「すべての女性青少年に生理用品支援を」…韓国最大の自治体が政策を導入
京畿道が来年から、満11歳から18歳までの全ての女性青少年に、生理用品の購入費用を支援する政策を取り入れる。14日、京畿道青少年課が明かした。
●毎月1000円を50万人に
京畿道(キョンギド)の人口は約1350万人。韓国で最も大きい地方自治体だ。同課によると、支援金額は1人当たり毎月1万1000ウォン(約1000円)、年間13万2000ウォン(約1万2000円)となる。支援方法については「地域貨幣(所定の地域内で現金と同じように使えるデビッドカード)」方式で行うとのことだ。
京畿道では現在、中央政府の政策として、基礎生活受給権者(日本の生活保護に準じるもの)、貧困家庭、一人親家庭など2万4000人が同様の金額の支援を受けている。来年からはこれを全ての女性青少年に拡大することになる。対象者は新たに48万6000人が増え、合計51万人となるという。
今回の決定の背景について15日、京畿道青少年課のキム・ヒャンジャ課長は「2016年に社会的に大きな話題となった、靴の中敷きやティッシュを生理用ナプキンの代わりに使うという貧困家庭の女性青少年が直面する厳しい現状があった」と筆者の電話取材に語った。
韓国では近年、生理用品の値上がりが続き、福祉団体などが貧困家庭への寄付を呼びかけているが根本的な解決には至っていない。
なお、京畿道議会では昨年12月、「京畿道女性青少年保健衛生物品支援に関する条例案」を可決している。「条例だけで中身がない」との批判も地元紙であったが、この度の決定により一歩前進したかたちだ。キム課長は「すべての女性の尊厳としての問題だ」と強調した。
とはいえ、すぐ全員への支援が現実化する訳ではない。京畿道では現在、この事業に参加する市・郡を募集している。参加する自治体には総事業費の30%の範囲内で、道が支援する。全市郡が参加する場合には、来年640億ウォン(約58億円)の財源が必要とのことだ。
●知事も福祉の拡大を後押し
一方、李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事も13日、自身のインスタグラムで今回の支援策に言及した。
「今は多くの地方政府が低所得層の女性青少年の生理用品について支援しているが、基礎生活受給権者など生活が困難な青少年を選別支援するという『らく印』のために、心に傷を負ったり、(支援を受けることに)二の足を踏む学生も多かった」とした。
また、「差別を受けず堂々と成長できるように(中略)支援を決めた道議会の皆さんの決断に拍手を送る」とも語った。
その上で「驪州市(ヨジュ)市が施行中の普遍支援(全員への支援)事業の意義が大きい」と書いた。同市では今年1月から支援を始め、現在は約2500人の女性青少年が対象となっている。一種のモデルケースといえる。
今後について、前出のキム課長は「新たな福祉政策を開始する場合には、保健福祉部の審議を経る必要がある。今はそのための準備をしている。いずれは京畿道にある31の全ての市郡の参加を見越している」と述べた。
李知事の投稿には「貧困を証明しなくても生理用ナプキンの支援を受けられて嬉しい。生活必需品なのに値段が高すぎる」といった賛同のメッセージが相次いだ。一方、「全員に支援する代わりに困難な人たちにより多くの支援を」という意見もあった。
最近の韓国では、保守派の第一野党・国民の力が「貧困のない国」を掲げ基本所得(ベーシック・インカム)の導入を掲げるなど、福祉の拡大が政治における大きな話題となっている。新型コロナウイルスの拡散やAI(人口知能)などテクノロジーの発展による労働環境の変化が、これを後押しする。
今回の京畿道の政策もこうした変化の潮流の一環として位置づけられるだろう。全国的にも初めてとなる試みだけに、その社会的なインパクトが注目される。