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もしもラグビーでドラフト会議をしたら2024【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
早稲田大学の佐藤(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 10月24日にプロ野球のドラフト会議があったのを受け、本欄にて毎年恒例の仮想「ラグビーのドラフト」を実施する。

 2024年12月に開幕する「ジャパンラグビーリーグワン」の「ディヴィジョン1」の計12チームの「ドラフト1位」をシミュレーションした。

 各クラブの状況、特徴、ポジションごとの年齢層をもとに、最適と見られる選手を独自に選んだ。

仮想ドラフト2024の争点

 今年は大卒では早稲田大学でフッカーの佐藤健次、帝京大学でフランカーの青木恵斗およびロックの本橋拓馬が上位の軸となりそうだ。

 佐藤はスクラム最前列中央の重役とあり、昨季同じ位置の江良颯を獲得したクボタスピアーズ船橋・東京ベイを除く11チームにとっては無視できない存在だろう。

 青木は海外勢顔負けのフィジカリティ、大学選手権3連覇中のチームで磨いたタフネスぶりが光る。青木と同級生の本橋は希少な日本人若手ロックの筆頭格だ。

 ポジションで充実するのはスクラムハーフ。京都産業大学の土永旭は日本代表候補入りし、早稲田大学の宮尾昌典、帝京大学の李錦寿も評価が高い。

 留学生選手の需要も高まるか。選手登録のルールが変わったことで、大卒の海外出身者が「カテゴリーA(日本代表資格のある選手=11名の同時出場が必須)」で出やすくなるからだ。

 京都産業大学でロック兼フォワード第3列のソロモネ・ランギランギ・フナキ、天理大学でナンバーエイトのパトリック・ヴァカタが注目されそう。大東文化大学の名コンビ、右プロップのリサラ・フィナウ、センターのハニテリ・ヴァイレアも際立つ。

 高校生では、現ナンバーエイトで将来的にはフッカーに転じそうな祝原久温(石見智翠館高校)、視野の広い司令塔である上田倭楓(大阪桐蔭高校)が注目される。

※見方…チーム名(前年度順位/チームにより入替戦の結果を明記:ディヴィジョン1残留orディヴィジョン2より昇格)=選手名 所属先 ポジション 身長 体重

カンファレンスA

東芝ブレイルブーパス東京(1)=ハニテリ・ヴァイレア 大東文化大学 センター 181センチ 98キロ

 独自の一体感を醸す空気のもと、トッド・ブラックアダーヘッドコーチら首脳陣が心技体を育成。14年ぶりの日本一に輝いた昨季は、元大東文化大学主将でフランカーの佐々木剛、元天理大学でフルバックの松永拓朗ら2020年以降に加入したメンバーが躍動していた。本欄ではニコラス・マクカランが退団したセンターでカテゴリーAの即戦力を獲得。突破力とパススキル、防御力を兼備。

横浜キヤノンイーグルス(4)=本橋拓馬 帝京大学 ロック/フランカー 196センチ 116キロ

 沢木敬介監督が着任から3シーズン目以降、2季連続で4強入り。多彩なアタックと勤勉さを貴ぶ文化が定着した。バックヤードは日本出身者の育成とバランスのよい補強を志している。本欄では国内にあって希少な若手ロックを補強。鍛錬と実戦経験で資質を引き出す。

コベルコ神戸スティーラーズ(5)=宮尾昌典 早稲田大学 スクラムハーフ 165センチ 70キロ

 デイブ・レニーヘッドコーチが就いた昨季は9位から5位に浮上。進化を加速させるのに、20代前半のスクラムハーフで即戦力を獲得。この人は出身地が関西。球さばきのスピードと相手の急所を突く判断が光る。

