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浜辺美波が透明感を失くさない理由 「魂を汚れさせない気持ちを大事にしています」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/河野英喜 ヘア&メイク/George スタイリング/瀬川結美子

首相官邸のクラスターで総理大臣が急死した日本で、AIホログラムで復活した偉人たちが最強内閣を作る。奇想天外なベストセラーを映画化した『もしも徳川家康が総理大臣になったら』で、浜辺美波が新人記者役で主演している。大役が続く中での取り組みと、この夏のリアルタイムな心境を語ってくれた。

「黙る」を目標のひとつにしました

――6月のインスタで「最近やっと2024年の目標が決まったり増えたりしている」とありました。その目標は聞かせていただけますか?

浜辺 最初は「家をきれいに保つ」という今年の目標があって、さらにふたつ目で「しっかり努力」をしたいなと。本でも何となく読んで「面白かったな」だけでなく、自分がどう考えたか、アプリで文字化していこうと思っています。みっつ目の目標は「黙る」です(笑)。

――どういうことですか?

浜辺 私はしゃべりすぎてしまうところがあって。全然中身のない話で間を埋めてしまうのが、自分のイヤなところです。特に初対面の方があまり得意でなくて、黙ってしまいそうになると、聞かなくていいことを聞いたり、言わなくていいことを言ったりしてしまう。そんなことが多々あるので、間を怖がらずに静かにしようと思っています。よっつ目は「人の目を見る」。それも私の苦手なことなんです。

――浜辺さんは昔は、そんなに話すタイプでなかった印象がありますが、今はむしろ話しすぎるんですね。

浜辺 根本は変わっていないと思います。話すのが苦手なので、余計に話してしまうという……。

部屋が整うと仕事にもいい影響が出そう

――ひとつ目の「家をきれいに」は、もう実行しているんですか?

浜辺 ワンちゃんがいるので散らかりやすいのですが、夜に掃除をする習慣をつけました。モップも掛けて、だんだんきれいにできている気がします。あとは、ものを減らしていて。

――いわゆる断捨離ですか。思い切って捨てたものも?

浜辺 「これ要る?」みたいな細々としたものです。賞味期限が切れそうなコーヒーを飲み切ったり。棚の中とか、そのままでも支障はないけれど、整理するようにしています。部屋が整うと、お仕事にもいい影響が出そうな気がするので。

――昔の台本はどうしていますか?

浜辺 棚がもうパンパンで、実家に送っています。

――魂を込めたもので捨てるのも忍びないでしょうし、ドラマだと1作品で10冊とかになりますよね。

浜辺 そうなんです。最近は映画が続いて、1冊ずつしか増えていなかったのですが、(朝ドラの)『らんまん』を撮影していたときは、台本の数も多くなったので、すごく幅を取りました。

久しぶりにミステリーに触れたくて

――「しっかり努力」ということでは、『もし徳』で浜辺さんが演じた西村理沙が坂本龍馬に「正直で努力家」と言われていました。

浜辺 このお仕事って、努力の仕方が難しいと思っていて。舞台を観に行かせていただいたり、エンタテイメントに興味を持って調べて、深く掘っていけたらいいなと。読書でも私はもともと物語が好きなので、プライベートとお仕事を分けすぎず、楽しむことを忘れないようにしたいです。

――舞台でも本でも、最近刺激を受けた作品はありますか?

浜辺 自分が作品に入っているときは本は読めなくて、終わってからや終盤で台詞がほぼなくなってから、読み始めています。今、寝る前とかにずーっと読んでいるのは、有栖川有栖先生の「江神二郎シリーズ」です。

――定番の人気作ですね。

浜辺 もともとミステリーが好きだったので、久しぶりに触れたいなと思いました。構成が素敵で日本語もきれいなんです。状況説明が終わったあと、「ここまでですべての答えは出ている。犯人は誰だ?」みたいな読者への挑戦が入るのもオシャレで、シビれます。

そろそろ髪を伸ばさないと変わり映えしなくて

――そのインスタでは、髪について「はやく伸びますように」ともありました。

浜辺 伸ばしたいです。短い髪型で何作か撮っているので、そろそろ伸ばさないと変わり映えしないかなと。原作に合わせたりしない限り、今の長さを活かすので、現状キープで伸ばす機会がないんです。作品の合間やかつらのお仕事のとき、必死に伸ばしています(笑)。

――作品を抜きにすれば、長いほうがお気に入りなんですか?

