『王様に捧ぐ薬指』で山田涼介に想われてた役の小林涼子。元カノ役などで7期連続出演中の女優人生【後編】
『王様に捧ぐ薬指』で山田涼介が演じる御曹司が高校時代に想いを寄せていた女性役で出演中の小林涼子。ここ数年、バイプレイヤーやゲストでたびたびドラマに出演し、今作で8クール連続となる。メインキャストの元カノ的な役が多く、美しさとインパクトのある演技で、出番以上の印象を残してきた。中学生で女優デビューして現在33歳。10代でブレイクにほぼ手を掛けながら、20代では不遇を経験したが、今また「よく見る」と注目を集めている。これまでの女優人生から今後目指していくものまで語ってもらったインタビューの後編をお届けする。
情熱が見た目から伝わるように地毛を赤くしたり
――近年のご出演作をいくつか振り返りたいと思います。『婚姻届に判を捺しただけですが』での2.5次元俳優オタクのデザイナー役は、コミカルで面白かったです。
小林 あれは楽しかったです。出ているシーンの中で、どうしたら推しにそれだけ熱を注いでいるのが伝わるか。パッと見でわかるように、地毛を赤くすることを提案させてもらいました。
――原作では赤い髪のキャラクターではなかったんですよね。
小林 そうなんです。「もしかしたら推しと会えるかも」とめちゃめちゃ着飾ったり、パン屋さんに恋したり、起伏がちゃんとある子で、それが短いシーンでも伝わるように、お芝居以外の部分も皆さんと相談しました。衣装もオーバーオールで揃えたり。
――『真相は耳の中』にゲスト出演したときは、犯人だった港区女子の役で、あざとさが目を引きました。
小林 キュルルン、みたいな(笑)。あれはもう恥ずかしさの極みでしたけど、復讐のために整形までした末に、ああしているから、振り切ったほうがいいなと。
――『花嫁未満エスケープ』では主人公の同僚で、離婚を経験した役。そういう年齢感や境遇も、いつもパッと見から滲み出ています。
小林 ライフスタイルが違えば、見た目や立ち居振る舞いはもちろん、お金の使い方が変わると思うんです。『花嫁未満エスケープ』だと離婚して子どももいないから、女性としてオシャレにお金を使ってネイルをしていたり、アクセサリーを付けていたほうがらしいかなと。髪型も少しモードっぽくして、同じクールに別の作品に出るとしても分け目や色を変えたり、その役らしさを出すことも心掛けています。
「クソ野郎!」は自分を鼓舞して言いました(笑)
――やっぱり、ひとつひとつの役でいろいろなことを考えているんですね。最初(前編)に出た『ダ・カーポしませんか?』の“だるま様”を買い込んで多重債務者になった役は、作り込んだのですか?
小林 あれは即興のような感じでやっていたら、すごく面白くなりました。いかに(ゲームに負けて)死ななそうに見せるかと、不倫してマルチ商法にハマったということで、普通そうでどこかヤバさが見えるようにしたかったんです。それで髪型もだるまに近い形で、ちょっと重めにしました。
――『今日も浮つく、あなたは燃える』では、夫の浮気現場の車に潜入して「どーも、サレ妻でーす!」と現れたり、「償って生きろクソ野郎!」と罵倒したり、インパクトの強い場面がありました。
小林 ノリと勢いでしたね。作品も1話3分ほどのSNS用ドラマなので、間をとにかく詰めて、今までの演じ方と違う部分もありました。いかにキャッチーにしていくか。私は当たりの強いお芝居があまり得意でないので、自分を鼓舞しながら頑張りました。
――だいぶ振り切ったようですね。
小林 演じた朋子も普段はそんなに当たりが強いわけでなくて、何かの衝動でふと跳ね上がってしまう感じで、振り切れた気がします。「クソ野郎」は言ったことがない言葉で、舌が回らなくなりそうでした(笑)。
会社を始めてチーム戦の意識が強くなりました
小林涼子は女優活動の一方、自ら起業したバリアフリーな農業に取り組む「株式会社AGRIKO」の代表取締役の顔も持つ。もともとリフレッシュのために、父の友人の稲作の手伝いをしていて、家族が体調を崩した際に農業と福祉の連携を学んだ。障がい者や高齢者が無理なく農業を続けられる受け皿を作ろうと、2021年に会社を設立。世田谷区のビルの屋上に、魚の養殖と水耕栽培を合わせた循環型ファームを持っている。日本政府の公式アカウントでも紹介された。
――農業に携わることで、女優業へのフィードバックもありますか?