静岡ブルーレヴズ(8)=ハニテリ・ヴァイレア 大東文化大学 センター 181センチ 98キロ

 元日本代表チームディレクターの藤井雄一郎氏が監督となった昨季は、一芸に秀でたルーキーをアーリーエントリーで起用。摂南大学のヴェティ・トゥポウらがブレイクした。今回はヴィリアミ・タヒトゥアが不動の存在となっていたインサイドセンターへカテゴリーAのタレントを獲得。選手層に厚みを持たせる。

三菱重工相模原ダイナボアーズ(9)=青木恵斗 帝京大学 フランカー/ナンバーエイト 187センチ 110キロ

 グレン・ディレーニーヘッドコーチは猛練習で鍛える方針。自身が防御を貴ぶ傍ら、元ブレイブルーパスのジョー・マドックアシスタントコーチを招いて攻めの幅も広げる。粘りが信条のチームを引き上げるのに、昨季までチャンピオンだったチームでずっと主軸を張ってきたタフなフォワードを指名する。

浦安D-Rocks(―/ディヴィジョン2より昇格)=植田和磨 近畿大学 ウイング 177センチ 87キロ

 NTTグループの再編成により一昨季に発足した。元スコッドランド代表主将のグレイグ・レイドロー新ヘッドコーチのもと、若きエース候補を抜擢。ハイボールの捕球とフットワークに長け、場合によっては7人制日本代表としての五輪出場も期待される。

カンファレンスB

埼玉パナソニックワイルドナイツ(2)=佐藤健次 早稲田大学 フッカー 177センチ 105キロ

 堅守速攻の強豪。リーグワン元年まで2季連続で日本一に輝き、昨季までの2シーズンもレギュラーシーズンを首位通過してファイナリストにとなっている。これまで攻守で躍動したフッカーの堀江翔太が昨季限りで引退した。本欄で歯その位置をカバーするタレントを指名。主将の坂手淳史らともに2番もしくは16番を争う。

東京サントリーサンゴリアス(3)=佐藤健次 早稲田大学 フッカー 177センチ 105キロ

 アグレッシブ・アタッキングラグビーという部是とタフな部内競争が伝統。一昨季までの数年間はそのシーズンの目玉選手が大量に加入したことでも話題を集めた。各ポジションに代表クラスの選手をまんべんなく並べる中、日本出身者では20代前半のフッカーとスクラムハーフが不在。当該ポジションにおける再注目選手を指名する。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(6)=土永旭 京都産業大学 スクラムハーフ 171センチ 76キロ

 一昨季のリーグワン王者は昨季までに帝京大学出身でフッカーの江良颯、明治大学出身でセンターの廣瀬雄也といった大学選手権決勝に出たチームの主将を獲得。同時に加わった明治大学出身の右プロップ、為房慶次朗は、すでに日本代表に入った。

 今回は複数ある中長期的な補強ポジションのうち、スクラムハーフに焦点を当てた。左足のキックが魅力で重量級のフォワードを活かせそう。日本代表で現在25歳の藤原忍、新加入で目下1季のみ契約のブリン・ホールらとの争いで層を厚くするか。

トヨタヴェルブリッツ(7)=小村真也 帝京大学 スタンドオフ/ウイング/フルバック 180センチ 92キロ

 スティーブ・ハンセンヘッドコーチにイアン・フォスター共同コーチ、さらにはスクラムハーフにアーロン・スミスと、さながら2010年代のニュージーランド代表の様相。司令塔には日本代表として活躍してきた松田力也を獲得し、年齢、サイズにバランスのとれたフォワード陣を最適化する準備が整ったか。長距離砲のキックとハイパントキャッチに長けたユーティリティーバックスを指名する。

リコーブラックラムズ東京(10/入替戦で残留)=青木恵斗 帝京大学 フランカー/ナンバーエイト 187センチ 110キロ

 

 若手育成を主眼に置き、昨季はスタンドオフの伊藤耕太郎、ウイングの高本とむといった日本代表候補勢(入団決定後に選出)ら実力者を加えている。ここ数年で加入した大卒ルーキーにあって、欠けている位置は突破役タイプのバックローや技巧派の日本人センターなど一部に限られる。本欄では前者の筆頭格を提案。突進力のほかジャッカルも際立つ。

