ブラジルW杯年に始動したバルバッコア、その進撃の秘密を探る
活気に溢れるシュラスコ
今年の一大イベントとして、あなたは何を挙げますか。
サッカーが好きであれば、迷うことなく、ブラジルワールドカップを挙げることでしょう。
ブラジルワールドカップの影響もあって、「ブラジル料理「シュラスコ」はサッカーワールドカップのブラジル代表を超えられるか?」でもご紹介したように、リオ グランデ グリルを始めとして、シュラスコレストランが数多くオープンしています。
前述の記事以降にオープンしたシュラスコレストランを以下にまとめてみました。
- 2014/06/10 Paz.1 中野店
- 2014/06/30 ゴッチバッタ
- 2014/09/17 バルバッコア 新宿店
- 2014/09/19 トゥッカーノ イケブクロ
- 2014/12/12 バルバッコア 六本木ヒルズ店
これまではメジャーであるとは言えなかったシュラスコレストランが、今年2014年の1年間で東京都内でこれだけオープンしたことは驚きです。
老舗のシュラスコレストラン
シュラスコレストランはこのように今年ブームを起こしましたが、これまでシュラスコを牽引してきたレストランはどこかご存知でしょうか。
それは前述のリストに2店舗も名を連ねているバルバッコアなのです。
バルバッコアと言えば1994年青山にオープンしてから、メディアにもよく露出し、常に満席で賑わってきました。シュラスコで不動の地位を築いてきたと言えますが、2007年4月27日新丸の内ビル6階に「バルバッコア クラシコ」をオープンしてから、全く動きがなかったのです。それなのに、2013年11月11日渋谷にオープンしてから、新宿、六本木と立て続けにオープンしました。
突然、出店攻勢に転じたのはどうしてでしょうか。
販促・PRサポート統括マネージャー 竹原真理子氏は「バルバッコアをずっと出店したかったが、これまでよい物件がなかった。この1年でたまたまよい物件に巡り会えたので、出店が続いている。来年の春には大阪にも出店する予定」であると説明します。
今後については「具体的な出店計画は立てていないが、積極的に出店していきたい。しかし、人が育っていないければ出店できないので、人材育成には力を入れている」と述べるにとどめます。
スタッフを3段階に分ける
どのように人材育成しているかと訊くと「肉を漬けて焼いてサーブするパサドールは、お客さまにシュラスコをご提供する極めて大切な役割を担っている。パサドールは能力が3段階に分けられており、それぞれ担当できる肉が決められている。明確なランク付けがされているので、励みになっている」と他のシュラスコレストランでは行っていないことを挙げ、「イチボ肉のピッカーニャはシュラスコで最も重要である上に扱いが難しい部位。そのため、最もランクが高いパサドールだけが扱えるようにしている」と述べます。
スタッフには日本人だけではなくブラジル人もいることに関しては、「本場の雰囲気を大切にしたいということもあり、パサドールはブラジル人が中心。しかし、サラダは野菜にこだわる日本人の感覚に合わせて、日本人スタッフが担当している。旬の野菜を積極的に用いており、例えば秋にはキノコ、冬にはロマネスコもご用意している。パルミットやビーツなどブラジルでよく食べられる野菜もご用意しているので本場のサラダを楽しめる」と、日本人の嗜好に合わせた店舗づくりをしていると話します。
肉のクオリティに自信
他店のシュラスコレストランについて尋ねると「あまり気にならない。どこも独自に個性があるので、それぞれが頑張って相乗効果を生めるとよい」とエールを送りながらも「1994年のオープンから20年間もずっと続いているのはバルバッコアだけ。他のシュラスコレストランが視察に来ることも多い」と一日の長があるとします。
支持されている理由を問うと「肉のクオリティではないか。肉のおいしさには絶対の自信を持っているので、味付けは基本的に岩塩のみ」と答え、さらには「本場ブラジルのスタイルも忠実に再現している。シュラスケーロと呼ばれるグリル機を使って、900度の高温でシュラスコを回しながらグリルしている。回して満遍なくグリルすることが重要だが、中には回さずにグリルしているシュラスコレストランもある」と加えます。
秋元社長が見出す
このようにバルバッコアはシュラスコレストランの老舗ですが、最初にオープンしたきっかけは何だったのでしょうか。
「シュラスコレストランが流行しそうだということで、秋元巳智雄社長がブラジルへ提携先を探しに行った。そこで、クオリティが最も高く、高級感があってオシャレなバルバッコアに目を付けた。これからはデートにも使えるシュラスコが流行すると考えて日本に持ち込んだ」と経緯を話します。
当初は好調でしたが、ずっと順風万帆だったわけではありません。
「2008年には11店舗もオープンしたが、リーマンショックが起きて売上が大きく落ちてしまった。上場を廃止して身の丈に合った舵取りを行うことにした」と話し始めます。
「2年間で20店舗の不採算店をクローズし、残りの店舗に注力することにした。食材やサービスを根本から見直していった結果、2011年に過去最高益を上げ、20か月連続で黒字を達成した。その後、2012年あたりにバルバッコアを積極的に出店していくことに決まった」と振り返ります。
トレンドに敏感
そう言えば、バルバッコアを運営するワンダーテーブルの主力業態である、しゃぶしゃぶ・すき焼きの「鍋ぞう」は、もともと「モーモーパラダイス」というブランドでした。男性向けの店でしたが、これからは女性をターゲットにしなければならないということで、野菜を中心としたやわらかい雰囲気の店へと何年にもかけてリブランドしていったことがありました。トレンドに敏いのは、この頃からだったのでしょう。
いくつもの業態を擁していますが、他の業態と相乗効果があるかと訊くと「肉をメインとした業態が多く、どこもサラダバーに力をいれている。そこで、業態を横断してサラダバー会議というのも行っている。何が流行しているのかといった事例を共有し、すぐに導入している」と答えます。
クレドを配布
ワンダーテーブルは年1回社員フォーラムを開催しており、そこで今年度版のクレドを社員全員に配布しています。クレドと言えば、ザ・リッツ・カールトンが有名ですが、外食産業で配布している会社はとても稀です。
このクレドに明記されたビジョンには「優れた商品・サービスとホスピタリティでお客様を魅了し、必ずリピートして頂く」とあり、行動規範には「自分を大事にする」「仲間を大事にする」「お客様を大事にする」「社会を大事にする」という項目が順番に並べられています。
確かに、社会に還元したり、お客さまに喜んでもらうためには、まず自分がしっかりとしなければならず、その次にチームワークを築いていく必要があるでしょう。
実はワンダーテーブルはもともと「富士汽船株式会社」という運送会社でした。それが、荷物を運ぶだけではなく、その物資を使ってレストランを経営しようということになり、発展してきたということです。たくさんの荷物を積載した汽船が、ふとしたことから荷物をおいしい料理へと調理し、それと同時に、ただ受け渡すだけからホスピタリティを携えて提供するようになりました。
己の身の丈を知り、自分を大事にすることは中々難しいことですが、外食産業が不遇の時代にあって、こういった姿勢は大切なことです。この姿勢を崩さず、着実に歩んでいく限り、ワンダーテーブルの勢いは止まりそうもありません。
情報
詳しくは公式サイトをご確認ください。
参考
バルバッコアについては「すみれ草201」に青山店、丸の内店、渋谷店、新宿店が詳しく掲載されていますので、ご参考にどうぞ。