紛争と制裁に苦しむシリアの若者だからこそできる新型コロナ感染予防のためのボランティア活動
若者が生活必需品やパンを無料配送
国営のシリア・アラブ通信(SANA)は24日、新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため、政府主導のもとで外出・移動制限を含む措置が実施されているなか、住民に生活必需品を配送する試みが、若者のイニシアチブのもと、各地で行われていると伝えた。
ダマスカス県では、青年慈善協会が「家にいよう」と銘打ったキャンペーンを始め、ドゥンマル区(ドゥンマル開発計画地区、ワーディー・マシャーリーア地区、ドゥンマル中心街地区、ウルード地区)の高齢者を対象に、生活雑貨品を無料で配送することを始めた。
協会の代表を務めるムハンマド・カイス・ラマダーン氏によると、配送受付は電話で終日受け付けているという。
ダマスカス県ではまた、別の慈善グループがマッザ区(マッザ86地区)で、パン販売所の混雑を回避するため、無料でのパン宅配を開始したという。
グループ発起人の1人のシャーディー・スライマーン氏によると、マッザ86地区を10のブロックに分けて、ボランティアが各ブロックでのパンの配送を担当しているという。
一方、クナイトラ県では、ハーン・アルナバ市の住民がボランティア・チームを結成、「家にいよう…あなたのパンを無料であなたの家に」と銘打ったキャンペーンを始め、住民にパンの無料配送を開始した。
ボランティア・チームのメンバーの1人であるアフマド・ジャリーダ氏によると、数日中にイスラエル占領地を除く県全域でパンを無料配送したいという。
このほか、ダイル・ザウル県では、家族計画協会傘下の女性支援エンパワーメント・センターがセンター内の裁縫所を活用して、手作りのマスクの制作を開始した。
センター長のイフラス・ウカイリーさんによると、1日400枚のマスクを制作しているという。
シリア政府は夜間外出禁止令を発動
イマード・ハミース内閣の新型コロナウィルス対策チームは、3月25日から追って通知があるまでの期間、全国で午後6時から午前6時までの12時間の外出を禁止し、すべての商店、店舗を閉鎖することを決定した。
違反者には罰則が科せられるという。
これを受け、ハミース首相は内務省に対し、外出禁止を徹底するために必要な措置を講じるよう、また各県の県知事に対して現場での措置の実施に努めるよう指示した。
WHOはイドリブ県で新型コロナウィルス感染にかかる検査を開始すると発表
世界保健機関(WHO)のヘディン・ハルドルソン報道官は24日、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県の反体制派支配地域で、新型コロナウィルス感染を確認するための検査を数日中に開始すると発表した。
ハルドルソン報道官は「2日間で300件の臨床検査を行い、これをもとに、近く対応を開始する」としたうえで「臨床検査は水曜日にイドリブ市で行われ、特別に準備されたラボで分析される」ことを明らかにした。
ハルドルソン報道官はまた「追加で2,000件の臨床検査を行えるよう活動している。今週中に医療用手袋1万双、医療用マスク1万個を含む必要な備品を送るつもりだ」と付言した。
そのうえで「国内避難民(IDPs)は呼吸器系の感染症にかかりやすい状況下で生活している」と指摘し、新型コロナウィルス感染拡大に警鐘を鳴らした。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)