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元カノ役で美しすぎて気になる! バイプレイヤーでドラマ出演が7クール続く小林涼子の女優人生【前編】

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『王様に捧ぐ薬指』に出演する小林涼子 (C)TBS

ヒット中の映画『わたしの幸せな結婚』や18日スタートのドラマ『王様に捧ぐ薬指』に出演の小林涼子。ここ数年、バイプレイヤーやゲストでたびたびドラマに出演し、今回で8クール連続となる。メインキャストの元カノ的な役が多く、美しさとインパクトのある演技で出番以上の印象を残してきた。中学生で女優デビューして現在33歳。10代でブレイクにほぼ手を掛けながら、20代では不遇を経験したが、今また「よく見る」とじわじわ注目を集めている。これまでの女優人生から今後目指していくものまで語ってもらった。前編・後編でお届けする。

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モデルで自分のポジションを見つけられなくて

――近年、毎クール出演作が続いていますが、反響も感じますか?

小林 個性的な役が増えて、声を掛けていただくことが多くなりました。「だるまの人だ」と言われたり(笑)。

――前クールの『ダ・カーポしませんか?』で、マルチ商法の“だるま様”を大量に買い込んだ役でした。

小林 私は2話で死んでしまったんですけど、だるまのインパクトが大きくて、その後も回想トークで話を出してもらえたので。あと、『今日も浮つく、あなたは燃える』(アプリ配信ドラマ)でのサレ妻役がTikTokでバズったみたいで、その話でもよく声を掛けてもらいます。

――改めてうかがいますが、小林さんは4歳から芸能活動を始めたんですよね。

小林 幼稚園の同級生が子役をしていて、「私もかわいい服を着たい」みたいな感じで始めました。チラシのモデルをやったりしましたけど、あまり仕事はなくて、中学に進学するときに事務所をやめたんです。それからはクラシックバレエに打ち込んでいました。でも、ケガをして、バレエができなくなってしまって。落ち込んでいたとき、近所に住んでいたモデルの方に誘われて、またこの仕事をやることにしました。

――最初はモデル志望だったんですね。

小林 モデル事務所に入って、「ニコラ」のモデルになりました。その頃はちょうど、ガッキー(新垣結衣)が大人気だったんです。私は背もあまり伸びなくて、自分のポジションを見つけられなくて。それで、当時のマネージャーさんが以前、他の事務所で有名な俳優さんを担当していた方で、「お芝居はどう?」と言われたんです。

『ダ・カーポしませんか?』より (C)テレビ東京
『ダ・カーポしませんか?』より (C)テレビ東京

10代の頃は「このまま順調に行ける」と思ってました

――中3だった2004年、ドラマ『一番大切な人は誰ですか?』に宮沢りえさんの娘役でレギュラー出演しました。自分でも女優の仕事に意欲はあったんですか?

小林 クラシックバレエは無言語表現なので、お芝居をやってみると近いものを感じました。あと、初っ端でお会いしたのが宮沢りえさんで「素敵だな。こうなりたいな」と影響を受けました。

――その後、映画『HINOKIO』やドラマ『砂時計』、『魔王』などでヒロインクラスの役が続きました。女優としてやっていける自信も持っていましたか?

小林 本当に楽しくて順調に来ていた感じで、何となく「このまま行くんだろうな」という気持ちになっていました。今思えば良い大人の方たちに守られて、好きなことを自由にやらせてもらって、すごく幸せな環境だったんだと思います。一方で高校を卒業して、学生役から大人の役者になれるのか不安もあって。事務所を移籍したことも大きかったです。

――移籍は20歳を迎える年でした。

小林 あまり深く考えてなかったんですけど、10代からずっと一緒にやってきたマネージャーさんと離れると、環境も選ぶ仕事も変わって。善意で守ってくれる大人ばかりでないこともわかり、20代はすごく大変だった記憶があります。

仕事がうまく回らずトンネルにいるようでした

――出演作も単発のゲストなどが多くなりました。

小林 活動があまりうまくいかなくなってしまって。まだ制服の高校生役もあって、大人になり切れない。年齢と役柄のバランスを自分の中で落とし切れなかったように思います。物足りなかったし、毎日「こんちくしょう!」と思っていました(笑)。一度はうまくいくと思っていた分、「何でだろう?」と考える日々が続いて、トンネルの中にいるような気分でした。「ルックス的にレギュラーは獲りにくい」と言われたこともあります。