浜辺 楽ちんなのは短いほうで、中間の肩に付くくらいの長さが一番苦手です。同じような髪型しかできないし、メイクさんにも苦労を掛けるんです。タートルネックを着ると、中に入ってしまったり。自分でも気になってしまうので、長いか短いか、どっちかがいいです。

――先日、ある女性タレントさんの取材で「理想の顔」という話になって、「浜辺美波さんが外ハネの頃に髪型をマネしていた」とのことでした。

浜辺 嬉しいです。当時は顔を覚えてもらうために、長い間ずっと同じ髪型をしていました。今はちょっと伸びて、その頃と近づいてきたので、自分では「これは見飽きたな」と思ってしまって(笑)、早く伸ばしたくなるんです。でも、そう言ってもらえると、苦手な長さのあの髪型にしていて良かったと思います。

苦手だった野菜が最近は大好きに

――外見についてだと、こんなことを聞かれても困ると思いますけど、浜辺さんは何でそんなにきれいなんでしょう? ずっと透明感を失くさないというか。

浜辺 日焼け止めのおかげだと思います(笑)。でも、最近すごく感じるのが、生きざまみたいなものは出るんだろうなと。どんなときでもまっすぐ、魂は汚れさせないぞという気持ちを大事に、人にイヤなことをしないとか、そういう積み重ねで、内面が外見に出る気がします。

――浜辺さんからそういう話をうかがうと、すごく納得します。特別な美容法があるわけではないと。

浜辺 それも頑張っています(笑)。外ロケも多いので、日焼け止めをこまめに塗って、シミにならないように徹底したり。食べ物も、それほどストイックではないですが、いちおう気をつけています。

――野菜を多く摂るとか?

浜辺 はい。野菜はもともと苦手だったのが、最近は大好きすぎて、すごい量を食べています。年齢もあるのか、体が野菜を求めていて。お弁当だと野菜が少ないし、「食べなければ」というより「食べたい」と思うようになったので、良かったです。

――野菜の中でも、特によく食べているのは?

浜辺 たけのこやきのこ類が好きで、エリンギをずっと食べています。野菜以外では、メカブもお昼ごはんによく食べます。

偉人も1人の人間だったと学びました

――『もし徳』では、徳川家康を始め多くの歴史上の偉人が大臣となって登場します。浜辺さんは歴史や偉人に興味ありました?

浜辺 学生時代は社会科が一番好きな科目でした。でも、人物について詳しかったり、教科書以外のことを調べることはまったくなくて。今回の映画で知ったことがたくさんあって、楽しかったです。

――タイトルになっている徳川家康については、どんなイメージがありました?

浜辺 撮影が進んでから、理沙が家康さんについて詳しくなっていくように、自分でも勉強していきました。学ぶ前は、家康さんはドラマや映画のキャラクターとしては観ていても、人間味はあまり感じない、ヒーローのような存在でした。今回歴史を学んで本を読んで、偉大なことを成し得た人も1人の人間ではあったんだと、教科書の中とは違う視点で見ることができました。

――歴史の面白みも感じましたか?

浜辺 感じました。家康さんが天下統一した史実の裏で、どんな人生があって、成し遂げようと奮闘したのか。それを知ったら、映画の家康さんが東京の街を見下ろすシーンも、違って見えた気がします。

大御所の皆さんの中でニュートラルに

――以前の取材では、大河ドラマの『光る君へ』が楽しみとのお話がありました。『もし徳』でも、キャラは違いますが、紫式部が文部科学大臣として登場します。

浜辺 観月(ありさ)さんの紫式部が雅で、とてもきれいでした。でも、十二単は大変そうです。当時の人も肩こりで苦労したんだろうなと思いながら、見ていました(笑)。

――劇中で特に気になった偉人はいましたか?

