月面に墜落したロシア着陸機「ルナ25号」47年ぶりの挑戦に迫る
2024年1月20日、JAXA月着陸機「SLIM」は日本で初となる月面着陸に成功しました。世界では、アメリカ、ソ連、中国、インドに続き、5か国目に月着陸を成功させた国となったのです。
一方でソ連はロシアへとなってから、47年もの間月着陸が行われていません。本記事では、2023年にロシアが月着陸に挑戦した「ルナ25号」について解説していきます。
JAXAの月着陸機「SLIM」を詳しく知りたい方はこちらの記事で
■ロシアにとって半世紀ぶりの月着陸となる「ルナ計画」
2023年に打ち上げられたルナ25号はロシアにとって、47年ぶり、まさに半世紀ぶりの挑戦でした。ルナ25号という名前の通り、これはロシアの無人月探査計画である「ルナ計画」の25回目となります。
ルナ1号は1959年に打ち上げられました。世界初の月衝突を目指していましたが、結果としては月の近くを通過し、人類初の人工惑星となりました。失敗してしまったとは言え、当日の技術で月を超える軌道に人工物を送り込めることが実証された意義は非常に大きかったのです。
直近のルナ24号は1976年に打ち上げられました。約170グラムの月のサンプルを採取して地球に届けることに成功し、ルナ16号、ルナ20号に続いて世界で3機目の無人サンプルリターンとなりました。ちなみに、それ以降に月に軟着陸した探査機は中国が37年後に着陸に成功した「嫦娥3号」、サンプルリターンは44年後の「嫦娥5号」まで期間が空くこととなります。
ルナ計画は当初24号で終了とされていました。そして、ルナグローブ計画という新たな月探査計画が1997年から立ち上がり、この探査機に対して「ルナ」という名前がつけられることになりました。
その計画のもう一つの目的としては、ウクライナ侵攻を続けるロシアが宇宙分野での技術力の高さを示し、国威を世界へ示す思惑だとも見られています。
■ルナ25号の着陸機紹介
ルナ25号はロスコスモスが開発した月着陸機で、重さは約1750kg、小型バス1台程度の大きさです。有人拠点の候補となっている月の南極付近への着陸に挑戦します。目標地点はボグスラフスキー・クレーターです。もし着陸に成功すれば、月の南極に到達したのはこのミッションが世界で初めてとなります。ミッションの目的は、月の南極の土壌成分や、大気プラズマや塵を月面で約1年かけて調査することです。ルナ25号にはロボットアームが搭載されており、月表面最深30センチの月のサンプルを採取できるということです。サンプル採取後の分析は全て月で行われ、結果が地球に送信される予定です。
また、ルナ25号には原子力電池が搭載されています。原子力電池は放射性物質のプルトニウム238などの崩壊熱を利用して、その熱を電気に変換することで発電をしています。原子力電池は効率良く発電を行えるので、太陽光が届きにくく太陽電池が使えないミッションでも電気を供給することができるんですね。
気になるのは安全性ですが、決して原子力発電所のような核分裂をさせたりすることはありません。福島原発で良く耳にした、メルトダウンが起こることもありません。しかし、原子力電池は強固なカプセルに入れられたりするなどの対策がありますが、仮にトラブルなどで地球に墜落してしまった場合、やはり放射線被害は出てしまうようです。
■ルナ25号の打ち上げから月面墜落まで
そして8月11日、ルナ25号はソユーズロケットにより打ち上げられました。結果は無事に打ち上げに成功。ソユーズロケットは1966年の初打ち上げから今も改良型が打ち上げられています。有人打ち上げや国際宇宙ステーションへの補給など、1700回以上打ち上げられ世界で最も利用されたロケットとなっています。
続いて8月16日、ルナ25号は月周回軌道への投入にも成功しています。ルナ25号に搭載されているカメラで月へ向かう途中に撮影された地球や月、機体の一部の画像などが公開されています。
そして8月19日、最終的な月着陸準備軌道に入るためのエンジン噴射実施の指令がルナ25号に送られました。しかし、ここで問題が発生します。エンジン噴射の運用中に通信が途絶してしまうという緊急事態が発生したのです。
その後、ルナ25号は制御不能に陥り、予定の軌道を外れて月面に衝突したという報道がなされました。推定によると、高度を低下させるためのエンジン噴射を予定より長く噴いてしまったことにより、月面に衝突してしまったと言われています。
今回はロシアにとって残念な結果となってしまいました。しかし、ロシアは今後も2027年に「ルナ26号」、2028年に「ルナ27号」、2030年以降に「ルナ28号」の打ち上げを予定しているということです。是非、次の挑戦で成功してもらいたいですね。
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