――そう言えば、ドラマ関係者から「きれいすぎてチラチラ気になる人が使いにくいこともある」という話を聞いたことがあります。最近のSNSやラジオで「ふてくされていた時期」という話をされていますね(笑)。

小林 本当にふてくされていました(笑)。負けん気はあるからフツフツはしている。かと言って、「私は大丈夫」と言うほどの自信もなくて。

――その頃、先ほど出た新垣結衣さんや『HINOKIO』で共演した多部未華子さん、堀北真希さん、それから戸田恵梨香さん、吉高由里子さんといった同世代の女優さんたちが華々しく活躍していました。

小林 黄金世代だったんですよね。全員がきれいに売れていきました。『砂時計』でも私はドラマ版でしたけど、映画版の夏帆さんは売れたり。私は「ネクストブレイク」と言われ続けて10数年(笑)。いつになったら「ネクスト」が取れるのか。悔しさしかなかったです。

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やめたら期待してくれていた人たちに申し訳なくて

――その「ふてくされていた時期」には、自分が女優に向いてないかもと思ったりもしました?

小林 向いてないというより、今の自分がダメなんだと思いました。10代の頃も自分の力で上ってきたというより、大人の方たちに支えてもらっていたことに気づいて。自分に何が足りないのか、考え続けていました。

――その答えは出たんですか?

小林 出ていませんし、今もまだ「何で?」と思うことはたくさんあります。メインで出ている方が羨ましいですし、レギュラーで完走できる人たちを見て、自分と比べて落ち込むことも多いです。

――でも、「やめよう」とまで思ったことはないと?

小林 やめたら、ここまで私に期待して導いてくれた方たちに申し訳ないと思っていました。「やめてやるものか!」という気持ちもありましたし。

――モチベーションの支えになっていたものは何でした?

小林 家族に「やめなさい」と言われていたら、諦めていたかもしれません。でも、家族が信じてくれていたので、私が先に根を上げてはいられないなと。

声を掛けてもらったことに応えようと思ってます

――ゲスト出演を続けていく中で、状況が良くなっていった感じですか?

小林 一番辛かった頃よりは楽しくお仕事をさせてもらっていますし、ありがたいことにオファーは続けていただいて。ゲストでも出られるのは、エキストラから始めた私にとっては、すごくありがたいことです。

――ゲストでも印象を残したい気持ちはありますか?

小林 せっかく声を掛けてくださったことに、応えたいとは思っていました。

――20代後半以降で、特に大きかった役はどの辺ですか?

小林 『姉ちゃんの恋人』では後半に入ってから出演させていただいて。それまで積み重なった物語の中にどう乗っていくか。お芝居に説得力がないといけなくて、怖さもありました。

――主人公の恋人の元カノで、乱暴されたのを助けられながら裁判で証言しなかったため、彼が傷害の実刑判決を受けて服役……という役どころでした。

小林 林遣都さんが演じた彼がずっと背負ってきた過去がここにあったんだ……と明かされるシーンでしたから、「こいつのために?」と思われたらダメ。慎重に演じました。良い芝居場をもらえて、すごくやり甲斐もありました。

――視聴者としてはひどいと思う女性でしたが、彼女もずっと苦しんできたことも伝わりました。

小林 何年も積み重なった罪悪感が、ふとした瞬間にどう出るのか、すごく考えました。再会して昔とは距離感が違うし、彼には新しい恋人がいる。その中で気持ちをどの程度ぶつけるかが、見せ場になっていて。作品の中でどんな立ち位置にいるといいのか、探りながらやらせてもらいました。

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役の描かれてない時間を埋めることが必要

――ゲスト出演ならではの難しさもありますか?

小林 突然出てきて、実は過去にこんなことがあって、長く引きずっていて……というのは、重要だけど直接描かれてはいなくて。その間、どういう時間を過ごしてきたのか、埋めていく作業が私には必要です。

――近年で特に難しかった役というと?

