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なぜレアルはベリンガムの“154億円”の補強に成功したのか?ヴィニシウス、ロドリゴ…若手の成熟と成長

森田泰史スポーツライター
ゴールを量産するベリンガム(写真:ロイター/アフロ)

補強の成功というのは、チームの強化を意味する。

レアル・マドリーが、好調だ。リーガエスパニョーラで、第10節終了時点で首位に位置。チャンピオンズリーグでは、グループCのトップに立っている。

この夏にマドリーに移籍したベリンガム
この夏にマドリーに移籍したベリンガム写真:ムツ・カワモリ/アフロ

マドリーは今夏、ジュード・ベリンガムを獲得。彼の獲得に際して、移籍金固定額1億300万ユーロ(約154億円)をボルシア・ドルトムントに支払った。

そのベリンガムが、序盤から大活躍している。

得点を喜ぶマドリーの選手たち
得点を喜ぶマドリーの選手たち写真:ムツ・カワモリ/アフロ

ベリンガムは開幕からの公式戦10試合で10得点をマーク。これはクリスティアーノ・ロナウドが2009年に記録した以来のレコードとなった。加えて、ベリンガムは得点だけの選手ではない。10ゴール+3アシスト(10月のインターナショナルウィーク前の数字)で、欧州5大リーグで最もゴールに絡むMFの選手になった。

■アンチェロッティのプラン

「いつもと同じだ。あのようなタイプの選手をコントロールするのは、相手の守備陣からすれば簡単ではない」とはベリンガムが今季10点目をマークしたオサスナ戦後のカルロ・アンチェロッティ監督のコメントである。

「ベリンガムは固定されたポジションでプレーしていない。それが彼にアドバンテージを与えている。チームメートと良いコンビネーションを見せ、ゴール前に顔を出す。ただ、スタートから驚くべきパフォーマンスを披露している。この得点というのは誰も予想できなかっただろう」

マドリーのアンチェロッティ監督
マドリーのアンチェロッティ監督写真:ロイター/アフロ

アンチェロッティ監督は今季、プレシーズンから新たなシステムの“開発”に取り組んでいた。【4−3−3】をやめて、【4−4−2】の中盤ダイヤモンド型の布陣を選択した。

近年のマドリーは【4−3−3】を基本布陣にしていた。カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチの三銃士が中盤に君臨するシステムは攻守において安定感を示していた。だが昨年夏、カゼミーロがマンチェスター・ユナイテッドに移籍すると、綻びが生じ始める。昨季、マドリーがラ・リーガとチャンピオンズリーグのタイトルを逃したのは、カゼミロ退団とシステム維持とは無縁ではない。

そういった状況で、ベリンガムが加入した。アンチェロッティ監督はベリンガムをトップ下に据え、システムチェンジを行う決断を下す。この「ベリンガム・システム」において、肝は当然ダイヤモンド型の頂点に配置されるベリンガムだが、その背後をカバーするフェデリコ・バルベルデ、エドゥアルド・カマヴィンガ、オウレリアン・チュアメニの存在を忘れてはならない。

■ベリンガムのキャラクター

ただし、ベリンガムの活躍がなければ、マドリーはシステムを戻していた可能性がある。

そう、ベリンガムだ。彼のピッチ内のパフォーマンスとピッチ外のキャラクターが、マドリーに新たなエネルギーを注入している。

「ベリンガムの大胆さと成熟性には驚かされた」と語るのはバーミンガム・シティで当時16歳のベリンガムを指導したパコ・エレーラ氏(バーミンガムでペップ・クロテット監督のアシスタントコーチ)だ。

「私は若い選手との距離を縮めて、彼らをサポートしたいと考えている。セルタ時代には、イアゴ・アスパスに手を焼いた。彼はストリートから出てきたような選手だったから、メンタリティーを含め、いくつか変えなければならないことがあった」

「だがベリンガムの場合、非常に成熟していた。ピッチ内では、怖気付いてすぐ味方にパスしてしまう、といったことがなかった。ピッチ外では、ベテランの選手たちを尊重して、少し引いたところにいた。だから私は彼がバカなことをしないように気を付けていたのだが、結果的にベリンガムとはフットボールの話をしていれば良かった」

■成熟した若手たち

成熟したヤング・プレーヤー。だからこそ、ベリンガムはマドリーで即座にフィットできた。

ただ、ベリンガムに限らない。エドゥアルド・カマヴィンガ(20歳)、ロドリゴ・ゴエス(22歳)、ヴィニシウス・ジュニオール(23歳)、 チュアメニ(23歳)と現在のマドリーには若い選手が揃っている。

なお、この選手たち、実は仲が良い。チャンピオンズリーグのウニオン・ベルリン戦後には、ヴィニシウスが彼らを誘い、ディナーを共にしている。

ベリンガムとヴィニシウス
ベリンガムとヴィニシウス写真:ロイター/アフロ

スペインの一部メディアで、ベリンガムはviejoven(ビエホベン)と称されている。viejo(ビエホ/老いた)とjoven(ホベン/若い)をミックスさせた造語だ。

若く、老いているーー。老いている、というより、成熟しているわけだが、いずれにせよビエホベン・ベリンガムの今後の挑戦に注目したい。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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