難事続きの凱旋門賞、武豊騎手が騎乗予定だったジャパンは回避。V3狙うエネイブルは重馬場を克服できるか
無事、発走予定の凱旋門賞
凱旋門賞(GI、芝2400m、仏・ロンシャン競馬場)はかねてからの予定どおり、現地時間10月4日16時5分(日本時間で10月4日23時5分)に発走予定だ。
フランスでは新型コロナウイルスの影響を受け、3月17日から5月10日まで競馬開催を中止していた。凱旋門賞は毎年10月最初の日曜日に行われるが、ロンシャン競馬場はパリの郊外にあり春の時点ではその開催も危ぶまれていた。それを思えば、このコロナ禍で凱旋門賞が本日予定どおり開催できるだけでも御の字としなければならない、とも感じる。
■凱旋門賞が行われる仏・ロンシャン競馬場による凱旋門賞のプロモーション
連日の降雨による馬場悪化
しかし、難事は続く。昨年も重馬場で行われた凱旋門賞だが、今年も直前は雨が降り続き馬場が悪化している。これを理由に有力馬の1頭だったラブ(牝3、愛・A.オブライエン厩舎)は1日の時点で出走を取り消した。JRAでは出馬表が出た後に馬場悪化を理由に出走を取り消すことはできないが、フランスではレース当日まで認められているのだ。
■2017年凱旋門賞(フランス語) 優勝は当時3歳のエネイブル
■2018年凱旋門賞(フランス語) 優勝は連覇を果たしたエネイブル
嵐接近により、馬場悪化が続く
その後もパリは雨が降り続く。
フランスでは芝コースの馬場状態は馬場の硬度の測定値により10段階に区分されるが、主催者であるフランスギャロの発表によれば、10月3日現在の馬場状態は10段階中9段階目の「LOURD」(日本での不良に相当)。レース当日の馬場状態予測は10段階中8段階目の「COLLANT」(日本での重に相当)とのことだ。
昨年の凱旋門賞は10段階中7段階目の「TR SOUPLE」(日本での重に相当)と1段階重い。
6歳、心身ともに母を意識するエネイブル
昨年2019年の凱旋門賞では、2017年と2018年に連覇したエネイブル(牝6、英・J.ゴステン厩舎)の3連覇が注目されたが、パワフルな走りで重馬場を克服したヴァルトガイストにゴール前で差し切られている。
エネイブルは今年7月にキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(GI、芝2390m、英・アスコット競馬場)を勝っているが、このレースは登録馬の回避が相次いで3頭立てであった。心身ともに"母"を意識させる年齢に達したことで馬体調整も課題とされている。
エネイブルが最初に凱旋門賞を制したのは3歳の秋。このレースは定量戦で斤量は古馬は59.5キロ、3歳馬は56.5キロ(牝馬は1.5キロ減)。そのため、3歳馬が有利であると知られている。当時、3歳牝馬であったエネイブルは斤量55キロで、ライバルの古馬牡馬とは4.5キロの差があったが、それは彼女自身のポテンシャルの高さと同時に斤量の有利さもあったとされた。
しかし、その翌年はエネイブルも古馬になり58キロを背負って優勝し、その強さを強く印象づけることになる。
そして、今年。最初の凱旋門賞から丸3年が経った。一般的に牝馬は、年齢を重ねると心身ともに母馬の仕様に変わるため、馬体重が落ちにくくなったり闘争心が衰えたりする。実際、今シーズンのエネイブルはレースに向けて馬体重を落としにくくなっていると聞く。さらに、この重馬場はエネイブルといえど、決して楽ではないはずだ。昨年のリベンジを狙う彼女の走りに注目したい。
■2019年凱旋門賞 (フランス語) 優勝馬ヴァルトガイスト(2着エネイブル)
悲報…ジャパンら4頭の出走取消。これによる人気の変化は?
そして、日本時間の4日早朝、とても残念なニュースが飛び込んだ。武豊騎手が騎乗を予定していたジャパンをはじめ、モーグル、サーペンタイン、ソヴリンらA.オブライエン厩舎の管理馬である4頭が出走を取り消した。管理厩舎で使われている飼料への禁止薬物・ジルパテロールの混入が判明し、出走時の検体で陽性反応が出る恐れがあるためだ。
■主催者フランスギャロのTwitter 出走回避の4頭のジョッキ―の表記が「NON PARTANT(パートナーなし)」となっている
これにより、さらにエネイブルへの人気集中が加速すると思われる。筆者はエネイブルと同厩舎のストラディバリウス(牡6、英・J.ゴステン厩舎)、日本でも御馴染のクリスチャン・デムーロ騎手が騎乗するソットサス(牡4、仏・JC.ルジェ厩舎)に注目している。