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ユニクロ「3D KNIT」で広まった「ホールガーメント」 ガガも惚れた日本発ニットの魅力とは?

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
日本ブランド「SOMARTA」のホールガーメントニットをまとったレディー・ガガ(写真:アフロ)

秋冬の装いに欠かせない、ニットのぬくもり。着心地のよいニットウエアをまとうために、知っておきたい言葉があります。それは「ホールガーメント(WHOLEGARMENT=無縫製の意)」。

ありきたりのニットとは段違いの自然なフィット感が得られるうえ、デザイン面の表現力が高いから、レディー・ガガもお気に入り。日本では「ユニクロ」が得意にしているホールガーメントとは、どんな違いのあるニットなのでしょうか。世界に誇る日本ニットの魅力を探っていきます。

縫い目がないから、心地よい肌触り

UNIQLO TOKYO(東京・銀座)に出現したホールガーメント横編み機のインスタレーション(2020年10月11日終了)(画像協力:ユニクロ)
UNIQLO TOKYO(東京・銀座)に出現したホールガーメント横編み機のインスタレーション(2020年10月11日終了)(画像協力:ユニクロ)

一般的なニットウエアには、縫い目があります。身頃や袖など、それぞれのパーツを別々に編み上げてから、糸で縫って、全体をつなぎ合わせるからです。大量生産に向いた手順ですが、縫い目があるせいで、肩周りや両脇でごわつく原因にもなっています。要するに、「縫い目は邪魔」なわけです。ホールガーメントがすごいのは、この縫い目がほぼゼロという点です。

英語で「knit(ニット)」は「編む」という意味で、一般的なニットウエアは編み機で糸を編み上げて作ります。ホールガーメントのニットウエアに縫い目がないのは、専用の編み機で、全体をいっぺんに編み上げるからです。

立体的なセーターやカットソーを一度に編むには、特殊な編み機が必要です。この専用編み機を使って作るから、ホールガーメントのニットウエアには縫い目がなく、着ていて引っかかりを感じにくいのです。

ステイホームが広がり、ニットウエアを着たまま、1日を過ごすことも増えてきました。縫い目があると、ちょっとした動きの際に引っかかりを感じて、動きが邪魔される瞬間があって、イラッとすることも。でも、縫い目のないホールガーメントのニットウエアなら、着心地がよく、ノーストレスでいられます。

服に求めるものが心地よさ(コンフォート)重視に変わる中、気持ちを伸びやかにしてくれるニットウエアは一段と支持を広げているようです。

日本発・世界初の魅力を「ユニクロ」が広めていく

ホールガーメントのニットウエアを日本に浸透させた立役者は「ユニクロ」です。無縫製で編み上げる技術を駆使し、きれいなシルエットと着心地のよさを両立させた「3D KNIT」を販売しています。

縫い目がないから、ボディーになじむのも、ホールガーメントの魅力。体の線を自然に写し取ってくれます。縫い目がないから、肌へのストレスがなく、不快感もないわけです。

実は「ホールガーメント」という言葉は編み機メーカー「島精機製作所」の登録商標。世界で初めて日本で発明されたこの宝物に、ユニクロは早くから着目。島精機とパートナーシップを組んで、ホールガーメントの魅力を広めてきました。

無縫製ニットを世界のセレブに広めた日本ブランド

SOMARTA 2020-21年秋冬コレクション 「スキンシリーズ」のグローブをまとって(画像協力:ソマルタ)
SOMARTA 2020-21年秋冬コレクション 「スキンシリーズ」のグローブをまとって(画像協力:ソマルタ)

実力派デザイナーもホールガーメントを積極的に取り入れています。レディー・ガガやマドンナが愛用していることでも有名な日本ブランド「ソマルタ(SOMARTA)」もその好例です。

「ソマルタ」は2007年に無縫製ニットの「スキンシリーズ」を発表し、「第二の皮膚」というコンセプトを提案。素肌に違和感なく沿う着け心地と美しさは世間を驚かせました。「ソマルタ」の無縫製ニットのスキンシリーズは、MoMA(ニューヨーク近代美術館)にも収蔵されています。

廣川玉枝デザイナーは「360度縫い目がないことによって、皮膚のように伸びて心地よく美しいシルエットが実現できます。身体にあわせて様々な編み模様を設計でき、身体そのもののラインを美しくみせることができます」と、ホールガーメントの魅力を説明してくれました。さらに、「メッシュ構造でできているから、通気性が良好。軽くてイージーケアなので、気軽に畳んで持っていける点も今の時代にマッチしている」とメリットを挙げています。

「ソマルタ」の無縫製ニットアイテムには、レディー・ガガが着用したタイツのほかにも、グローブ(手袋)やマスク、さらに、ジャケット、ワンピース、スカートなど、様々な商品がそろっています。

若手デザイナーはホールガーメントのエシカル面にも注目

malamute sherbet bag ビスチェ風にシェイプされたフォルムが愛らしい(画像協力:マラミュート)
malamute sherbet bag ビスチェ風にシェイプされたフォルムが愛らしい(画像協力:マラミュート)

服以外にも無縫製ニットの活用が広がりつつあります。たとえば、小高真理デザイナーが手がける東京コレクション参加ブランド「マラミュート(malamute)」はホールガーメントニットで作ったトートバッグを販売しています。

精緻なニット表現が得意な「マラミュート」は、服のコレクションでもホールガーメントのアイテムを提案し続けてきました。

「sherbet bag」(シャーベットバッグ)は、無縫製の技術を使って、まるでビスチェのような形に仕上げました。生地をカットしないから、端切れが発生せず、作り上げる工程で、ロスを出さないのもホールガーメントのよさ。ニットならではの伸縮性があるので、入れるもの次第でバッグの形が変わる面白さも楽しめます。

着心地がやさしいホールガーメントは、無駄な廃棄物を出さない点で地球にもやさしい製法です。上質なニットウエアを着込めば、寒い日に部屋で過ごす時間もほっこり。リモートワークがまだまだ続きそうなだけに、伸びやかな着心地のニットウエアは重宝。ストレスフリーのニットウエアはワードローブに迎えたくなる魅力十分です。

(関連サイト)

島精機製作所

https://www.shimaseiki.co.jp/wholegarment/

ユニクロ

https://www.uniqlo.com/jp/ja/

ソマルタ

http://www.somarta.jp/

マラミュート

https://malamute-knit.com/

ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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