小林 農業自体はリフレッシュで2014年からやっていましたけど、会社を始めたことで、お芝居もチーム戦として考えられるようになりました。「このパートはどう思いますか?」とちゅうちょせず聞いたり、みんなと一緒に作るイメージが大きくなって。あと、障がい者の方と触れ合うと、本当にピュアなんです。自分が長く仕事をしていてスレてきたところもあって、傷つきもした中で、こんなに真っすぐキラキラした笑顔で向き合ってくれるのかと。そういう人たちといると、私も照れや見栄がなくなって、だんだんストレートになりました。たくさん着まくっていた防護服が脱げてきたところがあります。
――毎晩、会社の事務作業をしているそうですが、そういう仕事はスタッフに任せたりはしないんですか?
小林 顧問弁護士や会計士、PRや撮影などをサポート してくれる方々とチームは組んでいますし、会社のスタッフも8人いて支えてくれています。ただ、自分が始めた会社ですから。みんなの日報を読んだり、どんな問題があるのか、備品は何が足りないのかを把握して、請求書や発注書、見積もりを作ったりしています。
決算も雇用保険も給与明細も自分でチェックしてます
――決算書も読んでいるんですか?
小林 読んでいます。最初は「決算って何だろう?」とまったくわからなかったし、雇用保険を掛けたり、社会保険を払ったり、やったことのない手続きに溢れていて。インボイスも会計士さんがホワイトボードに書いて説明してくれました。みんなの労働時間のシフトも組んでいます。もちろん全部を自分がやるわけではないですけど、給与明細でも何でもチェックはすべてしています。
――ずっと芸能界にいたのに、そういう事務作業が苦にならないタイプですか?
小林 めっちゃ苦でした(笑)。バイトもしたことがないので、メールの書き方から父と妹に「これはおかしくない?」と教わりました。「絵文字は絶対に使ったらダメ」と言われたりしながら(笑)。
――ビジネスメールに絵文字を入れていたんですか(笑)?
小林 LINE感覚で「株式会社AGRIKOの小林涼子で~す」みたいに書いていて。しかも最初は携帯で打っていたから、絵文字も入れちゃえと(笑)。今はパソコンで打つようになりました。請求書のケタを間違えて、会計士の先生に教えてもらったりもしますけど(笑)、お芝居でパソコンをパタパタ打っていたのは、違っていたなと気づきました。資料作りは大変で、何時間もしんどい気持ちでパソコンに向き合うこともありますから。
――そういうことも演技に活かせているわけですね。
小林 名刺交換もお芝居でしかやったことなくて、何となく渡すだけだったのが、意味のあることだとわかって。キチッと工程を踏めるようになりました。
今回はお姉さんっぽく見守る目線で
――そして、放送中の『王様に捧ぐ薬指』では、山田涼介さんが演じる新田東郷が高校時代に想いを寄せていた岡田小夜役。良いポジションですね。
小林 本当にご褒美のような役です。小夜は言いたいことを相手の目を見て言える女性で、太陽みたいに温かくて、男女どちらにも好かれそう。でも、東郷の気持ちには気づかなくて、思いやりはあるけど鈍感なのかなと。
――東郷が好きだったのが納得できるような、素敵さも見せるわけですよね。
小林 今回も出番の中で、瞬間ごとに関係性が見えるように工夫しています。東郷に好意はあるけど、恋ではなくて。お姉さんっぽく見守る目線があるといいかなと思っています。でも、「好きになるよね」と思える女性でいられるようにしています。
――小林さんのお手のものの役どころで。
小林 もう1人の同級生で婚約しているハチ(森永悠希)との距離感もうまく作っていかないと、説得力が出ないんですよね。森永さんとは『ハンオシ(婚姻届に判を捺しただけですが)』でも『真相は耳の中』でも一緒だったので、合間に「どうしたらいいかな」と密に話し合っています。
見た目にこだわりはありません
――20代の頃の「どうしても主役をやりたい」という気持ちは、今もありますか?
小林 『今日も浮つく、あなたは燃える』のサレ妻のように主役をいただけるなら、ありがたいです。でも、今の元カノポジションもすごく良いなと思っているので、やらせてもらえる役を楽しみたいです。
――いわゆる「遅咲きブレイク」的な展開を目指そうとは?
