裸のフィギュア役の衝撃から10年の佐々木心音。鬼才たちのミューズから、現在、そしてこれから
石井隆、瀬々敬久ら、いわゆる鬼才と呼ばれる監督たちのミューズとなってヒロインを務めてきた、佐々木心音。
近年では「娼年」や「愚か者のブルース」など、バイプレイヤーとしても確かな存在感を放つ彼女だが、今秋公開となる２本の主演映画「道で拾った女」と「クオリア」でみせる姿は、「演技者として新たに覚醒して、次なる領域に入ったのではないか」と思わせる。
それほど何かを予見させる女優・佐々木心音がそこにいる。
鮮烈な印象を残した2013年の「フィギュアなあなた」のドール役から本格的に女優のキャリアをスタートさせて約10年。新たな飛躍を予感させる彼女に「道で拾った女」と「クオリア」の両主演作について訊くインタビュー。
まずはいまおかしんじ監督と初のタッグを組んだ「道で拾った女」について佐々木に訊く。
『フィギュアなあなた』のときは、
オールヌードになるとか性描写があるとかもう意識していなかった
今回は本編インタビューに続く番外編。
「道で拾った女」の話から離れて彼女にこれまでのキャリアを少し振り返ってもらった。
冒頭で触れたように佐々木が本格俳優デビューを果たしたのは、「花と蛇」などで知られる鬼才、石井隆監督の「フィギュアなあなた」。
佐々木は、柄本佑が演じたオタク青年・健太郎が愛するフィギュアのココネを演じた。
通常は人形なので静止状態。ある瞬間は動き出すというこの役はかなりの難役。またオールヌードや濡れ場もありかなりの覚悟が必要な役だった。
その中で、この役を見事に演じ切っている。
当時のことを彼女はこう振り返る。
「よく『覚悟したでしょう』とか、『勇気が必要だったでしょう』とか、『なにかふっきれないとできないですよね』といったことを言われるんですけど、正直なところ、あんまりそういうことはなかったんですよね。
裸になることに関していうと、その前にグラビアをしていて、チョコレートを塗ったり、生クリームを塗ったりといったようなことをしていたので、なんか自分の感情も鈍っていたのかもしれない（苦笑）。
でも、グラビアをしているときも、その先に役者の道を見据えていて。その道に進む過程でのひとつの学びの場と考えていた。
だから、役者の道に入ったら、当然、裸になることを求められることはあるだろうし、性描写の場面に挑まなくてはいけないときもあるだろうと思っていました。
そういうお話しがきたら、きちんとできる女優になりたいなと思っていましたから、抵抗はなかったです。
だから、『フィギュアなあなた』のときは、オールヌードになるとか性描写があるとかもう意識していなくて、鬼才と呼ばれる石井監督の映画で、相手が柄本佑さんで、しかも役が自分と同じ『ここね』とつけていただけるなんて、『なんて光栄なの！』と浮かれていました。
ほんとうにのんきで陽気なもんでした（笑）」
20代で、これだけトリッキーな役を演じられたことは大きかった
現在30代に入ったが、20代のころはこんなことを考えていたという。
「もうやれることは全部やってやろうという気持ちでした。
役者さんはみなさんだいたいそうだと思いますけど、いろいろな役にトライしてみたい。
わたしもそうで自分に合うとか合わないとといった線を引かないで、なるべくいろいろな役を演じてみたいと考えていました。
で、おかげさまで『フィギュアなあなた』の印象も強かったこともあると思うんですけど、けっこうおもしろいトリッキーな役をいっぱいいただくことができました。
20代で、これだけ変わった役を演じられたことは大きかったですね。
今後に必ずや、つながってくると思っています」
どんな役を演じてもきちんとその役で生きられるような役者になれるように
そして迎えた30代、役者として新たな飛躍が感じられる。
今回の「道で拾った女」と、あまり間を置かずに公開となった「クオリア」では、その飛躍を予感させる演技を見せてくれている。
「そうですね。
20代は勢いに任せて突っ走った感じでしたけど、30代に入って、ちょっと立ち止まってみたというか。
コロナ禍に入ったこともあって、いろいろなことがストップして、自分自身と向き合わざる得なくなった。
そこで自分がほんとうにしたいことはなんなのか、そのためには自分はなにをしないといけないのか、突き詰めて考えました。
出た答えは、やはり演じることでした。役者の仕事にもっともっと邁進したい。その気持ちが強いことに気づきました。
そこで心が決まったというか。覚悟を決めてお芝居にきちんと取り組みたいと思いました。
いままでちゃらんぽらんにやってきたわけではないんですけど、もっともっと真剣に取り組みたい。
そう思ってコロナ禍は、いろいろな映像作品をみたり、自分で実際に映像を作ってみたりと、自分なりに勉強しました。
いま、地に足のついた役者が目標というか。
どんな役を演じてもきちんとその役で生きられるような役者になれるように日々奮闘中です。
今回の『道で拾った女』と『クオリア』は、そういう中で出逢った作品。
自分としてもこれまでとは違う姿をお見せできているのではないかと思っています」
(※番外編インタビュー終了)
「道で拾った女」
脚本・監督：いまおかしんじ
出演：浜田 学 佐々木心音
川上なな実 永井すみれ 東 龍之介 成松 修 川瀬陽太
全国順次公開中
筆者撮影以外の写真はすべて（C）2023レジェンド・ピクチャーズ
