”コロナ後”初の世界戦で戴冠 ロマゴン、井岡一翔も属するSフライ級に新星登場か
6月23日 ラスベガス
MGMグランド ボールルーム・カンファレンス・センター
WBA世界スーパーフライ級タイトル戦
挑戦者
ジョシュア・フランコ(アメリカ/24歳/19勝(8KO)1敗2分)
3-0判定(115-112, 114-113x2)
王者
アンドリュー・マロニー(オーストラリア/29歳/21勝(14KO)1敗)
挑戦者の意外な完勝
“コロナ以降”では初の世界戦となったWBA世界スーパーフライ級タイトル戦は、王者、挑戦者が小気味よく打ち合う好ファイトとなった。
ガードを上げ、ジャブを突き、正攻法で攻めるマロニーはコンディションの良さを感じさせるが、技術の下地があるフランコも負けていない。2回には挑戦者が綺麗なショートアッパーを当て、ラウンドを重ねるごとに徐々にペースを掴んでいった。
フランコは8回残り1分では強烈な右もヒット。4連続KO中ながらもう一つパワーの感じられない王者を、終盤もより的確なパンチで追い詰めていく。
「4回が終わった頃には流れを掴み、相手がどんな選手かを見極められた」
試合後のそんな言葉通り、後半は絶えず自信満々に戦った24歳の挑戦者は10回に相手の左目を切り裂くと、11回には連打で決定的なダウンも奪った。
発表された採点は思いのほか接っていたが、実際にはフランコの完勝。内容的にもトップランクの新シリーズが始まって以降、ベストと言えるファイトだったのではないか。
“セカンダリータイトル”だとしても
もともとこの王座は、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が同級スーパー王者になったがゆえに、暫定王者だったマロニーが昇格したいわゆる“セカンダリータイトル”だった。このように微妙な経緯で誕生した王者が、幾つもの階級に溢れかえっているのが現在のボクシング界。もはや“セカンダリータイトル”だというだけで、自動的にその王座の価値が他のタイトルより低いとは思わない。大事なのは、相手の質、タイトル戦の環境と経緯、試合の内容だろう。
大きな注目を集めるプロスペクトではなかったフランコは、地道にキャリアを積み、この日のチャンスに辿り着いた。マロニーはハイレベルの王者と呼べなかったのは事実としても、サンアントニオ出身の24歳が相手主導の厳しい環境に飛び込み、見事に”Aサイド”を討ったことの価値は大きい。この勝利によって、群雄割拠のスーパーフライ級でもリスペクトされるはずである。
ゴンサレス、ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)、シーサケット・ソールンビサイ(タイ)、ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)、井岡一翔(Reason大貫)、田中恒成(畑中)・・・・・・etc。こういった列強たちよりも一段下の存在と目されるのは仕方ないにしても、彼らとの対戦が実現すれば興味深い。叩き上げの逞しさを持つフランコは、”Bサイド”から虎視淡々と再びの番狂わせを狙ってくるに違いない。
ライバル社との提携
双子の兄ジェイソンとともにアメリカ進出を目論んだマロニーにとって、米国デビュー戦で手痛い初黒星となった。
「今夜はベストの自分ではなかった」と語ったが、世界レベルでの馬力不足とディフェンス難を露呈した感もある。またリング上で力を証明するまで、厳しい評価を受けることだろう。昨夏、マロニーと契約を結んだばかりのトップランクとしても、ライバルのゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)の傘下選手であるフランコに王座を明け渡したのは残念だったに違いない。
もっとも、コロナでマッチメイクが難しい今だからこそ、こういった“クロス・プロモーション”の試合がメインで組まれることの意味は余計に大きい。
結果的にトップランク対GBPの激突は好ファイトになり、おかげで実に意義のある提携となった。7月からGBPも興行再開すればまた難しくなるが、非常事態の中で、両者の間により良い協力関係ができていくことを願いたいところだ。