小林 思います。でも今まで、頑張ったらうまくいくわけではなかったので。目指したい気持ちと行けるかなという気持ちが混在しています。30代の女優って難しいんですよね。まだ若い女の子から成熟した女性に変わっていく年代を、うまく迎えられるか。先輩たちを見て、ああいう大人の女性になれたらいいなと思っています。
――バイプレイヤーのポジションでも美形ぶりが目につく小林さんですが、外見に関して気を配っていることもあるんですか?
小林 自分の見た目をどうしたいとか、あまりなくて。だから、役によってコロコロ変えたりもしています。髪を切ったのも、『ホットママ』で男の子の育児に奮闘するお母さん役をやるためでしたし、こだわりはありません。ただ、整った生活は心掛けていて。もともとマメなほうではないので、「お昼は面倒くさいからカップ麺でいいや」と思ったりしちゃいますけど、健康のために「夜は野菜を食べよう」とか、若干気をつかうようになりました。
完璧を目指さなくなって縁の巡りも良くなりました
――尊敬する女優さんやロールモデルにしている人はいますか?
小林 特にはいませんけど、真ん中も脇もできて、お芝居も人としても素敵な人はいいなと思っています。
――役者として、さらに努力したいこともありますか?
小林 完璧を目指さないことですね。自分を良く見せようとしてきた20代から、30代で少し殻を破れて、欠点も含めて自分らしさを見せられるようになりました。今はそれをすごく大事にしています。ガチガチに頑張っていた頃から、力がちょっと抜けて、会社を始めてから、みんなと協力しようと思うようになって。
――結果的に、そういうスタンスになってから、仕事でより良い結果が出ているんですよね。
小林 頑張りすぎなくなってから、良くなってきた感じです。以前にお仕事でご一緒した方や応援してくださっていた方に再会したり、縁の巡りも良くなってきた気がしていて。この取材でお話しすることも、「もっと成功してから」という気持ちもありましたけど、ありのまま「もうちょっと頑張りますから、見ていてください」と言えるようになりました。
30代で良いことも悪いことも面白がれるように
――プライベートも含め、これから30代はどう過ごしていきますか?
小林 今のまま頑張りすぎないで、とにかく楽しく仕事をしようと。力が入りすぎてダメだった20代を経験したので、30代は少し余裕を持って、良いことも悪いことも波に乗りながら、楽しんでいきたいです。
――今はストレスもない感じですか?
小林 たまに事務作業でワーッとなりますけど、それも面白がれるようになりました。決算も確定申告も「キツい、辛い」でなくて「ヤバいね。お祭りだね」みたいな(笑)。
――物理的には、女優業との両立は大変でしょうけど。
小林 今はラジオ『STEP ONE』で火曜に4時間の生放送もあって、かなりの密度ですけど、面白がることで乗り越えていけます。ラジオは自分のインプットにもアウトプットにもなりますし、番組中に曲が掛かっている間は、スタジオで1人カラオケ状態で歌っています(笑)。
――さらに新しいことに手を伸ばす状況ではないでしょうね。
小林 俳優と会社でやりたいことを2コやっていますし、手は2本しかありませんから、私はこれだけでいいかなと思います。
――たまには旅行に行きたい、とかは?
小林 行きたいですけど、新潟にもお手伝いしているファームがあって、5月と9月の農繁期には行かなきゃならないので。泥にまみれて米作りをしてきます(笑)。
――本当に充実した日々なんですね。
小林 充実しています。それが仕事に反映できればいいなと思います。
Profile
小林涼子(こばやし・りょうこ)
1989年11月8日生まれ、東京都出身。
2003年より「ニコラ」専属モデルになり、2004年に女優デビュー。同年にドラマ『一番大切な人は誰ですか?』で初レギュラー、2008年にドラマ『魔王』でヒロイン。その他の主な出演作は、ドラマ『砂時計』、『花嫁未満エスケープ』、『復讐の未亡人』、配信ドラマ『今日も浮つく、あなたは燃える』、映画『HINOKIO』、『子ぎつねヘレン』、『大人ドロップ』、『轢き逃げ 最高の最悪な日』など。映画『わたしの幸せな結婚』が公開中。ドラマ『ダ・カーポしませんか?』がParaviで全話配信中。『王様に捧ぐ薬指』(TBS系/火曜22:00~)に出演中。「ユーソナー」CMに出演中。ラジオ『STEP ONE』(J-WAVE/月~木曜9:00~)で火曜ナビゲーター。
火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』
TBS系/火曜22:00~