浜辺 皆さん本当に素敵だった中で、聖徳太子さんを女性の長井短さんが演じるのは、驚きがありました。一番昔の人物なので自由度が高くて、他の偉人さんたちとは異質な感じがします。おひげが似合っていて、眉毛がないのもミステリアス。しゃべっていてもちょっとユルさがあって。長井さんが持ってらっしゃるものと合わさって、不思議な雰囲気で、かわいらしさもあるのがすごく好きでした。

――そんな中で主演を務めました。

浜辺 大御所の皆さんの中で、ニュートラルに現場に行っていました。純粋にお話を聞きたい気持ちもあって、大きな待ち部屋で、皆さんとちょっと会話をするのも楽しかったです。

普通に演じたら逆に目を引くだろうなと

――新人記者の西村理沙を演じるうえでは、どんなことを意識しました?

浜辺 現代人の役が少ないので、普通のまま演じても、逆に目を引くだろうなと思いました。偉人さんたちは皆さん、扮装もしてキャラも強くて、どう個性を立たせていくか、大変だったと思います。私はお客さん目線で等身大でいけたらと、あえて役作りをするより、物語に飲み込まれていきました。驚きとかを素直に表現できたらいいなと。

――報道記者にはどんなイメージがありました?

浜辺 政治部の方とはあまりお会いする機会がないのですが、報道の方には取材していただくこともあって、イメージは何となくできました。カッチリしたスーツを着て、大きいカバンを持っていて。演じることにあまりハードルは感じませんでした。

――参考にニュース番組を観たりもしませんでした?

浜辺 しなかったです。記者の方でも、たぶんそれぞれ違う心持ちや個性があるので。理沙は新人ということで作り込みすぎず、学んでいくことを大切にしました。

アナウンサーさんは大変だと思います

――スクープを獲りにいく仕事に、浜辺さんだったらやり甲斐は感じられそうですか?

浜辺 私には難しいかなと思います。切り込んでいくのは、計り知れない勇気が要る。単に面白さだけではできない、大変な職業に感じました。

――理沙が異動を切望しているアナウンサーについては、どうですか?

浜辺 理沙はあまり深く考えてはいなくて、ライトな感覚でなりたいと言っているんだろうなと思いました。実際は大変そうな気がします。

――どういうところで?

浜辺 表に出ていても、会社員でいらっしゃる難しさがあるように感じます。普通の社員さんとは違って、イメージを背負わないといけないプレッシャーもすごいのだろうなと。裏ではたくさん努力をされてらっしゃると思うと、頭が上がりません。

野村萬斎さんの発した台詞が体中に響いて

――偉人たちの言葉には現代人への教訓もありました。理沙が聴き入るシーンなどで、浜辺さん自身に刺さったものもありました?

浜辺 クライマックスの家康さんの演説は胸に来ました。苦しくなったし、救われた気もしたというか。萬斎さんが発された言葉が、体中に響いてくる感覚がありました。私は政治や日本に対して、特に思想があるわけではありません。それでも考えていかなければいけないと、語り掛けられて。理沙としても自分にも、指針になるように思いました。

――坂本龍馬は「不安とは何もせぬものが罹る病」とも言ってました。

浜辺 その言葉も素敵です。それが響くということは、たぶん自分の中に不安や足りてない部分があるからだと思います。本当に名言が多くて、人によって響く言葉も映画の感想も全然違う気がします。賛否両論あるかもしれませんし、そういう意味でも皆さんの感想が気になります。

自分の中で熱狂に触れると嬉しくなります

――偉人内閣に国民が熱狂するところでは、何か思うことはありました?

浜辺 私は熱狂しづらい性格かもしれません。最近はミュージカルを好きになって、マネージャーさんがおすすめの作品や宝塚を観に行っていて。自分の中でちょっとでも熱狂に触れると、すごく嬉しくなります。熱狂している人を見るのも好きで、人間ってこんなにも夢中になるものがあるんだと思うと、面白くなります。

――ミュージカルにもそういうものを感じて?

