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U19FIBA女子ワールドカップ総括:最後に喫した3連敗は世界が日本のスタイルに対応した証

青木崇Basketball Writer
最後までハードに戦ったが、8位という結果に終わった日本 (C)FIBA.com

 7月21日からタイのバンコクで行われたU19FIBA女子ワールドカップで、日本は8位という結果で大会を終えた。2勝1敗だったグループ戦を経て迎えたトーナメント1回戦でハンガリーを倒して準々決勝に進出したものの、ベルギーには43対63と完全な力負け。カナダとマリ相手の順位決定戦は、いずれも3点差で敗れた。

 準々決勝以降の3試合は、第2クォーターにおけるオフェンスの停滞が敗因。7〜8位決定戦でマリに62対65で敗れた後、日本代表の萩原美樹子コーチは次のように振り返った。

「2ピリをビデオで何回も見ても、コーチたちと確認しても、いいシュートを打っているので、そこを入れ切れるかどうかが選手たちの課題なのかな…。選手の責任にするつもりはないですけど、ここ3試合は2ピリが全体の試合に響いたかなと思いますね」

日本のスタイルに世界が対応

 今大会における日本は、ルイビル大に進学するオールラウンダーの今野紀花、アグレッシブに攻めるスコアラーの東藤なな子がオフェンスの軸となり、アップテンポな展開で試合を優位に進めるつもりだった。しかし、2人のいずれかがベンチに下がってしまうと、ハーフコート・オフェンスの質が著しく低下。その象徴が準々決勝のベルギー戦だ。

 1Q終盤、今野はクロスオーバーからのジャンパーとドライブからレイアップを立て続けに決め、リズムをつかんだかと思われた。しかし、2Q開始からベンチに下がっていた3分29秒間に日本は1点も取れず、ベルギーのリードが一気に11点まで広がってしまう。さらに、今野がコートに戻ってもボールを触れる機会が少なく、ハーフタイムまで1本もシュートを打てない事態に直面。右ひざに問題を抱えた状態で大会を迎えたとはいえ、2Q最後の6分31秒間は、今野の持ち味である得点機会をクリエイトする能力を生かせる策の少なさを示すものだった。

 グループ戦の映像でわかっていたものの、コートサイドでライブの試合を見ると、対戦相手は日本のスピードを生かしたドライブ&キックにしっかり対応していたと再認識。ハーフコートの展開になった時、ディフェンスのローテーションが少し遅れたとしても、身長と腕の長さを生かしてコンテストしてきたことで、日本はなかなかオープンでシュートを打たせてもらえない。打つと見せかけてドライブでアタックしても、ゴール前でブロックショットの餌食にあうシーンを何度も目にした。

 また、速攻やアーリーオフェンスでシュートが打てないと、日本はボールの動きを止めてしまうことも多かった。萩原コーチが「止めない!」と檄を飛ばしても、最後の3試合は何度もこのような状況に直面。相手のいいディフェンス対応もあるにせよ、リード&リアクトの質がいまひとつだったことは否定できない。

東藤(中央)は12.3点、4.9リバウンドという平均がいずれもチーム最高を記録するなど、攻防両面でチームをけん引  (C)FIBA.com
東藤(中央)は12.3点、4.9リバウンドという平均がいずれもチーム最高を記録するなど、攻防両面でチームをけん引 (C)FIBA.com

攻防両面における引き出しの少なさ

 ハーフコートの展開では、オフェンスだけでなくディフェンスでも苦しい戦いを強いられた。それは、使えるプレーの数の少なさ=引き出しの少なさである。ドイツとのグループ初戦から最後のマリ戦までの7試合、日本のディフェンスはマンツーマンに終始し、サイズのあるインサイドの選手がボールを保持した際にダブルチームで対応していた。

 7月13日と15日に日本とスクリメージを行ったアメリカのジェフ・ウォルツコーチは、「スピードがあるのにどうしてプレスを使わないのか?」という疑問符を筆者に投げかけていた。また、相手のリズムを狂わせるために、数ポゼッションをゾーンで対応するといったこともまったくしていない。大会終了後、萩原コーチにプレスとゾーンを使わなかった理由を尋ねると、次のような答えが帰ってきた。

