イプシロンSロケット、今年度の初打ち上げは絶望的か 今後の打ち上げ計画への影響を解説
イプシロンSは現在開発中の新型国産ロケットで、初代であるイプシロンロケットの進化系です。11月26日朝、イプシロンSの地上燃焼試験が種子島宇宙センターで実施され、爆発事故が発生しました。本記事では、今回の爆発事故により、今後の打ち上げ計画にどのような影響が生じる可能性があるかを解説していきます。
■イプシロンS初打ち上げは2025年度に延期か?
当初、イプシロンSの最初の打ち上げは2024年度に設定されていました。しかし、今回の爆発事故の発生により、今年度内の打ち上げはほぼ絶望的となったと見込まれています。早期に原因究明を行われ、2025年度に打ち上げが間に合うかが注目されます。
最初に打ち上げるペイロードは、ベトナムの地球観測衛星「LOTUSat-1(ロータスサット・ワン)」です。実はこのロータスサットワン、日本企業のNECがベトナムから受注した衛星なのです。ミッションの目的はベトナムの自然災害への監視強化による、被害の抑制や災害予測に貢献することです。衛星に搭載したレーダーにより、昼夜を問わず観測データを取得します。日本の洗練された衛星技術が、このように海外へ今後も広がっていくと嬉しいですね。
■Destiny+はH3ロケットで2028年度に打ち上げへ
そして、小惑星フェートンを探査する深宇宙探査技術実証機「Destiny+」は、当初イプシロンSで2024年度に打ち上げが行われる予定でしたが、こちらは既に計画の変更が発表されています。
2023年に発生したイプシロンS爆発事故が原因となり、打ち上げロケットをイプシロンSからH3ロケットに変更するとのことです。また、打ち上げは2027~2028年度に延期される見通しが発表されました。
Destiny+の目的地は小惑星フェートンです。フェートンは、彗星みたいな小惑星と揶揄されるほど謎の多い天体です。小惑星の中には、「活動的小惑星」と呼ばれるものが存在することがわかってきました。その中の代表的なものが直径8.5kmのフェートンなのです。Destiny+は、このフェートンが何の物質を放出しているのかの謎に迫る探査機です。
■RAISE-4の2025年度打ち上げにも影響必須
そして革新的衛星技術実証4号機「RAISE-4」については、当初2024年度の打ち上げではありましたが、イプシロンSの開発の遅れが影響し、2025年度へ延期となっています。しかし、今回の爆発事故の影響により、1,2年の遅れが発生する可能性が高いと見られています。
革新的衛星技術実証プログラムは、大学や研究機関、民間企業等が開発した部品や機器、小型衛星を宇宙に打ち上げて、技術実証の機会を提供するプログラムです。一度のロケット打ち上げで様々な技術実証を一度に行うことができるため、大学や企業としても非常に有効なチャンスとなります。
実は、2022年10月にはRAISE-3がイプシロン6号機に搭載され打ち上げられました。しかし皆さんもよくご存知の通り、イプシロン6号機は高度上昇中にロケットの姿勢が目標からずれており、指令破壊されることとなりました。そのため、RAISE-3も喪失してしまったという苦い過去があります。次のRAISE-4では是非成功して欲しいですね。
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