三重ホンダヒート(11/入替戦で残留)=佐藤健次 早稲田大学 フッカー 177センチ 105キロ

 親会社にあって「ブランディングスポーツ」に格上げされ、他チームからの戦力補強で話題を集める。仮想ドラフトにあってもその年の注目選手のひとりを指名。センターラインにスター選手を据えるのを目指す。

その他の「上位候補」

平生翔大 関西学院大学 フッカー 174センチ 105キロ

祝原久温 石見智翠館高校 フッカー 180センチ 104キロ

黄世邏 関西学院大学 左プロップ 180センチ 110キロ

リサラ・フィナウ 大東文化大学 右プロップ 189センチ 125キロ

田島貫太郎 明治大学 ロック 197センチ 105キロ

佐々木柚樹 大東文化大学 ロック/フランカー/ナンバーエイト 188センチ 103キロ

セコナイア・ブル 日本大学 ロック/フランカー/ナンバーエイト 192センチ 125キロ

ソロモネ・ランギランギ・フナキ 京都産業大学 ロック/フランカー/ナンバーエイト 186センチ 110キロ

アホ・アントニオ 青森山田高校 ロック/フランカー/ナンバーエイト 191センチ 107キロ

ユアン・ウィルソン 立正大学 フランカー/ナンバーエイト 190センチ 107キロ

木戸大士郎 明治大学 フランカー/ナンバーエイト 186センチ 102キロ

福田大晟 明治大学 フランカー 173センチ 95キロ

パトリック・ヴァカタ 天理大学 ナンバーエイト 189センチ 115キロ

李錦寿 帝京大学 スクラムハーフ 174センチ 80キロ

上田倭楓 大阪桐蔭高校 スタンドオフ 179センチ 80キロ

堀日向太 筑波大学 スタンドオフ/センター 173センチ 82キロ

金侑悟 法政大学 スタンドオフ/センター 175センチ 83キロ

秋濱悠太 明治大学 センター 173センチ 85キロ

近藤翔耶 東海大学 センター 180センチ 90キロ

ジョアペ・ナコ 日本大学 センター 181センチ 98キロ

安田昂平 明治大学 ウイング 182センチ 87キロ

モリース・マークス 東洋大学 ウイング 179センチ 89キロ

辻野隼大 京都産業大学 スタンドオフ/フルバック 178センチ 87キロ

本当はドラフト会議なんてない!

 ちなみに実際のラグビー界では、ドラフト会議はおこなわれない。現状になじまないからだ。

 高校生選手の多くは大学進学を希望しており、大学生選手も卒業後に競技を続ける場合はラグビー専業のプロ選手になるか、社業にもいそしむ社員選手になるかを選ぶ。

 さらに社員選手の業種は、家電メーカー、酒造メーカー、自動車メーカーなどさまざま。つまり対象選手の雇用形態や職種が千差万別となる。

 そのため、各チームの獲得希望選手が重なった場合にくじでその選手の交渉権を決めるという形式は成立しえない。

 本企画の初実施は2017年。早稲田実業高校の清宮幸太郎が、高校生最多タイの7球団競合により北海道日本ハムファイターズとサインした年だ。

 当初はネット上で「どうせ仮の話なので無意味では」との投稿が散見も、ドラフトという言葉の訴求力の高さもあり多くに読まれた。以後の閲覧数も高値安定。将来が期待される若きラグビー選手の名前を広く伝える意味もあり、今年も開催した。

 実際には、下記に出るような実力ある最上級生のほとんどは進路に目星をつけている(厳密に言えば「未定」)。さらに言えば、現在3年生のリクルーティングも進行中。クラブによっては、現在の1、2年生にも注目し、段階的に補強ポイントを埋めようとしている。

 

 以上の理由から、本欄が現実世界の進路選択に影響を及ぼすことは全くない。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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