浜辺 宝塚でも、110年の歴史の中でどの層にどう需要があって進んできたのかにも、興味深いものがあります。先ほどの「努力」のことでもお話しした通り、私はエンタメをただテンションが上がるとか、癒されるというふうに観ていて。これからはちょっと視点を変えて、感想をしっかり持って、自分はどこが好きなのか分析していきたいと思っています。

中学時代の先生がヒーローでした

――『もし徳』は「アルティメットヒーローエンタテインメント」と謳われています。浜辺さんにとってヒーローのような存在はいますか?

浜辺 石川の中学の先生です。担任と副担任の先生で、いまだに連絡を取っています。学校とお仕事を両立する中で、サポートもしてもらいましたし、授業もすごく面白くて。副担任の先生が社会科の先生で、人の話を聞くことに興味を持たせてくださって、こんな大人になりたいと尊敬にも繋がりました。私が20歳になってからは、お会いできてないのですが、お酒を飲んで話を聞きたいです。

――その先生の教えが、座右の銘になったりもしています?

浜辺 ひとつの言葉というより、その先生がたくさん担任を持ってきた中で、捕まった生徒もいたり、吐きながら学校に行ったこともあったそうです。だけど、「1人の生徒も死んでないことが誇り」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。教育者として筋を通しているプライド。その背中を見せてもらって、人のためになる仕事は何てカッコいいんだと思っていました。

――映画では、理沙に「自分のやるべきことを見つけた」という台詞もありました。浜辺さんがやるべきことも見つかっていますか?

浜辺 難しいですね(笑)。でも、仕事を続けていくために努力をすることは、ずっと変わりません。私はこの仕事しかしたことがなくて、他の人生は想像もつきません。続けていきたい想いがあるなら、後悔しないようにいろいろなことに挑戦したいし、学ぶ姿勢を崩さないようにしたいです。

夏の思い出は暑いロケで倒れかけたこと(笑)

――『もし徳』が公開されるこの夏は、どう過ごしますか?

浜辺 夏は毎年、お祭りに行きたい、花火をしたいとか言ってはいるのですが、いまだに東京のお祭りには行ったことがありません(笑)。夏は意外と、業界的には繁忙期なんです。なので、なかなか夏らしいことはできません。

――小さな夏のお楽しみもありませんか?

浜辺 いつも何をしているんだろう? かき氷を食べに行こうとしても、東京のおいしいお店は並ばないと入れないし、早く閉まってしまって。

――では、夏の思い出も仕事絡みですか?

浜辺 上京してからは、ロケで暑すぎて倒れかけた思い出しか浮かびません(笑)。でも、暑いロケが終わって、アイスクリームを食べるのは楽しいです。ラムネの差し入れが嬉しかった記憶もありますし、家に帰ってから、キンキンに冷えたビールを飲むとおいしいです。それだけが夏の楽しみです。

――「それだけ」というのも寂しくないですか(笑)?

浜辺 なので、今年こそはお祭りに行きたいです。怖い夏ロケはカリカリ梅を食べながら頑張ります(笑)。

撮影/河野英喜

Profile

浜辺美波(はまべ・みなみ)

2000年8月29日生まれ、石川県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞。同年に映画『アリと恋文』に主演して女優デビュー。2017年に主演した映画『君の膵臓をたべたい』で日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。近年の主な出演作は映画『思い、思われ、ふり、ふられ』、『シン・仮面ライダー』、『ゴジラ-1.0』、『サイレントラブ』、ドラマ『私たちはどうかしている』、『ドクターホワイト』、『らんまん』など。7月26日公開の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』、11月22日公開の『六人の嘘つきな大学生』に主演。

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』

7月26日公開

監督/武内英樹 脚本/徳永友一 配給/東宝

出演/浜辺美波、赤楚英二、GACKT、観月ありさ、竹中直人、野村萬斎ほか 

公式HP

(C)2024「もしも徳川家康が総理大臣になったら」製作委員会
(C)2024「もしも徳川家康が総理大臣になったら」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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