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帰国して父を見送り…。リッチー・モウンガが復帰戦で躍動。心境は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
この日も躍動(写真提供=JRLO)

 改めて、うまさを証明した。

 5月5日、静岡はヤマハスタジアム。昨秋までニュージーランド代表の司令塔だったリッチー・モウンガが、東芝ブレイブルーパス東京の10番をつけて国内リーグワン1部・最終節に登場した。

 身長176センチ、体重83キロの29歳。すでにシーズン2位でプレーオフ進出を決めて迎えたこの日は、静岡ブルーレヴズを50—29で下した。

 自身を経由してのビッグゲイン、トライを量産した。本人は言う。

「プレーに関わり、ボールタッチを増やす(のを意識した)。パスの遂行力は、よい点だったと思います」

 そう。パスで魅した。

 身体の軸を真正面に進めながら放る。すると、防御網に入る面々はわずかながらもその場に立ち止まらざるを得なくなる。おかげで、弾道を追って捕球役を捕まえるのがわずかに、場合によってはかなり遅れる。

 前半8分にシャノン・フリゼルのトライをアシストした1本(直後のゴール成功で7―0)、後半10分のジョネ・ナイカブラのフィニッシュのふたつまえの1本(こちらもゴール成功に伴い26—13)は、その好例だ。

 そもそもモウンガが鋭いランを強みとしているのだから、相手は最後まで走られるのを警戒しなくてはならない。かえってモウンガはパスがしやすくなる。

 ブレイブルーパスが数的優位を保ったなかでモウンガがさばけば、守る側が苦しくなるのは必然と言える。

 攻めの構造上、タッチライン際に立つことの多いフランカーの佐々木剛はこうだ。

「自分でも(ランで)行けるし、大外へも回せるし、小さいパスも使える。変幻自在な感じ。助かっています。ギャップやスペースを見つけたら、そこへ最短で(ボールを運ぶべく)自分で行ったり、パスを出したりができる。こっち(パスをもらう側)はスペースに立って、そこを(パスを呼び込むなどして)しっかり狙いに行く」

 モウンガは守りでも光った。前半終了間際、自陣ゴールライン前右端でトライ王となるブルーレヴズのマロ・ツイタマへタックル。タッチラインの外へ押し出した。弾かれた側が「一瞬の出来事だった。あとで振り返れば内側(グラウンドの中央方向)にステップを切ってもよかったかもしれません。(モウンガの衝突で)ボディバランスを崩してしまった」と悔やむなか、モウンガは淡々としていた。

「ブルーレヴズは多彩なアタックを持っています。どこから何をされるかが読めないなか、必死で止めただけです」

 4月上旬、父の逝去に伴い一時帰国。21日までに日本へ戻り、この日、実戦復帰していた。

 親を見送った際の状況、競技復帰までの道のりについても話した。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——母国のニュージーランドにいる間は。

「まったく身体を動かしていませんでした。家族で集まり、父を最高の形で送り出してあげようとしました。ラグビーやトレーニングは優先順位になく、父親のための時間でした」

——帰国後、心身のリフレッシュと競技復帰までどんな手順を踏みましたか。

「チームの練習に混ざり、実際の試合に出たら——今週で言えばブルーレヴズに対して——自分がどんなプレーをするかを頭のなかでイメージしながら動いていく。いつも通りの1週間で、心身を戻してきた」

 5月19日には東京・秩父宮ラグビー場で、東京サントリーサンゴリアスとのプレーオフ準決勝がある。ノックアウトステージを前に公式戦にフル出場できたことは、精神面、身体面でよい準備になったとモウンガは示唆した。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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