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裸のフィギュア役の衝撃デビューから10年の佐々木心音。おなかが空きすぎて出てこなかったセリフとは?

水上賢治映画ライター
「道で拾った女」で主演を務めた佐々木心音   筆者撮影

 石井隆、瀬々敬久ら、いわゆる鬼才と呼ばれる監督たちのミューズとなってヒロインを務めてきた、佐々木心音。

 近年では「娼年」や「愚か者のブルース」など、バイプレイヤーとしても確かな存在感を放つ彼女だが、今秋公開となる2本の主演映画「道で拾った女」と「クオリア」でみせる姿は、「演技者として新たに覚醒して、次なる領域に入ったのではないか」と思わせる。

 それほど何かを予見させる女優・佐々木心音がそこにいる。

 鮮烈な印象を残した2013年の「フィギュアなあなた」のドール役から本格的に女優のキャリアをスタートさせて約10年。新たな飛躍を予感させる彼女に「道で拾った女」と「クオリア」の両主演作について訊くインタビュー。

 まずはいまおかしんじ監督と初のタッグを組んだ「道で拾った女」について訊く。全七回。

「道で拾った女」で主演を務めた佐々木心音   筆者撮影
「道で拾った女」で主演を務めた佐々木心音   筆者撮影

念願だったいまおか演出の感想は?

 前回(第六回はこちら)まで、ストーリーのこと、演じたのぞみのことなど、いろいろと話してくれた佐々木。

 では、念願だったいまおかしんじ監督の演出は、どういう体験になっただろうか?

「撮影の初日にいまおか演出の洗礼を浴びたお話しはしましたけど、それ以降も『ここでこうくるか!』『ここでこんなことを!』という演出の連続でしたね(笑)。

 たとえば、のぞみがラーメンを食べるシーンがあるじゃないですか。

 あのシーンは、のぞみがラーメンをおいしくかっくらう感じを出したいなと考えていたんです。

 偶然出会ったラーメン屋の店主が、借金で店を閉める前に最後に出してくれる一杯のラーメンをのぞみがすする。

 だから、なんか心にもおなかにもしみわたるような感じが出せたらいいなと考えたんです。

 それで当日の撮影がけっこう遅くなることが決まっていたんですけど、そういった感じを出したいから一食抜いた方がいいと思って。夕ご飯にお弁当が用意されていたんですけど、お断りして食べずに撮影に臨んだんです。

 だから、撮影に入ったときは、おなかがペコペコ(笑)。

 ちょっと頭が回らなくなるぐらいになってしまって、おなかが空いているから『早くラーメンが食べたい』という気持ちでいっぱい(苦笑)。もう意識がラーメンの方にいっちゃっている。

 で、このシーンというのがけっこう長いセリフのやりとりが続くシーンなんですよ。

 それが直前になって、いまおか監督からのぞみがラーメン屋でアルバイトをしていたことがあることを話した後、『チャッチャ』といいながら湯切りのまねをするアクションを入れようということになった。

 でも、おなかが空きすぎてしまって頭にうまくインプットできなくて。どうしても『チャッチャ』を忘れてしまう。

 『チャッチャ』をどうにか入れられたと思ったら、次のセリフが今度は出てこない(笑)。

 この『チャッチャ』の演出にはけっこう悩まされました。って、私が頭回らないほど食べなかったのが原因なんですけどね(笑)

 そのほかにもいろいろとあったんですけど、あとはわりとスムースに応じることができまして。わたしがけっこう自主的にアドリブを入れたところがいまおか監督の考えと合致するということもありました。

 だから、総じて楽しかったです。

 やはりいまおか流で、わたしが想像もしないような演出が入ってくる。

 それになにを出してどう応えるか。

 役者として試されるところはありますけど、その分、やり遂げたときは達成感があるし、やりがいもある。

 いまおか監督の演出によって自分でもまったく予想しない反応をしていたり、相手とのお芝居で化学反応が起きたりする。

 ほんとうに新鮮な体験でした。

 また、自分の新たな面も引き出していただけたかなと思っています」

「道で拾った女」より
「道で拾った女」より

浜田さんにはかなり助けられました

 共演の浜田学はどんな印象だったろうか?

「前にも少しお話ししましたけど、浜田さんは演じられた竜平に雰囲気が近いといいますか。

 憎めないところがあるすごくチャーミングな方で、撮影現場でもいい時間を過ごすことができました。

 それから、浜田さんにはかなり助けられました。

 さきほど、お話ししたように、わたしはいまおか監督の作品に出演するのが初めてでした。

 対して、浜田さんはもう何度もいまおか監督の作品に出演されていて、現場も体験されている。

 もう常連俳優さんなので、いまおか監督の繰り出す突飛な演出も馴れていらっしゃる。

 なんだったらいまおか監督に言われなくてもできちゃうぐらいだと思うんです。

 だから、わたしはもう浜田さんにおんぶにだっこで、『この人についていけば大丈夫だろう』と思っていました。

 浜田さんがいらっしゃったから、安心していまおかワールドに臨めたところがあります」

(※本インタビュー終了。ここまでに収められなかったエピソードをまとめた番外編を次回続けます)

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第一回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第二回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第三回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第四回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第五回はこちら】

【「道で拾った女」佐々木心音インタビュー第六回はこちら】

「道で拾った女」メインビジュアル
「道で拾った女」メインビジュアル

「道で拾った女」

脚本・監督:いまおかしんじ

出演:浜田 学 佐々木心音

川上なな実 永井すみれ 東 龍之介 成松 修 川瀬陽太

全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて(C)2023レジェンド・ピクチャーズ

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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