デトネーション(爆轟)が発生したレバノン港爆発事故、硝酸アンモニウム500トンが爆発し衝撃波が発生
11月14日、名古屋大学とJAXAが中心となり開発した「デトネーションエンジン」の宇宙実証に成功したことで話題となりました。本記事では、デトネーション(爆発)が実際に発生した、レバノン・ベイルート港爆発事故をご紹介します。
■爆発の衝撃波を利用する「デトネーションエンジン」
デトネーションエンジンとは、火炎の速度が音速を超える爆発的な燃焼現象「爆轟」を利用しています。通常のロケットは素早く燃焼する「爆発」を利用していますが、「爆轟」になると音速を超える衝撃波を生み出します。この衝撃波を推進力とすることで、小型軽量、かつ既存のエンジンよりも低価格で安く高速飛行をさせることができるのです。
デトネーションエンジンが実用化されれば、大きな推進力を得られることに加えロケットの軽量化も期待できます。 2021年7月、JAXAは観測ロケットにデトネーションエンジンを搭載して打ち上げを行い、その実証実験に成功しました。
■レバノンで発生した硝酸アンモニウム爆発事故
実際に爆轟が発生した例として、2020年に起きたレバノン・ベイルートの爆発事故が挙げられます。レバノンの首都であるベイルートで、港の倉庫に保管されていた硝酸アンモニウムの500トンが爆発するという大事故が発生しました。周辺では人や建造物が吹き飛ばされ、10km離れた場所でもガラスが割れる衝撃波が発生するなど、多くの被害が確認されました。これは、広島に投下された原爆の10分の1の威力に匹敵する程であり、まさにデトネーション(爆轟)が発生していたのです。
後の調査によると、この化学物質は2014年に政府がロシア貨物船から押収したものであるとのことです。硝酸アンモニウムは爆薬の原料としても使われますが、安全対策が行われないまま倉庫に6年間放置されていました。
一方で、長年汚職が横行している政府の調査は進んでおらず、引火した原因などは不明とのことです。 港周辺は今もがれきとして放置され、時が進むのを止めたかのように爆発跡が残されています。
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