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「生ごみ出しません袋」「燃やすしかないごみ」年間2兆円超のごみ処理減らす全国の自治体 少ない1位は?

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(提供:イメージマート)

2023年3月30日、環境省が、一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度/2021年度)を発表した(1)。一般廃棄物の処理コストは年間2兆1,499億円。前年度より159億円増えた。

毎年発表しているのが、1人1日あたりのごみ排出量が少なかった自治体だ。人口区分別に、10万人未満、10万以上50万人未満、50万人以上の3区分で発表している。最新のランキングはどうだっただろう。

人口50万人以上では八王子市が1位

人口50万人以上の区分では、東京都八王子市が1位、2位が京都市、3位が愛媛県松山市だった。前年度(令和2年度/2020年度)は、京都市が1位、愛媛県松山市が2位、東京都八王子市が3位だった。ベスト10は、多少の入れ替わりはあるものの、前年度(令和2年度)と変わりはない。

環境省の発表資料を基にYahoo! JAPAN制作
環境省の発表資料を基にYahoo! JAPAN制作

八王子市は、平成29年度(2017年度)、平成30年度(2018年度)、令和元年度(2019年度)と、連続して1位を獲得している。筆者が八王子市主催の食品ロス削減の講演へ行った際も、市民団体らが、食品ロスを含む生ごみを活用したコンポスト(堆肥)の作り方や、食品ロスになりそうなものを家庭から寄付するフードドライブの案内を積極的に実施していた(2)。

京都市は、20年間かけて、2000年度には82万トンあったごみを41万トンまで減らした。食品ロス削減はもちろん、全体のごみを減らすための施策を活発に行っている(3)。

松山市は、剪定した枝や、学校給食の残さなどは、すべて資源として活用している(4)。以前、9年連続で、ごみ少ないランキングの1位を獲得したこともあり、ランキング上位の常連だ。

人口10万人以上50万人未満では静岡県掛川市が1位

次に人口の多い区分では、静岡県掛川市が1位、東京都日野市が2位、東京都小金井市が3位だった。この区分でも、ベスト10は2020年度と変わりない。

環境省の発表資料を基にYahoo! JAPAN制作
環境省の発表資料を基にYahoo! JAPAN制作

静岡県掛川市は、2010年度と2011年度にも1位を獲得している(5)。廃棄物行政を研究してきた山谷修作氏の著書には、2006年11月に始まった、掛川市の「ごみ減量大作戦」の取り組み含め、8ページにわたって解説されている(6)。2008年1月にはごみの指定袋に記名する方式を導入し、排出者を「見える化」している。また、「民でやれることは民でやる」とし、(大量の)剪定枝の資源化や古紙の資源化は、市ではなく、民間が行なっている。東隣に位置する菊川市と構成する「掛川市・菊川市衛生施設組合」が廃棄物処理施設「環境資源ギャラリー」を運営し、さまざまな取り組みを長年継続してきた。

人口10万人未満では長野県南牧村が1位

人口10万人未満の区分では、長野県南牧(みなみまき)村が1位だった。2位が長野県川上村、3位が徳島県神山町。

環境省発表資料を基にYahoo! JAPAN制作
環境省発表資料を基にYahoo! JAPAN制作

長年、1位を保っていたのが長野県川上村だ(5)。川上村は、生ごみを自治体が回収しておらず、住民による処理にまかせているのが、ごみを少なくしている要因だ。なぜなら、食品ロスも含んでいる生ごみは、重量のうち80%以上が「水」だ。水分が多ければ、必然的に重くなる。また、燃えにくいので、焼却処分には大量のエネルギーやコストがかかる。南牧村も川上村と同様で、乾かした生ごみであれば可燃ごみに入れてもいいが、基本的には住民の処理にゆだねられている(7)。

「燃やすしかないごみ」福岡県柳川市や京都府亀岡市

福岡県柳川市は、「燃やすごみ」というごみ袋の名称を、2021年、「燃やすしかないごみ」に変更した(8)。1枚20円だったごみ袋は40円にした。その結果、可燃ごみが10%も減ったそうだ(9)。京都府亀岡市は、2023年4月から、「燃やすしかないごみ」「埋め立てるしかないごみ」と名称を変更した(10)。資源化を促進するためだ。

「燃やすしかないごみ袋」「埋め立てるしかないごみ袋」京都府亀岡市の公式サイトより
「燃やすしかないごみ袋」「埋め立てるしかないごみ袋」京都府亀岡市の公式サイトより

京都府亀岡市は、全国で初めてレジ袋を禁止した条例でも知られる。京都府亀岡市の名物、保津川下りでは、条例以降、レジ袋はほとんど見かけなくなったそうだ(11)。

長野県上田市や須坂市では、「生ごみ出しません袋」がある。基本的にごみ袋は有料だが、生ごみを堆肥化するなどして自宅で処理する場合、住民に無償で提供している(8)。

このような取り組みを続けることで、年間2兆1,449億円もの税金(=われわれが納めた税金の結集)は何十%も安くなるはずだ。なぜなら、前述の通り、食品ロスを含む生ごみは、その重さの80%以上が水だからだ。燃やすのではなく、資源として活用すれば、ごみ処理費に費やす税金も減り、福祉や雇用、教育、医療など、ほかの用途に税金をまわすことができる。「ごみ」と名付けたのは人間であって、そもそも生ごみは「資源」なのだ。

参考資料

1)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について(環境省、2023.3.30)

https://www.env.go.jp/press/press_01383.html

2)あなたの住む街はランキングに入ってる?環境省が最新(H29年)ごみ排出量発表、八王子市の優れた取組み(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2019.3.29)

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20190329-00120035

3)なぜ燃やす?2兆円超、8割が水のごみも 焼却ごみ量・焼却炉数ともに世界一の日本(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021/4/6)

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20210406-00230907

4)なぜ松山はごみが少ないのか?家庭のごみを減らす全国トップレベルの秘密を探る(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021.12.13)

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20211213-00272277

5)全国ごみ少ないランキング1位の京都市、静岡県掛川市、長野県川上村 なぜ?コロナの影響も(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2022/4/5)

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20220405-00289620

6)『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』山谷修作著、丸善出版

7)ゴミの分け方と出し方 袋には必ず名前を書いてください(南牧村)

https://www.minamimakimura.jp/content/files/sangyoukensetsu/kankyoueisei/gomi-carender/2022gomicarender-bunbetuhouhou.pdf

8)「生ごみ出しません袋」「燃やすしかないごみ」年間2兆円のごみ処理減らす自治体の取り組み(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021.5.30)

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20210530-00240328

9)滴一滴 「燃やすしかないごみ」「埋め立てるしかないごみ」(山陽新聞朝刊、2023.1.26)

10)亀岡市指定ごみ袋が新しくなります(京都府亀岡市、2023.3.30)

https://www.city.kameoka.kyoto.jp/soshiki/22/47361.html

11)「かわる/かえる」レジ袋禁止条例(京都)船頭の思い 行政動かす(愛媛新聞、2022.6.25)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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