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36歳の“鉄人”青山修子は、なぜ、ダブルスでWTAツアー20勝目に到達できたのか!?【テニス】

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
東レPPOで優勝の青山(左)と穂積(写真すべて神仁司、撮影機材ソニーα9III)

青山修子/穂積絵莉組が、東レPPOで初優勝!

 東レ パン パシフィック オープンテニス(以下東レPPO)のダブルス決勝で、青山修子(WTAダブルスランキング49位、大会時、以下同)/穂積絵莉(58位)組が、柴原瑛菜(37位)/ラウラ・シゲムンド(14位、ドイツ)組を、6-4、7-6(3)で破って、見事初優勝を飾った。決勝の第2セットタイブレークでは、勝負強さを見せる青山が、思い切ったリターンウィナーだけでなく、サービスエースも決めて、相手ペアを突き放して勝利をつかみ取った。

 日本人ペアによる優勝は、2018年大会で、加藤未唯/二宮真琴組が優勝して以来、2組目となった。

 これまで青山は、意外にも東レPPOでの最高成績がベスト8止まりだった。日本で開催される最大のテニス国際大会で、ついに手にしたビッグタイトルに喜びもひとしおだ。

「優勝できて本当に嬉しく思います。1回戦からタフな試合が続き、1回戦では負ける寸前でしたが、そこから自分の中では開き直って、いいプレーが出てきた。今回の優勝をきっかけに、また自分らしいプレーを続けていけたらいいなと思います。本当に日本で優勝できて嬉しい」

 青山/穂積組は、1回戦、準々決勝、準決勝、いずれも10ポイントマッチタイブレークを制して競り勝った。

 青山のダブルスパートナーを務めた穂積は、昨年の東レPPOでは二宮と組み、決勝で10ポイントマッチタイブレークの末敗れて惜しくも準優勝に終わっていたが、2023年大会の雪辱を果たして、今回の初優勝に至った。穂積にとって、WTAツアーでのダブルス優勝は6回目となった。

「昨年はここですごく悔しい思いをしたので、今年優勝できて本当に嬉しいです。今年、いい試合をしても、なかなか勝ちきれない試合が多かったので、1回戦からタフな状況の中、2人でポジティブに戦って、一大会とおしてそれをやりきり、優勝という結果がついてきたことが本当に嬉しいです」

 一方、決勝で青山たちの対戦相手の一人となった柴原は、かつて青山のダブルスパートナーを務めていた。2021年WTA1000マイアミ大会で優勝したり、ツアー最終戦であるWTAファイナルズには2度出場(2021年、2023年)を果たしたりした。2023年にはオーストラリアンオープンで準優勝も飾り、多くの輝かしい戦績を青山と一緒に残した。そんな青山と柴原が対戦するのは初めてのことだった。

「あんまり考え過ぎず、誰が相手でも同じようにやっていきたい」という気持ちで入った柴原は、青山が毎回のようにポーチに出ることを熟知しており、ロブやダウンザラインへのショットを打って対処したが、それでも「青山のネットプレーにプレッシャーを感じた」という。敗れて準優勝に終わった柴原だが、「1週間いいプレーができて、とてもよかったと思います」と締めくくった。

東レPPOで初の決勝進出を決めて、パートナーの穂積に向かってガッツポーズをつくる青山。苦しいシーズンが報われた瞬間でもあった(撮影機材ソニーα9III)
東レPPOで初の決勝進出を決めて、パートナーの穂積に向かってガッツポーズをつくる青山。苦しいシーズンが報われた瞬間でもあった(撮影機材ソニーα9III)

青山が、WTAツアーダブルス優勝20回目に到達

 36歳の青山は、今回の東レPPOでの優勝によって、WTAツアーでのダブルス優勝が通算20回目となった。これは、杉山愛のツアーダブルス優勝38回に次ぐ大記録だ。

 身長154cmで、ワールドプロテニスツアーでは小柄な青山が残したこの成績は驚嘆に値する。一体どのようにしてモチベーションを維持し続けてきたのだろうか。

「自分の中で、年齢を重ねていって、正直難しいところはすごく今年ありました。やっぱり結果がついてこなかったことも一つ要因の中にあった。ツアーはどんどん毎週毎週試合があり、やめると決めているわけではないので、自分の中でやり続けるしかない。とにかくけがをしないように、自分のできることをやってみようというふうに、今年は日々過ごした」

 毎週のように海外での移動が伴う厳しいツアー生活の中で、青山は、ダブルスパートナーやライバル選手たちといった身近な存在を見つめながら、自らを奮い立たせた。

「横で、穂積選手が自分のできることをやっている姿だったり、ツアーで他の選手が回っている姿を見たりして、自分もここで戦っている以上は、何とかしんどくても、やり続けてみよう、と。もちろんうまくいく日、いかない日、いろいろあるんですけど……。やり続けていたら、今回のように何かのきっかけで、やっぱりいい自分を取り戻せたなと感じる。モチベーション自体は、やっぱり正直浮き沈みはあるんですけど、継続していく中で、こういうこと(東レPPO初優勝)が生まれたのかなと思います」

 シングルスに比べてダブルスは、注目されることが少なく、青山は、悄然とすることも多かっただろう。それでも、くさらず長年プレーをし続け、プロ生活約14年10カ月で到達したツアー20勝という金字塔に、改めて心から拍手を送りたい。

 そして、この青山のプロフェッショナルな姿勢は、いつまでもツアー下部のITFサーキットを回っているような多くの日本女子選手が見習うべきものだ。

36歳の青山は、東レPPOの初タイトル獲得によって、ダブルスでWTAツアー通算20勝目に到達し、ワールドプロテニスツアーで大きな足跡を残している
36歳の青山は、東レPPOの初タイトル獲得によって、ダブルスでWTAツアー通算20勝目に到達し、ワールドプロテニスツアーで大きな足跡を残している

まもなくBJKカップ・ファイナルズが開幕

 女子国別対抗戦ビリー ジーン・キングカップ(BJKカップ)では、まもなくトップ12ヶ国で構成されるファイナルズ(11月13~20日、スペイン・マラガ)が開催され、世界一の国が決定する。

 杉山愛監督の指揮のもとで初めてファイナルズに進出した日本は、11月14日に、初戦でルーマニアと対戦する。1回戦を勝ち上がると、準々決勝でイタリアが待ち受けている。

 今回、東レPPOで優勝した青山と穂積は、すでに日本代表メンバーに選ばれており、さらに、大坂なおみの出場辞退により、柴原が追加招集された。ルーマニア戦では、第3試合にダブルスが設定されており、勝敗を決する重要な場面で、再び青山と穂積が一緒にプレーをすることになるかもしれない。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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