節分・豆まきの心理学:子育てと心の健康・「見える化」と「外在化」
節分・豆まきには、心と体を元気にする秘密があります。
■節分・豆まき
各地で節分行事、豆まきが行われています。昔からの風習には、心理学的な意味のあるものの多くあります。つまり、私達の心身の健康に役立つからこそ、長く続いてきたとも言えるでしょう。
■悪いことの「見える可」と「外在化」
私達は、多くのことに悩み苦しみます。苦しすぎると、訳がわからなくなります。頭が混乱して、理性を失い、泣きたくなったり乱暴な言動が出たりすることもあります。
心が不安定なとき、問題を「見える化」することは、効果的です。
たとえば、自分の感情に名前をつけることも効果的です。自分の思いを、言葉に出す、文字にします。わけのわからない感情に名前をつけないと表現はできませんから、こうして表現するだけで、心が整理され、癒され、前向きになっていきます。
私達には、様々な不幸が襲ってきます。災害や病気やいろいろな不運があります。人は、訳のわからないものに、強い不安を感じ、どうすれば良いのかわからなくなります。
豆まきは、訳のわからないものを、見える「鬼」の形にして、追い出そうとしています。私達に襲ってくるかもしれない、不幸の数々を鬼として表し、自分たちにはそれを追い出す力があると表現しているのです。
人は、困難に襲われても、困難を乗り越えられると信じることができれば、不幸にはなりません。
「鬼」は、私達の心の中にも潜んでいます。小学校の豆まき行事などでは、そんなこともしています。自分の心の中にある、泣き虫や怠け心を鬼として表し、そんな自分の中の鬼をやっつけようと、豆まきをします。
弱点や欠点をもっていても、「お前はダメな子だ」とその人自身を否定せず、その悪い部分だけを直そうとするのを、「外在化」と言います。「本当は良い子なのに、心の中のこの悪い部分があるんだよね」という考え方の方が、人は良い子になれるのです。
■豆をまく、「鬼は外!」と叫ぶ
心が行動を生みますが、実は行動が心を作り出します。嫌なことを鬼として表した後は、効果的に追い出したいでしょう。自分だけの力ではできないかもしれませんが、節分には豆という強力な武器が与えられます。さしもの鬼も、豆にはかないません。
その不思議な力を持った豆を力を込めて投げる行動は、人に勇気を与えるでしょう。最初は怖い顔をしていた鬼役の人も、降参降参と逃げていきます。子どもなら大喜びですし、大人でもそんな行動は癒しと勇気を与えてくれます。
大きな声で「鬼は外!福は内!」とポジティブな内容のことを叫ぶのも、心の健康に役立つでしょう。普段はそんなことをしない人も、伝統行事の中ならできます。子ども達も、豆まき行事のときには、元気一杯に叫びます。
心理学の研究によれば、上を向いて、大きな声を出すだけでも、幸福感が高まることがわかっています。普段あまりにもうつむいて小さな声しか出していない人にとっては、さらに効果的でしょう。
■力士や有名人の豆まき
昔は、多くの家で豆まきが行われていましたが、最近は減っているでしょう。でも、各地の有名人の豆まきは行われていますね。自宅でできなくても、自分は大声で叫ばなくても、力士や有名人は力の象徴であり、それを見ている私達の代理でもあります。
彼らの力強い豆まきは、自分自身が豆まきをしているのに似た心理的効果をもたらすでしょう。
■伝統行事の活用
多くの伝統行事が、家族みんなで行ったり、地域全体で行ったりします。これは、よいコミュニケーションになり、良いコミュニティー作りに役立ちます。
様々な意見があり、昔とは違って配慮すべきことがたくさんあるでしょうが、上手に伝統行事を活用して、心身の健康とより良い人間関係作りに役立てたいと思います。奈良平安の時代から千年も続いてきた節分・豆まきの行事には、それだけの力があることでしょう。