韓国版働き方改革の行方
先日、働き方改革関連法案が成立しましたが、時を同じくして韓国においても、韓国版働き方改革が政権の肝入りで進められています。以前も述べたように、日本の働き方改革関連法案ははっきり言って大した話ではないので、大げさに持ち上げる人も危険を誇張する人も無視しておいて構いません。
【参考リンク】働き方改革法案の議論がぜんぜんかみ合わないわけ
一方、韓国の働き方改革は、日本とは逆に社会全体にかなりのインパクトをもたらす内容です。いい機会なのでまとめておきましょう。
実は格差是正政策ではなかった最低賃金引き上げ
反財閥を掲げて政権交代を実現した文政権は、公約通り、全国一律で16.4%という最低賃金の大幅な引き上げを実行しました。ただ、これは多くの経済学者や識者が事前に指摘したように、最低賃金以下で就労していた末端労働者から雇用を奪い、むしろ格差を拡大する結果となっています。5月に発表された1~3月期家計所得統計によれば、所得上位20%の所得が前年比で9.3%増える一方、所得下位20%の所得は8%も低下してしまいました。
ここまでなら単なる左派政権の失敗というよくある話ですが、注目すべきは、文政権が同時に労働時間の上限を週68時間から52時間に大きく引き下げる政策も打ち出したことです。これにより、企業は労働時間を減らされた分を新規雇用せねばならず、新たに13万人の雇用が創出されるとの試算も出されています。
そこには、生産性の低い産業から高い産業に規制により労働者を移し、経済成長を促すという狙いが透けて見えます。
実は日本においても、同様の主張をする識者や官僚は少なくありません。「最低賃金を引き上げることで格差是正を」とぼかしている人もいますが、本音では労働者のお尻を叩いてもっと稼ぎの良い職場で頑張らせろということです。
果たして人間が将棋の駒のごとく法律で動かせるのか、懐疑的な声も根強い政策ですが、韓国が自国民を使って壮大な実験を行ってくれているわけですから、結果には要注目でしょう。