行動が遅くなる子、意図してギリギリまで何もしないで行動が遅くなる子などが、時間を守った子たちを待たせてしまう。その場合の最終手段として「これから○○だから、みんな待っているから早くしよう」と伝えることがあります。
しかし、なぜ急がなければいけないのかを理解し行動してほしいので、怒鳴りつけて恐怖感だけ与えるようなことは間違っています。
なかには「待ってくれるから自分のペースでいいや」となってしまうお子さんもいるので、その子に合った促し方を日々葛藤しながら対応しています。
腕を掴む、体を押さえる
お子さんに危険が及んでしまう場合にそうせざるを得ないことがあります。
例えば、いくら注意をしても危険な行為を繰り返す。友達や保育士を殴る・蹴る・つねる・ひっかく・噛むといった危害を加える他害行為、物にあたる・自分の体を強く噛む叩くなどの自傷行為。そのような行為があり、暴れたりパニックになっていて声掛けや場所の移動だけでは落ち着かない場合にそうせざるを得ないことがあります。
他害や自傷行為をするときに手加減できる子はなかなかいません。まだ上手く言葉で伝えられずにカッとなってすぐ手が出てしまう子のその時の力は、子どもとはいえかなりの強さです。なので早く止めなければ怪我に繋がってしまうことも。その場合、保育士側も手が出る前に瞬間的に腕を持って制止したり、周りやその子自身に被害がないようにハグをするような状態で体を押さえ制止することはあります。
虐待になっているものとは違いますが、危険な場合には体を張って止めます。しかし、やはり必要以上引っ張るなどの行為は、お子さんの体にも心にも危険が及びますし、手本になるべき大人がすることではないので間違っています。
おわりに
もちろん保育士によってまだ小さなお子さんが危険な目にあったり、心を壊すようなことがあってはいけません。
報道では保育士の不適切な行動の部分だけが切り取られていて、現場を知らない方は背景に何があったのかも分からず、ただ保育現場への不信感が募ってしまっている方も多いと思います。しかし、多くの保育士は何が不適切で何が適切かということ、その中でお子さんの成長にとってどうしていくことがベストなのか考え、愛情を込めて向き合っています。
ですから、言動の背景に何があるのかということと、そういう保育士ばかりではなく危険な場所ではないと知っていただき、安心して預けていただけたらと思います。