小林 時代劇の『善人長屋』はすごく頑張った印象があります。

――火事で亡くなったはずが生きていた妻の役でした。

小林 もともと溝端(淳平)さんが演じる主人公を騙そうと近づいたのに、恋してしまい、騙しているのが辛くなって去っていった。それで7・8話で再会ということで、1話からの間は何をしていたのか、まさに埋めていかないといけない。悪いことに手を染めて、しかも子持ち。葛藤がある中でどうお芝居するか、すごく悩んだんです。方向性が決まらず、リハーサルでは監督に「薄っぺらい」と言われました。「バックボーンが滲み出ないと説明台詞になってしまう」と。

―ー厳しいですね。

小林 ここでダメなら時代劇はもうできないと思って、撮影までに死ぬ気で考えました。そしたら、監督が評価してくださって。久々にお芝居とすごく向き合う時間になりました。

“みんなの元カノ”も心地良いです(笑)

――絶えずキャスティングされているのは、もちろん演技力が信頼されているからでしょうけど、自分の何らかの強みが見えてきたりもしていますか?

小林 強みと言えるほど自信はないですけど、昔好きだったけど実らなかった相手とか、元カノの役が多いんですね。みんなの元カノ(笑)。『ゴシップ』や『ロマンス暴風域』もそう。エモくて美化されているけど、改めてつき合いたいかというと、そうでもない(笑)。そんなポジションが私に向いているのかなと、ちょっと思っています。

――そうした役にやり甲斐も感じるように?

小林 ふてくされていた時期は血の気が多くて(笑)、メインの方への羨ましさが出てしまっていたかもしれませんけど、今は元カノのポジションも心地良いです。

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生きることを丁寧に演じられています

――公開中の映画『わたしの幸せな結婚』では、今田美桜さんが演じる美世に唯一愛情をかけていた元使用人・花の役。「今は子どもが2人いて、夫と畑仕事をして暮らしてます」と話していましたが、そういう生活感もリアルに漂っていました。

小林 今、自分の会社をやっていて(*)、実際に子どもが2人いる人とも一緒に働いているので、どんな生活をしているかも見えるんです。畑仕事をしている人の朝から晩までの1日も想像できるようになりました。生きることについて、改めて丁寧に考えられているかなと思います。(*バリアフリーな農業に取り組む「株式会社AGRIKO」を2021年に起業)

――虐げられていた美世への愛情も、一瞬の涙で表現されていました。

小林 いかに大事な宝物を扱うように触れられるか。最初は辛いときに一緒にいられなかったことを謝っていましたけど、美世が泣き出したら、スッと母の顔になって。自分が泣くのをやめて「大丈夫ですよ」と励ましてあげる。何かしてあげたいという愛情深い花らしさが出たらいいなと思いました。

――良いシーンになりました。

小林 監督が『砂時計』でご一緒した塚原(あゆ子)さんで、めちゃめちゃ懐かしくて、緊張もしました。成長を見せたい気持ちもあるし、力むとうまくできないし。でも、大事なシーンに呼んでいただけたのが嬉しかったです。

(C)2023映画「わたしの幸せな結婚」製作委員会
(C)2023映画「わたしの幸せな結婚」製作委員会

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Profile

小林涼子(こばやし・りょうこ)

1989年11月8日生まれ、東京都出身。

2003年より「ニコラ」専属モデルになり、2004年に女優デビュー。同年にドラマ『一番大切な人は誰ですか?』で初レギュラー、2008年にドラマ『魔王』でヒロイン。その他の主な出演作は、ドラマ『砂時計』、『花嫁未満エスケープ』、『復讐の未亡人』、配信ドラマ『今日も浮つく、あなたは燃える』、映画『HINOKIO』、『子ぎつねヘレン』、『大人ドロップ』、『轢き逃げ 最高の最悪な日』など。映画『わたしの幸せな結婚』が公開中。ドラマ『ダ・カーポしませんか?』がParaviで全話配信中。『王様に捧ぐ薬指』が4月18日にスタート(TBS系/火曜22:00~)。「ユーソナー」CMに出演中。ラジオ『STEP ONE』(J-WAVE/月~木曜9:00~)で火曜ナビゲーター。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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