「準備をしたかったの。本当はやはり世界と戦う時ゾーンプレスも必要だし、A代表がやっていたローリングやゾーンは絶対に必要だねという話はいつもしていました。ただ、準備期間が足りないので、ゾーンというところまで行かないんですよ。今回もピックの対応だとかを(中心に…)。つまり、毎月1回必ず合宿をさせてもらえるのは、各チームの皆さんの協力があってありがたいんですけど、そこで組み立てたものが3、4日やって解散してしまうと、次が1か月後なので思い出すことに一生懸命で、次、次となかなか積み重ねられないんですね」

 代表チームである以上、準備期間の少なさは常に直面する問題。そんな状況下で日本が今後レベルアップしていくには、カルチャーとフィロソフィーの変革が必要ではないか? まずは準備期間が足らないという考えを削除し、限られた時間でどうすべきかを考え、プランを遂行すべきだろう。それはチーム作りにおけるプロセスを見直すことを意味すると同時に、引き出しの数を増やすことにもつながる。女子に関しては、世界と戦えていると思う方が多いだろう。しかし、U19ワールドカップの結果と上位チームとの対戦ではっきりしたのは、このままだと世界レベルで戦えなくなるという危機感を持たなければならないということだ。

フィジカルの差をカバーするためにも選手層を厚くすることが必須

 9日間で7試合という厳しいスケジュールの中で、日本は最後までハードに戦った。しかし、対戦相手はインサイドでよりフィジカルに攻めてくることが多く、その対応によってボディブローを打たれ続けたように体力を消耗。その影響は、オフェンスの精度が下がってしまうことにもつながった。マリとの最終戦、4Q残り1分32秒に石原柚香の3Pシュートで逆転したものの、直後のディフェンスでファンタ・コネにオフェンシブ・リバウンドを奪われ、シカ・コネに勝ち越しのレイアップを決められたプレーは、今大会の日本がフィジカルな攻防で苦しんだ典型例と言える。

 準々決勝以降の3試合でわかったこととしては、ポジション争いに勝ってボックスアウトをしていても、そこからジャンプしてボールを奪いに行けないシーンが多かった点。ジャンプした場合は背中を少しでも押されればファウルをもらえるのだが、飛べないと相手の腕に絡んだとして逆にファウルを吹かれてしまい、セカンドチャンスからの失点で自分たちの流れに引き寄せることができなかったことも痛かった。

 また、グループ戦の3試合に先発していた181cmの野口さくらが、ハンガリー戦を前に体調を崩して離脱したのは大誤算。パワーフォワードとして出場時間を分け合いながら奮闘していた奥山理々嘉と伊森可琳のバックアップとして、野口はマリ戦の2Qに3分22秒間出場する機会を得たが、このレベルでプレーできる状態まで回復していなかった。マッカーサー・マヤ・ソフィアがローテーション外になるなど、大会途中から試合に出る選手の固定化を強いられた反省を踏まえ、世界と戦うには「12人が戦える状況にしなければいけない」と萩原コーチはコメントした。

大会序盤では苦戦していたが、カナダ戦とマリ戦でようやく持ち味のシュート力を発揮した奥山 (C)FIBA.com
大会序盤では苦戦していたが、カナダ戦とマリ戦でようやく持ち味のシュート力を発揮した奥山 (C)FIBA.com

 昨年のワールドカップでA代表が直面したように、世界の強豪国はアンダーカテゴリーでも日本のスピーディーな展開に対応しながら、弱点を攻めることができるようになってきている。ドライブ&キックという武器をより生かすために遂行できる引き出しを増やすことなど、バンコクでの経験を決して無駄にしてはならない。A代表とアンダーカテゴリーに共通した課題と日本バスケットボール協会は認識して、これからの強化を進めることが期待される。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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