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外出制限の英米が「日本のラジオ体操」に注目。オリンピック開会式の経費削減にラジオ体操はいかが

谷口輝世子スポーツライター
(写真:アフロ)

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が22日、新型コロナウイルスの影響で延期された東京大会について、経費節減に努めて開会式の内容や演出を大幅に変更する意向を示した。共同通信が伝えている。

もともとお金がかかり過ぎることが指摘されてきたオリンピック・パラリンピック。延期が決まったことで追加費用がかさむことは明らかだ。

筆者はオリンピック史研究の南ユタ大学のデーブ・ラント准教授にメールで取材をし、第二次世界大戦直後の1948年のロンドン大会は、食料、設備などが不足するなか、縮小して行われたことを教えてもらった。3月30日付で発表した記事にも、新型コロナウイルスの影響で、日本だけでなく、どの国も経済的な困難に直面しているのだから、当初の予定から縮小して開催することは決して恥ではないと書いた。

森会長も開会式の内容や演出を大きく変更する意向だというから、セレモニーの経費削減策として、出場する選手たちとともにラジオ体操をすることを提案したい。

なぜか。

日本でも緊急事態宣言により、不要不急の外出は避けなければいけないとされている。英国や米国(州によって違いはあるとはいえ)でも、同じように、外出が制限され、子どもたちは家で学習をし、多くの大人が在宅で仕事をしている。

通勤や通学もなく、家にいなければいけない毎日では、一日のリズムをつかみにくく、運動不足にもなりやすい。

そこで注目されているのがラジオ体操なのだ。

英国では3月30日に政府外公共機関の「スポーツ・イングランド」が、音声の指示にあわせて10分間の体操をするプログラムをスタートさせた。同日のテレグラフ電子版は、日本のラジオ体操にインスパイアされて作られたと伝えている。

英国版は、高齢者を対象としており、動画でデモンストレーションしているのも高齢者だ。家庭の部屋のなかで撮影されており、日本のラジオ体操と同じように座ったまま体操する方法も示している。BBCサウンズからは音声だけを聞くことができ、ダウンロードも可能。

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メディカル・ニュース・トゥデーというウェブサイトでも、おすすめの徒手体操として日本のラジオ体操が紹介されている。「日本では1928年から朝の運動の定番になっている」と動画を貼り付けて解説。

米国でも3月下旬には、ミネソタ州で、隣近所の人が、お互いに距離を保った状態で外に出てきて、ラジオ体操をしたことが地元紙に伝えられている。

ラジオ体操は立っている人も、座っている人もできる。屋内の狭いスペースでもできる。

英国の「スポーツ・イングランド」が作成した動画はBGMは流れているが、あのラジオ体操のようなピアノ演奏はない。音楽によっても、どのような動きをすればよいのかが分かるラジオ体操は優れものだ。

日本が世界に誇れる運動のひとつで、何よりも道具がいらず、お金もかからない。コストを抑えなければいけない開会式にぴったり!というのは飛躍しすぎだろうか。

今、華美なセレモニーをするよりも、思い切って費用を抑えるほうが、国内だけでなく、海外からも支持を得られるはず。世界から共感を得られるほうが、出場するアスリートのすばらしいパフォーマンスにもつながるだろう。だから、私はラジオ体操を提案する。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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