米国が介入すれば「無人機事件」は武力衝突には発展しない!
韓国の無人機侵入への北朝鮮の猛反発で南北の軍事緊張が高まっている最中、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は珍しく、国防・安全分野に関する協議会を招集していた。
人民軍総参謀部が国境線付近の各砲兵連合部隊に完全射撃準備態勢を整えることに関する作戦予備指示を12日に下達し、13日には国防省スポークスマンが「無人機が再飛来すれば、宣戦布告とみなす」と警告した翌日に協議会が開かれ、無人機侵入に関する偵察総局長からの報告と対応軍事行動計画に関する報告を軍総参謀長から受けた金総書記は「強硬な政治・軍事的立場」を表明したそうだが、それほどの危機感は感じていないのではないだろうか。
軍事衝突の危険性が差し迫っているならば、通常は党軍事委員会拡大会議が開催されてしかるべきだ。
例えば、昨年4月10日には米韓が「『平壌占領』と『斬首作戦』という好戦的な妄言まで露骨に流し、我が共和国との全面戦争を想定した大規模合同軍事演習をヒステリックに強行している」として金総書記は李永吉(リ・ヨンギル)党軍事委員会副委員長、強純男(カン・スンナム)国防相(当時)、朴寿日(パク・スイル)軍参謀長(当時)ら11人の軍事委員を含む約30人の軍首脳らを呼び、党軍事委員会拡大会議を開き、「戦争抑止力を攻勢的に拡大する」ことについて論議していた。
今回、召集された軍首脳は呂光鉄(ロ・グァンチョル)新任国防相、軍需工業部長でもある趙春龍(チョ・チュンリョン)党書記、李永吉(リ・ヨンギル)軍総参謀長、朝鮮人民軍総参謀部の李昌虎(リ・チャンホ)軍副総参謀長兼偵察総局長、李昌大(リ・デチャン)国家保衛相以下、朝鮮人民軍総参謀部の砲兵局と探知・電子戦局をはじめとする主要局の指揮官だけである。
党軍事委員会の朴正天(パク・ジョンチョン)副委員長のほか、鄭京澤(チョン・ギョンテク)軍総政治局長、方頭燮(パン・ドゥソプ)社会安全相、それに呉日晶(オ・イルチャン)党民間防衛部長ら他の軍事委員は召集されていなかった。
また、今年9月から金総書記の軍視察に随行し始めた金永福(キム・ヨンボク)軍副総参謀長、10月から加わった鄭明道(チョン・ミョンド)軍第1副総参謀長に加えて、ミサイル総局の張昌河(チャン・チャンハ)総局長をはじめ空軍、海軍司令官らも召集されていなかった。
金総書記が比較的に楽観視しているのはおそらく米国が介入し、韓国の無人機再発射を制止してくれるだろうとの期待があるからだ。
金総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長の昨日(14日)の談話は珍しく短かった。
「我々は平壌無人機事件の主犯が大韓民国の軍部のくずであるということを明白に知っている。核保有国の主権が、ヤンキーが手なずけた雑種の犬によって侵害されたならば、野良犬(韓国軍)を飼った主人が責任を負うべきことである」とのたった一言である。
この発言が意味するところは、無人機を飛ばすのは休戦協定の明白な違反なので軍事境界線を管理している国連軍、即ち駐韓米軍が韓国軍をしっかりコントロールするよう釘を刺したことに他ならない。というのも国連軍司令部は2022年12月に北朝鮮の無人機侵入への対抗措置として韓国軍が無人機を2機北朝鮮に飛ばしたことを韓国軍が主張する「自衛措置」とはみなさず、停戦協定違反として処理していたからである。
北朝鮮軍総参謀部は先週(9日)韓国に繋がっている道路と鉄道を完全に遮断するための道路爆破作業を行うことを韓国軍に対してではなく、米軍だけにホットラインを使って通知していた。誤認による偶発的な衝突を避けるための措置とのことだが、これは軍事境界線を監視している駐韓米軍司令部とのある種の信頼造成措置の一環でもある。
なお、金総書記の最側近である朴正天元帥は9月18日の新型戦術弾道ミサイル「火星砲―11タ―4.5」の試射に立ち会って以来、1か月近く公の場所に姿を見せていない。健康状態が悪化したのか、失脚したのか不明だ。