節分の豆まきと妖怪ウォッチの心理学:「妖怪のせい」と言われたたら?:「鬼は外」と子供の叱り方伸ばし方
節分の豆まきと「妖怪ウォッチ」。「鬼は外」と「妖怪のせい」。どちらもとても心理学的。上手に活用して、子育てに役立てましょう。
■何でも妖怪のせい
「妖怪ウォッチ」のブームが続いています。その流行の中で、都合の悪いことは何でも妖怪のせいにしてしまう子どももいます。
以前書いた記事では、「妖怪のせい」は、当人を責めすぎない「外在化」という手法につながる話をしました。罪を憎んで人を憎まず。孫を叱るおばあちゃんが、「この手が悪いのね」と叱るようなものです。
<妖怪ウォッチ「何でも妖怪のせい」は良いこと?悪いこと?を心理学的に解説>(2014年9月)
「外在化」(この手が悪い、魔がさした、妖怪のせい)は、責任逃れではなく、しっかり反省するためのものです。また、自分を責めすぎて落ち込みすぎたり、自暴自棄になったりするのを防ぐ手法です。
ところが、やっぱり「妖怪のせい」を責任逃れに使う子もいるようです。ブームが広がりすぎて、大学生でも冗談で言う人がいます。大人の犯罪者でも「刑事さん、私が悪いんじゃなくて、この手が悪いんです」んなて言う人もいます。責任転嫁を続けると、反省も成長もできません。
自信がない(自尊感情:セルフ・エスティームが低い)人は特に責任を引き受けられず、さらにトラブルが起きます。
「たとえば身近な人が優秀さを示してしまえば、自尊感情が低下します。その結果、喜べないし、自分の評価を維持するために、その人の悪口を言いたくなったり、足を引っ張りたくなってしまいます。」(人はなぜ友人の成功を素直に喜べないのか:Yahoo!ニュース個人有料)
まさに、妖怪のせいといいたくなるような状況ですね。様々な子育て場面で、なかなか叱っても、説教しても通じないことはあります。そこで、いろいろ工夫が必要です。
■節分の鬼と豆まき
節分の鬼と豆まきも、外在化として活用されることがあります。小学校などでよく行われる節分の豆まき行事。事前に、子どもたちが自分の心の中の「鬼」を考えておきます。なまけもの、あわてんぼう、ねぼすけ、おこりんぼう、ねたみ、いじめ、など。そして、豆まき行事の日、校長先生が「さあ、みんなの心の中の鬼は何かな? 心の鬼を追い出そう!」などと言って、豆まきがスタートします。
良い学校行事だと思います。
(鬼を怖い存在として使うこともありますね。(「鬼から電話」の効果と使い方:叱り方の心理学)
■節分の豆まきの画期的なところ
節分の豆まきは、「邪気を追い払う」ものです。豆まきは各家庭で行われますが、そこに偉い祈祷師も、修験者(しゅげんじゃ)もいません。各家庭のふつうの人たちが、豆で「鬼」を追い払います。これは、画期的です。
「福は内!」「鬼は外!」と豆を投げると、鬼たちはあわてて逃げていくことになっています。
すごいですね。自分たちの力で鬼(邪気)を追い払えるのです。私たちには、その力があるのです。
■見えないものを見る力
目には見えない邪気を、目に見える鬼にします。誰かが鬼の面をかぶります。なかなか怖い顔ですが、子どもたちは勇気を持って、楽しく豆をぶつけます。そうすれが、子どもたちの完全勝利です。
「妖怪ウォッチ」でも、最初は妖怪は見えない設定になっています。それが妖怪ウォッチを使うと見ることができて、良い妖怪と友達になったり、悪い妖怪をやっつけたりできるわけです。
人生の中、生活の中で、何となく上手くいかないことはあります。それを、妖怪とか、鬼とか言うとわかりやすくなります。それは、難しい現代用語や精神医学、心理学の用語でも同じです。「それはDVだ」「セクハラだ」「人権侵害だ」「ストレスのせいだ」。そんなふうに考えられると、問題が見えてきます。
でも、鬼や妖怪や難しい言葉で、ただわかったつもりになったり、責任転嫁になってはいけません。問題は、どう解決するかです。
■「妖怪のせい」と言われたら
子どもの年齢にもよりますが、小さな子には、わかりやすい物語やメルヘンも必要です。「そうか、妖怪のせいか。よし、じゃあその妖怪を、やっつけよう!」ですね。大きな子どもが言い訳で「妖怪のせい」と言っても同じでしょう。「だったら、やっつけなさい」。
節分も妖怪ウォッチもユーモラスです。そして仲間がいます。みんなの力で、悪者をやっつけます。
問題が起きたときに、誰かを犯人にしたてて責任を押し付けたり、人格攻撃や全面否定をしても、良いことはありません。「お前はダメな子だ」「みんな母さんのせいだ」。そんなことを言っても、改善はありません。
苦しくて上手く行かないことはあります。冷静に理解し見える化をはかりましょう。とりあえず、難しいことは抜きにして、鬼や妖怪でもよいでしょう。そして、その悪者は、家族の力を借りて、子ども自身がやっつけることができるのです。これが正しい「外在化」です。
豆まきも、妖怪ウォッチも、楽しく、そして子育てにも役立つといいですね。