なぜレアルは“世界王者”に輝いたのか?モドリッチ、クロース、チュアメニ...中盤の構成力と新しい風。
世界一の称号を、手にした。
クラブ・ワールドカップの決勝で、レアル・マドリーはアルヒラルと対戦。サウジアラビアの雄を破り、世界王者に輝いている。
■カゼミロの移籍と大きな穴
思えば、マドリーは今季、苦しんできた。
夏の移籍市場で、カゼミロがマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。移籍金固定額7000万ユーロ(約98億円)を置き土産に、ブランチ代表のボランチがイングランドに向かった。
移籍金8000万ユーロ(約112億円)でのオウリエン・チュアメニ獲得を決めていたマドリーだが、カゼミロの穴を埋めるのは簡単ではなかった。
そもそも、チュアメニはアンカータイプの選手ではない。【4−1−2−3】のシステムで、ワンボランチをチュアメニに任せる、尚且つカゼミロのようなタスクを課すというのは根本的に間違っていた。だがマドリーにはトニ・クロースとルカ・モドリッチという絶対的な2人の司令塔がいる。システムを変更する難しさがあり、カルロ・アンチェロッティ監督は試行錯誤を繰り返していた。
また、過密日程がマドリーに困難な日々をもたらした。
シーズン途中にカタール・ワールドカップがある影響で、今季のマドリーは多くの試合をこなさなければいけなくなった。リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグに加えて、1月にスペイン・スーパカップ、2月にクラブW杯で戦う必要があった。
カリム・ベンゼマ、ティボ・クルトゥワ、ダビド・アラバ、フェルラン・メンディ、ダニ・カルバハル、チュアメニ...。主力が次々に負傷した。戦線離脱を余儀なくされ、アンチェロッティ監督にはチームマネジメントが求められた。
無論、悪いことばかりではなかった。エドゥアルド・カマヴィンガの成長、ダニ・セバージョスの台頭があった。
カマヴィンガは2021年夏にレンヌからマドリーに移籍した。十代の早い時期から欧州の複数クラブから関心を寄せられていたカマヴィンガだが、ポジションが定まらないというウィークポイントがあった。
そのカマヴィンガを、アンチェロッティ監督は左SBで起用するようになった。メンディの負傷離脱があり、その代役として、カマヴィンガを抜擢。昨季、フェデリコ・バルベルデを右WGにコンバートして開花させたように、カマヴィンガが新たなポジションで萌芽の時を迎えようとしている。
一方、セバージョスはここにきてコンディションを上げてきている。
先月のスペイン・スーパーカップが終わった段階で、セバージョスのプレータイムは408分だった。マリアーノ・ディアス、アルバロ・オドリオソラ、ヘスス・バジェホ、エデン・アザールらと共にワースト5に入る出場時間だった。
だがコパのラウンド16のビジャレアル戦で、流れが変わった。途中出場のセバージョスとマルコ・アセンシオの活躍で、マドリーはビジャレアル相手に逆転勝利を収めた。以降、アンチェロッティ監督の信頼を再び勝ち取り、現在ではクラブが今季終了時までとなっている現行契約を延長する動きを見せるまでに至っている。
コパのビジャレアル戦というのは、ひとつの転換点になった。アンチェロッティ監督はそこまでの26試合中15試合で、最初の交代カードで中盤の選手を代えていた。それだけ中盤の構成に頭を悩ませていたのだ。
「レアル・マドリーで、シーズンを評価するのは難しい。我々はUEFAスーパーカップで優勝して、良い形でスタートした。カタールW杯までは順調だった。そこからは、W杯に出場した選手たちを回復させるのに苦労した。1月は負傷と勝ち点の両方で苦しむと分かっていた。2月に入り、モドリッチやバルベルデを見てわかるように、少しずつ選手たちのコネディションが戻ってきている。重要なのは、ここからだ」
「誰を試合で起用するかを決めるのは容易ではない。交代カードを5枚使えるので、それはアドバンテージだ。選手の交代で、試合の流れを変えられる。昨シーズンのチャンピオンズリーグでは、そこが大きかった。選手たちは理解している。スタメン、サブ、どちらも大事だ」
これはアンチェロッティ監督のコメントだ。
マドリーは2016年から2022年までの間に、チャンピオンズリーグで4回優勝している。その期間、マドリーを支えたのが「CMK」だった。カゼミロ、モドリッチ、クロースである。
しかし、カゼミロはマドリーを去った。また、モドリッチ(契約期間2023年夏まで)、クロース(契約期間2023年夏まで)は現時点で契約延長にサインしていない。
新たな流れ、新たな風が、吹き込む。世界王者に輝いたマドリーが、リーガで首位バルセロナを追走する。