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20連勝中の世界スーパーウエルター級3位

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mikey Williams/Top Rank  ザヤス(右)は勝利したが…

 9月14日に催されたWBA/WBC/WBOスーパーミドル級タイトルマッチ、サウル・”カネロ”・アルバレスvs.エドガー・ベルランガ戦は、メキシコvs.プエルトリコとして話題になった。9月末に組まれたWBO・NABOスーパーウエルター級タイトル戦も、同国同士の対戦となった。もっとも、こちらはチャンピオンのゼンダー・ザヤスがプエルトリカンで、挑戦者のデイミアン・ソサがメキシカンだった。

 5歳からボクシングを始め、WBO3位にランクされるザヤスは16歳でトップランク社と契約し、17歳の誕生日の6週間後にプロデビューした。22歳となり、19戦全勝12KOと連勝街道を走っていた。

Mikey Williams/Top Rank
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 今年6月、ザヤスは元WBOスーパーウエルター級チャンピオンのパトリック・テシェイラに判定勝ちしている。2、3ラウンドに何度もボディショットをヒットし、流れを掴んだ。その点を評価するメディアもあったが、テシュラはこの時点で既に峠を越えた33歳である。あくまでも<元世界チャンプ>に過ぎなかった。

Mikey Williams/Top Rank
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 「コンディショニングを重視し、常に100パーセントの状態で、試合中のどの局面においても集中力を切らさないように心掛けている。インサイドでも離れた距離でも戦えるようにしているんだ」

 そう話すザヤスの直近の相手、ソサは、25勝(12KO)2敗の27歳であった。上を目指すのであれば、テシェイラ戦以上の内容を見せる必要があった。が、リズムに乗れず、強弱もなく、コンビネーションにも工夫が見られなかった。3名のジャッジそれぞれが100-90と採点し、20勝目を挙げたが課題も露になった。

Mikey Williams/Top Rank
Mikey Williams/Top Rank

 ザヤスのグローブにデザインされたプエルトリコ国旗に、同胞のファンは溜飲を下げたが、同国のスターたちには遠く及ばない。プエルトリカンといえば、フェリックス・トリニダードを筆頭に、ヘクター・カマチョ、ミゲール・コトといったボクシングを芸術の域に押し上げたチャンピオンの存在がある。ザヤスは、まだ22歳と若く、先のある選手だが、前述の“拳豪”たちはその年齢で、既にプエルトリコの太陽として、国民を照らしていた。

 勝者は試合後「自分がステップアップするための試合だった」と振り返ったが、この22歳は未来を築けるか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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